引くもの

力を抜いて、仰向けで水に浮く。

空は、灰色の雲が一面に広がっていた。

そろそろ、雨が降りそうだ。


体勢を戻して、プールに立った。

梯子まで泳いで行ってもいいが、泳ぎ疲れたから、歩いて向かう

ことにした。


数歩歩いて気づいた。

足が重い・・・と言うか、梯子に近づくともっと重くなる。

足元を見るが、特に何もない。

筋肉疲労が酷いのかな?

そう思いながら、梯子に向かった。


梯子に手足をかけると・・・肩と腕と足におもりが

付いたような感覚があった。

動けない・・・なんだ、これは・・・

周囲を見ても何もない。

無理矢理梯子を登ろうとすると後ろに引かれる感覚があって、

仰向けになって、水に沈む!

息をする為に水面に向かうが、背中が底と合体したみたいに動けない。

もぅ・・・無理だ・・・


勢い良く体を起こす!

周囲を見ると自分の部屋だった。

なんだ・・・夢か・・・

目覚まし時計を見ると朝の5時だった。

予定より、1時間早く起きたみたいだ。

着替える為にパジャマを脱いだ時に気づいた。

両腕に握られた跡があった。

寝ぼけて自分で握ったかな?


身支度を済ませて、部活に向かった。

今日は、プールで練習する日だった。

顧問曰く、自分の種目を毎日練習するのもいいが、

たまには、軽めに動かして、肉体の疲労を取るのもありで、

熱いから、水の中の方が嬉しいだろ?と言った。

こっちとしては、嬉しいことだ。

所属してる部活は、陸上部だから、基本的に影がないグランドで練習

するので、夏場は、いつもより疲れる。


プールに入って、泳いで、歩いて、泳ぐを繰り返した。

数往復して、プールから出ようとすると今朝見た夢を思い出した。

そういえば、この後に足が重くなったな・・・

私は、動く前に周囲を見ると部活の仲間が泳いだり、歩いていた。

夢とは違う状況なので、考え過ぎか・・・と思って、梯子に向かうことにした。


数歩歩いて気づいた・・・

足が重い・・・それも両腕と両肩も重い・・・

誰かのいたずらかな?と思って、周囲を見るが誰もいない・・・

私は、早くプールから出る為に梯子に向かった。

そして、梯子を登ろうとすると夢みたいに後ろに引かれる感覚があって、

沈んで行く・・・あぁ・・・あれは、正夢だったのか・・・そうなると警告を

無視して、入った時点で駄目だった・・・


目を覚ますとそこは、保健室で、近くにいた顧問が、何があったか、

説明してくれた。

梯子を登ろうとしたら、踏み外して、倒れて、溺れていたので、

数人の部員と顧問が引き上げて、処置したと説明してくれた。

それだけ言うと暫く休んでいろ言って、部屋を出て行った。

私は、両腕と両足を見る・・・そこにくっきりと手形があった・・・




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