第6章 この命に代えても…。

風磨が復活した…。

15年前に対峙した頃と比べて格段に強くなっていることを

ピリピリと肌に感じる…。


術の多さは恐らくは風磨が勝っている。

体術は颯真の方が上だろう…。

妖力はほぼ互角といったところか?


同族を喰らって更にチカラを増したと言う感じか…?


『先ほどからゴチャゴチャと煩いな…。』

「オレは何も言ってないぞ?」

『なんだと…?』

「たぶんお前の師匠だろう…水藻さま…。」

『なん…み、水藻だと!?』


“ははは…颯真なぜわかった?”


「なんとなく…気配が母さんに似ていた…。」


“あのバカなにを呑気に…いや、そういう奴だった…。”


「もう一人の女の子の声が聞こえてましたけど…あれは?」


“あぁ…巫女の静江じゃ。”

「静江…さん?」


スゥ…。


水藻が姿を現した…。


「ひさしぶりじゃな…風磨。」

『本当に水藻さまか…?』

「なんだ?ワシを忘れたか?」

『バカな…片時も忘れたことなど…!』

「そうか…しばらく見ないうちに随分と変わったのぉ…。」

『私は闇に堕ちました…もうあなたの弟子ではありません…。』

「馬鹿もんが!!」

「貴様が闇堕ちしようがワシの弟子には変わらんわ!」

『水藻さま…。』


「風磨…いまならまだ引き返せる・・・それでも敢えてその道を行くか?」

『私は人間は許せないだから抹殺する…そしてその邪魔をする奴らも!』

「そうして滅ぼしなにがお前に残るのだ?」

『なにも…。』


なんだろう…水藻さまから感じるチカラ。

水藻という妖狐はこれほどの存在だったのか…。

これが母さんの親父…。

真似しようと思ってもオレには出来ないな格が違いすぎる。


「水藻様…あなたが来た理由はなんですか?」


颯真は水藻に問いかけた。


「ワシが来た理由か…風磨を止めに来た。」

「なぜ…?」

「颯真、オマエの母親に頼まれた。」

「母さんに…?」


『私を止めるだと?』


「風磨…おぬし夜白に言われた言葉忘れたか?」

『夜白に…だと?』


いまの風磨と父さまを殺した人とどう違うの?


『うるさい…。』


うるさい、うるさい、うるさいうるさい!!!


「憎しみは憎しみしか生まぬ…なぜそれが解らぬのじゃ…いや解ろうとせんのじゃ」


この連鎖は断ち切らねばならぬのだ…そのためにワシは来た。

颯真にワシのチカラを与えるためにな。

いまの颯真と風磨…。

妖力は互角じゃ…だが…。


「水藻さま…オレは…風磨を許せない…。」

「オレの大切な人を奪った…。」


「颯真…。」


ふはははは…。


「何が可笑しい!!」

『何度も言うが…夜白を殺したのは…。』

「黙れ!!」


ブン!


『おっと…黙らぬさ…おまえの姉だろ?』

『我は殺してない…。』


そう風磨は言いニヤリと笑った。


それを見た颯真は怒りに任せ妖力を最大まで高めていた…強さの根源は怒りだった。

だがそれは諸刃の剣…ひとつ間違えれば怒りに呑み込まれ理性を失った獣と化す。


「颯真…ワシのチカラなど必要ないか…。」


“文字通り化けおったな…。”


「そうじゃな…危うさもあるが…。」


ふはは…いいぞ怒れ怒れ!!

我を失望させるなよ!


ゴゴゴ…。


地鳴りだと?


「風磨…後悔するなよ…?」

「以前のオレはこのチカラにのまれた…。」

「だが今は…あの時とは違う!!」


『はっ!!何が違うのか証明してみろ!!』


うおぉぉぉ~っ!!

ドカカカッ!!!


『ぐぅ…こいつ…一撃、一撃が重い…。』

『だが…強くなったのは…貴様だけじゃない!!』

はぁ~っ!!

バキィッ!!


ズシュッ…!

「うっ!!」

ベキベキ…!

「ぐはぁっ!?」


颯真の腹部を風磨の手刀が貫いた…。


ブシュウウ…。


「かはっ…。」


ニィ〜…。

颯真が不気味に笑っていた…。


『なんだ貴様…気でもふれたか…!』

グッ…。


なん…だと?

腕が抜けん…だと…?


「これで…キサマは終わりだ…風磨…。」

『離せ!離せぇ〜!!』

「離れたければ…オレを…殺すか…。」

「自ら腕を…切り落とすか…だぞ?」

『ならば…死ね!!』

バキィッ!バキィッ!!!

ドガッ!!!


風磨は颯真の顔面を滅多打ちにした…。


「ふっはは…なかなか死なないな…人は…」


“もうやめさせろ…水藻…これでは…颯真が…!!”


すまん…静江…ワシには止める事は出来ん…。


“なぜじゃ!!”


颯真は最初からこれを狙っていたのだ…。

小手先の業では風磨は倒せん。

ならば…自らの妖気を最大限に高め自爆…。

こんな戦いをする奴は他に…しら…。

いや…1人おったな…。

珠藻殿…我が父よ…。


「静江…ここも保たないだろう…。」

「里へ行き防御壁を最大で頼めるか?」

“水藻おまえはどうするんじゃ!”


ワシか?

ワシはギリギリまで颯真の戦いを見届ける

それが礼儀じゃ…。


「水藻さま…白夜さまを…頼み…ます。」


白夜…じゃと?

おまえはこの後に及んでも…他人の心配を

するのか…戯けめ!!


「行くぞ!!水藻!!」

「わ、わかった…。」


あれ…?

いま…静流さんの…姿が…?

まさかな…。


『やめろ!!離せ!!』

『そんな事をすれば貴様も死ぬぞ!!』


バキィィッ!!


「もう…遅い…機は熟した…。」

『や、やめろぉぉ〜!!』


泉水…すまん…。


カッ!!


ドオオオオオン!!!!



そして…颯真と風磨の気配は消えた。

静流が作った結界空間も崩壊した。

里の被害は静江たちによって最小限に抑えられた…。




だが…失ったものは…大きかった。









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