足し算と引き算

「肝試しをしたい」

と友人の一人が言ってきた。

「えっと、どうした?」

「夏なのに、海や山に行かずに、部屋で酒を飲んで、このまま終わるのは嫌だ」

「言いたいことは、解るけど・・・」

「やるのは、いいけど、やる場所あるか?」

「これを見てくれ」

そう言って、スマホを見せてくる。

内容は、隣の県の古い学校だった。

見た目は、木造で年季を感じる建物だった。

「いい感じだろ?」

「見た目は、いいけど・・・これって行って大丈夫な場所か?」

「問題ないさ、だって、軽く調べたけど、問題が起きたや、不審者が

いるとかの報告ないから」

俺は、周囲を見て

「多数決で決めよう」

「5人いるから、結果出るな」

「行きたい人は、手をあげよう」

そう言って、多数決をすると4人があげた。

「決定だな。すぐに行こう」

「解ったよ」

現時刻は、夕方の6時で、移動は、車で2時間ぐらいと検索した時に、

出ていたので、丁度いいか。

「そうだ、途中でコンビニに寄ってくれ」

「解ったよ」

そう言って、俺達は部屋を出た。


目的地に着いて、建物と周囲見た感想は、田舎と言うか、林と山の中間って感じだ。

街灯なしで、周りは、木に囲まれた場所だ。

「どうだ?雰囲気あるだろ?」

「まぁ・・・あると言えばあるかな」

「そうだな・・・でも、逆を言えば穏やかな場所とも言えるかな」

「自然が多いからね」

都会から離れて、自然に癒される感覚かもしれない。


正面玄関に着くと友人が

「さてと、ルールを説明する」

そう言って、コンビニ袋から紙コップとビー玉と懐中電灯2個を出して

「入り口でビー玉と懐中電灯を持って、裏口にある紙コップにビー玉を入れて、

帰って来るだ」

「それはいいけど、帰りも中を通って来るのか?」

「いや、外周を回って正面玄関にいる人に懐中電灯を渡して終わりだ。

後は、2階を通って、部屋に入らずに裏口から出るルートかな」

「部屋には、入らないのか?」

「入るも何も、俺達は、初めて来るから、どこに何の部屋があるか、

解らないだろ?」

「確かに・・・待てよ、それで行くと裏口の場所も解らないぞ」

「そうだった。入る前に全員で確認に行くか」

そう言って、俺達は、左周りで裏手に回った。

裏口は、裏手回ると目の前にあった。

扉は、壊れて開いてるので、問題なく外に出ることが出来る。

「これなら、右回りするルートで行けば迷わずに行けるな」

そう言って、友人は、紙コップを裏口に置いた。


正面玄関に戻って、順番を決めた。

順番は、先の3人は、1人ずつ行くが、最後の2人は一緒に行くことにした。

2人で行くのは、手をあげなかった奴への配慮だ。


最初は、提案した友人がビー玉1つと懐中電灯を持って入って行く。

俺は、ビー玉を配って、正面玄関で懐中電灯で照らして、最後に行く係だ。

30分ぐらいすると友人は帰って来た。

表情を見るに特に何もなく終わったみたいだ。

そして、次の友人が入って行く。

俺は、欠伸をしながら正面玄関を見てると

「外から見ると懐中電灯の光でどこを移動してるのか、解るよな」

「そうだな・・・光のおかげで、安全確認出来るから、

何かあったらすぐに助けに行けるな」

「あぁ」

そして、30分ぐらいすると友人が帰ってきた。

3番目の友人は、懐中電灯とビー玉を受け取って中に入って行った。


3番目の友人が帰って来たので、俺は、ビー玉を1つだけ取って、残りは、1番目

の友人に預けて、2人で中に入った。


「なんか、思ったよりは、風化や破損してないな」

「そうだね・・・でも、こういうのは、苦手だよ・・・」

「何もないと思うぞ」

「解っていても駄目なものは、駄目だよ」

「ゆっくり行くか?」

「いや、普通に行こう・・・」

友人は、オロオロしながら、歩き始めた。

その様子を見た俺は、懐中電灯を友人に向けて

「明るい方が怖くないと思うから、光は任せるよ」

「解ったよ・・・」

そう言って、友人は、懐中電灯を受け取った。

暫く歩くと階段があったので2階に登った。

2階の廊下も1階と同じで風化や破損は酷くない。

ふと窓から外を見たが、友人達は、正面玄関で懐中電灯を持って照らしていた。

暇そうだな・・・まぁ何もないならいいか。


暫く歩くと下りの階段があったので、1階に降りて裏口にある紙コップにビー玉を

入れて、正面玄関に向かった。

友人達は、俺達に気づいて手を振ってる。

「おかえり」

「ただいま」

「何もなかったな」

「そうだな」

「そういえば、紙コップはどうした?」

「持って来てない・・・取りに帰るよ」

「せっかくだから全員で行こうぜ」

「解ったよ」

そう言って、全員で裏口に向かった。

「あった、あった」

友人は、紙コップを拾って、こっちに持ってた来たので、そのまま車に

戻ることにした。


車に戻って友人が紙コップの中身を見て

「おい、誰かにビー玉を2個渡したか?」

「いや、1個だけ渡したぞ」

そう答えると友人は、顔を青くして

「じゃ・・・なんで5個入ってる・・・」

俺達は、紙コップを中身を見た。

そこには、ビー玉が5個あった・・・

「嘘だろ・・・」

「誰か、悪戯したのか?」

「それは、無理だろ・・・」

俺は、紙コップを逆さにして、ビー玉を手の平に出した。

手の平には、ビー玉は、4個しかなかった・・・

幻覚でも見ていたのか?でも、全員が5個と言った・・・

そんなこと考えてると、一緒に入った友人が

「もぅ!帰ろうよ!無理だよ!」

と叫んだので俺は、エンジンをかけて、車を動かした。

運転しながら、あのビー玉は何だったのか?と考えた・・・










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