第3話
海辺から歩いてしばらくしたところに小さな駄菓子屋がある。
昔ながらの店のつくりに親しみやすい店主のおじちゃんと
店の奥の和室に座っているおばちゃんは老若男女問わず人気な人だった。
俺もおじちゃんたちと話すのは好きだった。
カラッ
「こんちは。」
そう言った後に少し頭を下げる。
「駿くん。いらっしゃい。」
「あら、駿ちゃん。外暑かったでしょ。こっちにおいで。」
そう言いながら、おばちゃんは和室のほうに手招きしてくれた。
「ありがとう。でも、その前に買いたいやつあるんだ。おじちゃんいい?」
「もちろん。もう決めてあるのかい?」
「うん。これ、お願いします。」
そう言ってカップアイスをおじちゃんに渡した。
「はい、ちょうどね。ここで食べてくでしょ?スプーンつけとくね。」
「ありがとう。」
おじちゃんからアイスとスプーンをもらい、和室へ入る。
「駿ちゃん、夏休みに入ったのかい?」
「うん、」
「好きなだけここにいていいからね。」
「うん、ありがとう。」
おばちゃんは話すのが得意な人ではないけど、
噂話をする人ではないので一緒にいてとても楽だ。
だから、小さいころは毎日のようにここへ遊びに来ていた。
同い年の子といるよりも、ここで過ごす時間は俺にとって息がしやすかった。
机に置いてあったスマホが揺れる。
その音が鳴って少ししてから、肩が少し揺れた。
「駿ちゃん、スマホなってるよ。」
どうやらおばちゃんが起こしてくれたらしい
「うーん。」
眠っていたらしい。
寝ぼけた目を開けながら窓の外へ目を向けると、
日は少し落ちかけていて、空の色はどこか寂しげな色になっていた。
「やっべ。ごめん、長居しちゃって。」
「そんなことないよ。またいつでもおいで。」
「駿くんまたな。」
手を振って、急いで店を出る。
スマホを見ると、姉からの鬼のような通知が来ていた。
「マジかよ。」
舌打ちをして、家まで急いだ。
「ただいま~。」
小声でそう言いながら玄関に入る。
「駿!!やっと帰ってきた。」
「姉ちゃん、遅くなって悪かったよ。」
「ほんとだよ!遅くなるなら連絡くらいして!」
「ハイハイ。」
小言が始まると適当に流しながら聞く
「千花は?」
「は?」
「学童!お迎え!」
「いや、聞いてねーけど、」
「はぁ⁉メッセージしてなかったっけ?」
「覚えてねーのかよ。」
メッセージアプリを開いて確認するが特に妹のお迎えのことは書かれていなかった。
「ないけど。」
「まじで⁉ごめん。お迎え行ってくるわ。」
「いいよ、俺行ってくるよ。もうすぐおやじたち帰ってくるし、
家のこと頼んだから。」
「うん。マジごめん。」
急いで自転車に乗って学童へ向かう。
坂を下りて、踏切を渡り駄菓子屋の前を通り坂の上にある小学校へ向かう。
ついた時は学童には千花一人しかいなかった。
「駿、遅い~」
学童にたどり着く前に千花はそう言いながら足に抱き着いてくる
「悪かった。ごめんな。」
そう言いながら小さな頭を壊さないように優しくなでる。
「よかったね千花ちゃんお兄ちゃん来て、
遅かったので千花ちゃんすっごく心配してたんです~」
そう言いながら玄関のほうへ学童の先生が来た。
「そうですか。弥生先生もすみません」
「いえいえ。」
「千花もマジでごめんな」
小さな頭に再び手をのせる。
「じゃ、帰るか。」
千花はこくりと頭を動かし、ふたりで家へ帰った。
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