第41部 4202年41月41日
雨で一日中外に出られなかった。
とはいったもの、僕はもともと外に出るのがあまり好きではないから、大してショックでもなかった。むしろ、窓の傍に陣取って、降り行く雨を家の中から見ている方が面白い。というのは、あくまでイメージの中での話で、僕が実際に、自分の時間をそんなふうに消費することはほとんどなかった。今も本を読んでいる。雨が降り行く様を無為に眺めているよりは、自分の知らない情報をインプットした方が良い、とどうしても考えてしまう。
彼女はどちらだろう、と僕は不意に思う。
「hi ni yoru」
僕の対面で、彼女が同じく雑誌に目を通しながら答えた。彼女は、雑誌を読むとき、テーブルの上に広げて読む。僕はどんな本でも可能な限り手に持って読もうとするから、この点では対照的だ。
「今日は?」僕は質問する。
「seikaku ni wa, hi to iu yori, jikan ni yoru」彼女はクッキーを囓りながら答える。
「じゃあ、今は?」
「ima wa, hima」
「雑誌を読んでいる方が楽しそうだね」
「tanoshiku wa nai」彼女は応える。「zasshi o yonde koufun suru koto tte, aru ?」
「いやあ……」僕は首を傾げる。「少なくとも、集中して読むものではないイメージがあるよ」
「watashi mo onaji」
「つまり、集中力がないってこと?」
僕がそう言うと、彼女は雑誌から顔を上げて、僕の方を一度キッと睨みつける。
僕は両目を一周ぐるっと回して対処した。
「ところでさ」彼女が食べているクッキーに手を伸ばして、僕は話す。「ちょっと、散歩でもしない?」
彼女はまた顔を上げてこちらを見た。
「ame futte iru n da yo」
「知っている」
「naze ?」
「ちょっと、デートでもしたくなった」
「a sou」彼女は目を逸らす。「suki ni shitara ?」
そう言われたから、僕は手を引いて彼女を無理矢理外に連れ出そうとしたが、彼女はなかなか動かなかった。仕方がないから、テーブルに搭載されている自動歩行機構を久し振りに起動させて、彼に代わりに歩いてもらうことにする。
外に出た途端に、雷が僕達の家の前に落ちてきて、アスファルトに巨大な穴が空いた。
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