第5話
俺たちが行方不明者クエストをこなすためにダンジョンの最下層に来たが、難儀していたときに何やら慌ただしく声をかけてきた人物がいた。
「ここはとても危険なのよ。どうしてここにいるの?」
「いや、俺たちは……」
ものすごい剣幕でしかも声の主は女性だった。だからこそめちゃくちゃびっくりした。
なんでここにいるのと言われましても俺たちは行方不明者がいると聞いてここにやってきたわけであって、そんな怒ることかと俺はムッとしていた。
「ここは立ち入り禁止区域に……って、あなたたち、ほんとに冒険者になったの?」
その人は何か俺たちを知っている口ぶりをしていたことに疑問を感じた俺は目を凝らしてよく見るといつぞやの魔法使いのお姉さんだった。
なんというか、運命的な出会いを感じる。これはまさに
俺は不覚にもそのお姉さんと出会ったことでこの異世界への不満が少し癒やされるようだ。
「もちろん。俺たち、実は……」
「今すぐ出て行きなさい!!」
「えっ……」
純愛映画の運命的な出会いを感じたのも束の間、お姉さんはまた剣幕な表情で俺たちを凄ませてきたのだ。
途端に俺たちは意表を突かれたのだ。この時の俺の顔はまさに間抜けな顔をしてい他だろう。
「ここはあなたたちのような低レベルの冒険者が来ていいところじゃない。早く出て行きなさい!」
「だから俺たちは行方不明者がいると言って、その人を探しにきてだな」
「そんな人がいるわけないじゃない! いいから早く出ていって!」
そう言われたら俺たちはもう何も言うことができない。こうして俺たちはもしかしたらという淡い期待をしていたがそんなものはお姉さんと共に消えていった。
ダンジョンから出た俺たちは途方もなく、帰り道を歩いていた。特に何かを話すわけもなく、二人揃って黙って、しんみりとした雰囲気が流れていた。珍しくナナセが下を向いているのだ、間違いない。
とにかくだ、今回のクエストというのは失敗に終わった。それだけだ。
ため息を何度もつきそうになりながらふとある草原地帯に目を向けると俺は自然に立ち止まった。
「どうしたのだ、アクタくん?」
それに気づいたナナセも俺と一緒に立ち止まった。
異世界に来たら、まずこういうのは想定していたがそれにしては何かと疑うところがある。
と言うのも、今目の前に広がっているのは原型をとどめることができずに崩れた草原地帯にもっと具体的に言うと魔法、特大な火の魔法を何発も使ったあとのようなものがあり、多kなクレーターができあがっていた。
「あれ、なんだと思う?」
「うーん、何かが争った痕としか思えない光景だな」
「にしては明らかに異常だと思わねぇか?」
まさにこれは何か強力で凶暴で威力絶大な魔法、この世界のいうとこの『魔女』に値するのだろう。
「確かに。何だかわからないがとても異常な魔力値に反応がある。相当な魔力の持ち主で間違いないだろう」
「なんでそんなこと・・・」
と言いかけて俺は察した。そういえばナナセは俺と違って異常なまでに高い魔力の持ち主だということ。
ならば同じく、何か近しいものを感じとることができるのであろうと。
「こういうの見るとなんか巨大隕石が落ちたように思えてくるな」
「世界の危機なのか?」
「まあ、とりあえず。ギルドに戻って話でも聞いてみるか」
俺とナナセはギルドに戻ったのち、草原地帯で起こった出来事を受付嬢の人に聞いてみるとその答えはびっくりするものだった。
受付嬢の人が言うにはその草原地帯では魔物の発生は確認されていないものだった。
じゃあ一体何がと聞くととある二人の凄腕冒険者、いわゆるSランク冒険者が喧嘩をした痕だというのだ。
一人は四大魔法をいとも簡単に使いこなす魔法の天才と呼ばれた
それを聞いた時俺が思ったことはただ一つ。
「なんて迷惑な話だ!! こっちは何か危機が迫っているのかと思って期待していたのにいや、しちゃダメなんだけど。結局ただの喧嘩とはこの世界の冒険者はどうなってんだ!」
俺は日頃の鬱憤を晴らしていた。こんな出来事はこの世界で普通とか頭おかしいのか、ここの住人は!!
「アクタくんよ。そんなに怒るではない、何事もなくてよかったではないか」
「よかねぇよ! なあ、俺たちはこの世界に何しにきたと思ってるんだ」
何をゆっくりとしているんだと思った俺はナナセに疑問を投げかける。
「何って、それは元の世界に帰還する方法を探すことであろう」
「ちっげぇよ! いやそれもそうだが……俺はこの世界に来た理由があるに違いないんだよ! わかるか! 異世界といえば、俺強えええとか、ハーレムとか勇者伝説とか、そんなもの期待していたのになんだこの仕打ちは!」
俺は異世界に対して不満が募り、大声をあげて騒いでいた。
それもあるがその横にいるナナセが、しかも異世界を知り尽くしている俺ではなくてなぜこいつがという鬱憤がたまりに溜まっていた。
「まあ、落ち着け。私もこの世界にはびっくりしたけど、私はこれで満足してるから何も問題はないと思うぞ?」
「お前はな! 俺はお前みたいにチート能力はなくて、ただの、一般の、普通の冒険者だ! それに引き換えお前はどうなんだ? その力をしっかり有効的に使っているか?」
「そんなの当たり前ではないか! 私だってそれなりに使っているではないか?」
俺のいつまでも続く鬱憤晴らしに嫌気がさしたのか、怒りを覚えたのかナナセも声を荒げて反論してきた。
こうなると目に見えてわかるのはお互いに頭に血が上り、口論が激しくなっていくだけだった。
「そもそもなんでこの世界にきて、チート能力はお前だけなんだよ! 俺にだってくれたっていじゃねぇか! なんの罰ゲームだよ、教えてくれよ」
「そんなもの私に言っても仕方がないだろ! たわけが! だったらそんなくだらないことで私に当たってくるな!」
今思えば実に聞くに耐えないくだらない口論だっただろう。どれくらいの時間が経っただろうか。
そんなくだらない俺たちの口論を遮るように、というよりも誰かが聞いていてくだらないから仲裁をしに来たのか、部屋の扉を叩く誰かがいた。
一体誰がこんな時間にしかも、なぜkの部屋に?
「誰か来たようだな。お前何か頼んだか?」
「私はルームサービスなど頼んどらん! 逆に君の方ではないか?」
俺は白熱した口論を邪魔する不届き者の顔を見るために不服な顔をしながら扉を開けるとそこにいたのは。
「どなたですか?」
「すまないが、しばらくここで寝かせてもらえないだろうか?」
扉を開けた先にいたのはずぶ濡れの姿をした女冒険者がそこにいた。
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