第4話 

 俺は自分のレベルを上げるためにアンデッド退治生活から一転して、本格的に魔物狩りに向かうのであった。


そうと決まれば、俺に合うクエストもしくは少し難易度が高いクエストを見つけるために来ました、冒険者ギルド!


中に入ると、たくさんの冒険者たちで賑わっていた。


真っ昼間から酒をかっくらっている連中を横目に俺はまっすぐ掲示板に向かって歩いていく。


俺の視線に気づいたのか何人かの冒険者たちにきつい眼差しを向けていた。


その後ろをナナセがビビりながらついてくる。



「なあ、アクタくん。なんかめちゃくちゃみられている気がしているんだが、なんか目立っているような気がしないか?」


「ああ、別に気にすることはないだろ。堂々としていればいいんだよ」



俺がそう指示するがそうは言われてもとナナセは周りの目が気になるらしい。


こいつは何かと周りの目が気になり、敏感になる癖があるがそこまで気にすることはないだろと思う。


掲示板の前に立ち、いたるところに貼られているクエスト一覧を眺めるが、本当にろくなものがないな。


それでも俺は険しい顔をしながら、クエストの内容を凝視する。


『湖近くで巨大マルゲリータが出没中、至急討伐したり』。危険難易度S。


このクエストずっと貼られているけど、このSSS級の冒険者の奴らは誰も討伐しないのか? いや、それよりも俺に合うクエストを選ばなければ!


『警戒区域発令中。S級冒険者以外立ち入り禁止』『インダスト街冒険者に警告。A級の魔物が生息』『不明機械生物が大陸を横断中、予測不能なため避難したり』と、こんな物騒なものまでいるのか、もしかしてこの世界けっこうヤバいかも?


それにしてもあまりにも少なすぎるだろ。


俺があまりのクエストの少なさにガッガリしていると、横から俺の袖を引っ張るナナセが何か言いたそうな顔をしていた。



「なんだよ?」


「アクタくんよ、もういいではないか。やっぱり私と一緒におとなしくアンデッドた退治をしようではないか」


「いやだよ。俺がアンデッド退治専用の冒険者とかなんの罰ゲームだよ。俺にそんな不名誉な名前は勘弁だ」


「そうは言ってもこのままではクエストを探しても見つからんではないか」



うっ、ぐうの根も出ない。確かにこのまま無難にアンデッド退治もいいだろうけど、それでは俺のレベルはいつまでも低いままだ。


どうしようかと悩んだ時にふととあるクエストが目にとまった。


俺はそのクエストを取り憑かれたように凝視していた。



「どうしたのだ、アクタくん?」



俺と同じようにナナセもクエストを凝視する。


そして俺は心の底からなのか、本能がこのクエストを手に取れと言わんばかりにマジマジと見たあと決意した。これだと。


それから俺とナナセはそのクエストの場所までやってきた。それは……。



「ダンジョン! まさに異世界ものといえばこれだろ」


「また物騒なところだな。ほんとにこのクエストを選んで正解なのか?」


「それをこれから確かめるんだろ? ダンジョンといえば男のロマン! 異世界ものの定番! 情熱! だろ?」


「うむ。よくわからないがなんかすごく楽しそうだな!」



俺とナナセは向かい合いながら親指を立てた。よくわからんが。


そんなことより、いざダンジョンへ!



「しかし暗いし、汚いし、嫌な空気。まあこれぞダンジョンっていう感じだな」


「それなら、私が明かりをつけよう」



そう言うとナナセは魔法で明かりをつけた。こいつの職業は聖職だったから、こういうこともできるのか……。いいなぁ、ステータスが高いやつって。


ナナセの明かりの魔法で真っ暗闇のダンジョンの中へと入っていく。



「アクタくんよ。ほんとにいると思うのか? その行方不明者とやらが」


「それはわからんが調べる価値はあると思うぜ。いいか、よく考えてみろ? このダンジョンは他の冒険者に探索し尽くされてるがそれだけではない。未だ未開の地に発見されてない宝物が眠っていたらどうだ?」


「それがどうしたと言うのだ?」


「バカ、お前。それを見つけたら俺たちは多大な功績を与えられる。しかもそこに宝が眠っていたら、その全ては俺たちの物になるんだ。つまり一度、俺たちは大金もちになれる。こんないい話を逃す手はない」



異世界にやたら疎いナナセに俺は熱くダンジョンのなんたるかを説いていた。


さらにその行方不明者とやらも見つかれば大儲けだ。



「だがそんな都合のいい話があるとは思えんが」


「なんだよ、そんなのありえねぇとでも言いたいのか?」


「そう言っておるのだ。そんな都合のいい話があってたまるか」



その刹那、小声で何かぼそっと呟くように言ったナナセの顔が少し暗くなったように感じた。


そういえばこいつは何かと夢がないというかいつも現実味しかないことばかり言ってるな。


まあ、俺もそこまで期待はしていないが数パーセントの可能性って話だと思いながらダンジョンの階層を進むのだった。


数パーセントの可能性を信じてダンジョンの入り口から突き進んできた俺たちだが、かなり深い階層にきたがここまで魔物が一体も現れなかったのが不気味なくらい怖い。


そんなことを思っているとこれまた不思議なことに最下層まで来てしまったのだ。


なんだろうダンジョンというものは普通、様々な魔物が出てきた苦戦しながらも倒し、魔物からドロップしたアイテムを回収したりするものだと思っていたが別の意味での期待外れだった。


やはりそんな都合のいいことはいくら異世界とはいえど起きないものなのかとここにきて不満が募り、愚痴る俺だった。


しかしやはり最下層ならではの光景というのか、最下層の中心にはとても大きくて太い大木が聳え立っており、その周りを囲うように緑一面にさらにその周りには綺麗な湖が囲んでいた。


まあ、これを見れたのならここまできた甲斐があったというものだ。



「なあ、アクタくんよ。ここにきたのはいいが目当ての行方不明者とやらはいないみたいだがこのまま帰るのか?」



俺がこの光景を目に焼き付けているところ、うろうろとしていたナナセが問いかけてきた。



「いや、それはない。行方不明者はこのダンジョンに入ったまま帰ってきていないと聞かされたんだ。だったらこのまま帰るのはまずいだろ」


「それはそうだが、実際いないではないか」



まあ確かに。そう言われたら返す言葉がない。



「ここでなにしてるの!」



と、どこからか俺たちに慌ただしく大きな声で聞いてきた人物がいた。

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