第四章 ささやかな平和

平和なときは気づかない…。

穏やかな日常が当たり前になってしまう。

不穏な空気が漂ってきた頃には手遅れになる。

颯真は静流が風磨を封印したという祠を毎日見に来ていた。


「とくに…問題はない…か。」


気にし過ぎなのかも知れないが…。

つむぎもあれ以来

姿を見せない…。

それが逆に颯真は不気味だった。


「やはりここにいましたか。」

「ん?」

「あぁ…静流さんか…。」

「まだ大丈夫です…私の封印は簡単に破れませんから。」


静流はそう言うと微笑んだ。


「ふっ…静流さんが微笑むのは珍しいな…。」

「そ、そうですか…?」


「なにコソコソやってるです?」

「泉水…?」

「別に…泉水には関係ない…。」

「な!?」

「すまん…。」


そう言い残し颯真は祠をあとにした。


「颯真さまは毎日此処へ来て封印の確認をしているのです。」

「封印の?」

「なぜです?」

「いやな気配がする…と。」


颯真…なぜ言ってくれないです?

ウチは頼りにならないです?


「ふ…そういうことでは無いと思いますよ?」

「人の心を読むな…です。」


くすくす…。


「静流最近よく笑うですね?」

「こんな穏やかな雰囲気にさせてくれる方々がいるからでしょうか?」


「泉水…体調はどうですか?」

「あ、うん順調です時々ポコって動くです!」

「そうなのですか?」

「あの…。」

「なんです?」

「触ってもいいでしょうか?」

「どうぞです!」


静流はそっと泉水のお腹に手を当てた

ポコッ…。

「ほら…動いてるです。」


!!!


「不思議です…。」

「静流もこうやって大事にされて生れてきたですよ?」

「それが…良かったかはもう覚えてません…失礼します。」

「静流…。」


“皆殺しだ…皆殺しにしてやる…。”


「え!?だれ…です?」


誰もいないですよね?

なんだろ…。



次の日も颯真は祠に居た。


「もし…お前が封印を破ったとしてもオレが全力で潰してやる…。」

「今日も確認です?」

「泉水…。」

「あぁ…何かあっても戦えるのはオレだけだからな。」

「なにかって…もう何も起こらないですよね?」

「そう思いたいな。」


ガサガサ…。


「誰だ?」

「颯真おじちゃん…なにか怒ってるの?」

「果那ちゃんか…いやなにも怒ってないよ?」


颯真の心の中を察したのか果那は寂しそうな顔をしていた。


よいしょっと…。

颯真は果那を抱き上げた。


「きゃあ!」

「果那ちゃん軽いなぁ…ちゃんとご飯食べてるのか?」

「食べてるよ~。」

「そうか…。」


あぁ~…果那ちゃんだけずるい~。

ボクもやって~。

わたしも~。

ああ。順番な!

わーい。


「颯真…人気者です。」

「颯真のあんな顔みたの久しぶりね。」

「未來さま…。」

「あはは…さまはやめてよ。」

「泉水もやってやろうか?」

「な、バカ言うなです!!ウチは子供じゃ無いです!!」


あはは・・・。


ゴゴゴゴゴ…。

きゃぁぁぁ!!


なんだ?地震か!?


「颯真さま!!」

「静流さん…この揺れはまさか!?」

「わかりません…ですがこれは自然のものでは無いです。」


やはり…穏やかな日は続かないのか…。


「泉水!!子供たちをつれてここから離れろ!」

「わ。わかったです…みんな行くですよ?」


はーい!!


「静流さん…結界は?」

「無事です…ですが…封印が破られています…。」

「なっ…!?」

「何者かが封印を…。」


いったい誰が…そんなことできるやつは…?

とにかく、もう一度この揺れが来たら危ないかも知れない…。

皆をどこかに避難させなければ…。

でも、どこへ…人間界に…?

いや…この人数で人間界にいけば騒動になりかねない。

どうしたら…。


「万が一の時は…私が作った空間に…。」


いや…その空間には…。

そうか…その手があった…。


「静流さん…もしもの時はオレをそこへ奴と一緒に…。」

「颯真さま…あなたは…!」

「ほかにいないだろ?オレはその為にここにいるんだから…。」

「あなた方親子はどうして…。」


静流はしばらく黙り込んで考えていた。

どうせ自分は一度死んだ身また滅んでも同じことだと…。


「颯真さま…私が…。」

「ダメだ!」

「そ、颯真さま?」

「どうせ静流はさんは自分を犠牲にって思ってるんだろ?」

「それは…。」


そんなことさせないから!!

もしもの時はわたしも…。


「未來…おまえ…聞いていたのか…。」

「颯真また1人でしょい込む気でしょ!」

「オレは…。」

「父さまと同じことをする気?」

「……。」

「果那ちゃんを一人にする気か?」

「!」

「もしものとき戦うのはオレだけでいい…。」


!!!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!


そのときまた大地が揺れた…。













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