第5章 静流が消えた日
少し前まで静かだった里の雰囲気が
一変した…。
この妖気は…間違いない奴だ…奴が…。
風磨が目覚めた!!
「颯真さま私が抑え込んでるうちに皆を!」
「わ、わかった…。」
「すぐに戻って来るから…頼む!」
「はい!」
“とは言ったものの…そう長くは持ちませんね…。”
未來、泉水!!
早く皆を安全な場所に白夜さまと眞白姉さんは
何処に!?
子供たちを早く!
眞白姉様なら奥の泉の方に…!
「こんな時に水浴びしてるのかよ!」
未來、簡単な結界なら泉水が創り出せるはずだ
オレは眞白姉さん呼んでくる!!
「眞白姉さん!!」
ザバァ…。
「颯ちゃん…!?」
「なに?どうしたの…!?」
「説明するから…そ、その前に着物を着てくれ!!」
「なに照れてるの?」
「良いから早く!!」
風磨が封印を破ったらしい…。
いま静流さんが抑え込んでるけど
早く皆のところに!
「待って…颯ちゃんは?」
「もしもの時は泉水を頼む…。」
「バカ言わないで!!」
「じゃあ…他に…策があるのかよ!」
「それは…。」
まあ、もしもの話しだよ…。
早く行ってくれ…。
オレは静流さんが心配だ…。
「颯ちゃん!!」
ぐぐぐ…。
「もう無理か…。」
ドゴォォォッ!!!
「くっ!!」
『ふぅ~~…何年だ?』
「は?」
『我を貴様が封じてから何年経った?』
「15年程でしょうか…。」
『そうか…ふはははは…15年…夜白はどうした?死んだかぁ?』
「くっ…!」
「この外道が!!!」
オンランケンソワカ…。
いでよ…火竜!!
ボゥッ!!
パァァァン…。
『効かぬなぁ…。』
はぁぁぁぁぁ!!
ガシィィ…。
「く…離しなさい…。」
『無駄だ…貴様の術など効かぬ…。』
ドカァッ!!
「ぐふっ…。」
パラパラ…。
くっ…この程度で崩れるのか…。
『そうか…貴様の身体は…ふふふ…。』
『魂だけの存在だったのだな…ならば消し飛ばしてやろう…。』
「このままでは…被害が出ます…場所を変えさせてもらいます…。」
シュッ!!!
『ほう?転移の術…空間を操る術まで使うか…面白い。』
「これで…全力であなたと戦えますね…。」
『先ほどのは小手調べとでも言いたげだな?』
時間稼ぎを少しでもしなければ…。
私のチカラでは風磨は抑えきれない。
そもそも…なぜこんなチカラが…?
まさか…そんな…。
『どうした?なにか気がついたか?』
「なぜ…つむぎさんの気配が風磨…あなたから感じるのですか!?」
『簡単な事…喰らってやったからだ…。』
「喰らった?つむぎさんを…?」
「どこまであなたは…。」
『勘違いするなよ…アヤツが望んで喰われたのだ。』
「なにを…?」
『きさまが施した封印を壊したのは…つむぎだ…。』
「な…?」
「詳しく…聞かせていただきたいですね…。」
『良いだろう…死に土産に聞かせてやる…。』
我が闇の中で眠っていると声が聞こえて来た…。
こんなところで眠っていたのかい?
誰だ貴様は?
私かい?誰でもいいじゃないか…。
気にくわんな…。
そんなことよりアンタここで朽ちる気かい?
なんだと…?
アンタにチカラをあげようと思ってここへ来たんだが
その気が無いのなら無駄足だったようだね…。
夜白のガキどもにやられて腑抜けたようだ。
なんだと?だれが腑抜けだと!?
私はやつらに復讐したいが…私だけのチカラでは無理だった…。
アンタのチカラと私のチカラを合わせれば。
共闘する…ということか?断る…!
そうじゃない…私のチカラをあんたにやると言っているんだよ。
どういうことだ?
私を喰らえ…。
貴様をだと?
私は貴様の縁者だ…血縁が深ければその分チカラが増すはず。
縁者だと?
姉上もその子も我が殺した…血縁者などおらぬ。
私は…小雪の長女つむぎだ。
なん…だと?
そうして交渉成立して喰らった…。
あやつの言う通りだったチカラが沸き上がる様だった。
恐れるものなし!!
「なるほど…私の術がほとんど効かない理由も合点がいきました…。」
『そろそろ無駄話も飽きた…死ぬか?』
「それも良いでしょう…私も夜白さまが居ない世界は…。」
“静流あの子たちを頼みますね…。”
「いや…私にはまだやらねばならないことがあります。」
「まだ…この魂消すわけには…!!」
その頃、颯真は祠の前にいた…。
あれ…静流さんは…どこへ?
気配も感じない…まさか…!?
“その娘のおるところに連れていってやろうか?”
「だ、だれだ…?」
“ワシか?ワシは…。”
“行くのか行かぬのか早うせい小僧!!”
「小僧…?女の子の声…?」
“あまり時間がないのじゃ…!!”
「わかった連れて行ってくれ!」
“行くぞ…。”
“……。”
“意識を集中せい!!”
「あ、はい…。」
“あの娘…そうか…。”
どす!!
いてぇ!!
“ほら着いたぞ…。”
「ここは…静流さんが作った空間…まさか…!!」
「静流さん!!どこだ!!静流さーん!!」
“意識を集中せいと言っただろう…お主なら探せるはずじゃ。”
意識を集中…。
静流さんの気配を探すんだ…。
「いた!!!」
シュンッ!!
“さすが…ワシの孫じゃ!”
“ほう…お前の孫とは思えんな…。”
“なぜじゃ!!!”
颯真が静流の元にたどり着いたとき…。
静流はボロボロの姿だった…。
両腕はもがれ顔も…ヒビが入っていた…。
「し、しずる…さん…。」
「そ、颯…真さま…?」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
きさまぁぁぁぁぁぁぁ!!!
ドガッ!!!
『ぐふっ!?』
颯真は静流を風磨から奪い返した。
そして…。
「静流さん…遅くなってすまない…。」
「颯真…さま・・・。」
静流はにこりと微笑みこう言った。
「颯真さまは…約束通り戻って来てくれました…。」
「静流は…それだけで…充分で…す。」
ポトッ…。
静流がつけていたキツネの面が地に堕ちた…。
颯真が抱きかかえていた静流は消えた。
うっううう…。
し、静流さん…すまない…。
オレは…。
結局オレは目の前の者を誰一人、救えていない…。
母さんも死ぬべき者じゃなかった…。
あのとき…刺されるのを見てるだけだった。
『そう…貴様は無力だ!!』
風磨ぁぁぁぁ…!!!
今度こそオレが貴様に引導を渡してやる!!!
跡形もなく粉々に消し飛ばしてやる!!
『そうか…お前あの時の…デカくなったな?』
『夜白殿は元気か?』
「……。」
『あぁ…すまないお前の姉が刺殺したんだっけなぁ~…。』
シュンッ!!
ドゴォッ!!
『ぐはっ!?』
「無駄話はする気は無い…。」
「オレはお前と遊びに来たんじゃないんだ…。」
颯真の瞳の色が赤から金色に変わった…。
妖気も格段にあがっていた。
妖力は互角…勝負は一瞬に思えた…。
これ以上…オレから誰かを奪うことは許さない!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます