第三章 果那

未來が居なくなり8年が経った…。

未だに何の音沙汰もなかった。

隣町まで探したが手掛かりはなかった。


「元気出すですよ颯真!」

「オレは元気だぞ?」

「静流の朗報を待ちましょう。」



その頃、静流はオレたちのいた街の神社にいた。


「この結界は…?」


明らかに静流が張った結界とは違っていた…。


そこに1人の女の子が来た…。

年の頃は7歳ぐらいだろうか


「誰かいるの?」


その子は静流の気配を感じていた。


“この子は私の気配を…?”

“えっ…この気配…!”


「こら、果那ここに来たらダメって言ってるでしょ?」


“まさか…未來さま?”


「ごめんなさい…お母さん…。」

「ほら、おじいちゃんのとこ行こ。」

「うん…。」


“間違いない…あれは未來さま…。”

“でも…私に気が付かない…?”

“それに…お母さんって…。”



颯真さまにご報告をしなければ…。

         ●

         ●

         ●


「こら颯真聞いているですか?」

「あぁ…聞いているよ…。」

「もうすぐお父さんになるですよ?」

「心配なのはわかるですけど少しは…。」

「すまん…気をつけるよ…。」


ガサッ…。


「誰だ?」

「静流でございます…ご報告が…。」


「いま大事な話しをしてるです!」

「いや…報告を聞こう。」

「はい。」

「颯真…。」


「未來さまらしき者を見つけました…。」

「なんだと…どこで!?」

「それが颯真さまの街の神社です。」

「あそこは何度も見に行ってるだろ…。」


「はい…廃墟になっていた神社は覚えていますか?」

「あぁ…まさか…。」

「はい、その神社に妙な結界がありまして。」

「術師がいると?」


「そこまで確認してませんが…未來さまは…どうやらお子様がいる様です…。」


「そうか…。」

「…え?」

「子供だとぉぉ~!?」


「どうしますか?」

「とりあえず様子を見に行くか…。」

「それともうひとつ気がかりなことが…。」



オレは取り敢えず神社へ行ってみることにした

静流さんも同行すると言ったが泉水が心配だったので里に残って貰うことにした。


それにしても…人の姿に戻るのも久しぶりだ。

ほぅ…これが静流さん言っていた妙な結界か…。

これの所為で気配が感じられなかったのかも知れんな…。


さて…と。


「あぁ〜ここに来ちゃダメなんだよ〜!」

「ん?あ、そうなのか?」

「うん、お母さんが言ってるもん!」

「そうか…お嬢ちゃんの名前は?」


こら!!果那!!

何度言えば…。


「未來…?」


あの…どちらさまですか?


「何、ふざけてるんだよ未來…。」

「オレだよ颯真だよ…。」


人違いでは無いでしょうか…?

私は…未來さんでは…。


「お母さんは未來って名前じゃないよ?」

「え?」

「お母さんは薫って言うんだよ!」


“薫だと?人違いなのか?いや…この気配は間違い無く未來のものだ…。”


“なぜ…オレがわからない?”


『なんじゃ…騒がしいと思えば来客か…?』

『こんなボロ神社に珍しいのぉ~。』

「おじいちゃん…。」


「薫さん…この者と少し話しがしたい…果那を連れて拝殿に行っておくれ。」


「…はい。」

「果那行きますよ…。」

「は〜い」


「……。」

「さて、お客人…おぬし人では無いな?」

「じいさんこそ…ただの宮司では無いだろ」

『ホッホッホ…ただのジジイじゃ…。』

「嘘が下手だな…。」

「こんな結界…ただのジジイにできるかよ」


『その結界を傷ひとつ負わないで通るか…。』


ジロッ…!


『小者では無いな…。』

「だったらなんだ…?」

「一戦交えるか…じいさん。」


『この結界の中じゃ…貴様とて変化できまい』

「じいさん…なめるなよ?」


颯真は妖狐に変化した…。

その妖気に宮司は震え恐怖した。


『おぬし…まさか妖狐だった…とは…。』

「おじいちゃん大丈夫!?」


颯真の妖気を感じたのか薫が駆け付けて来た…。


『薫さん…来るでない!!』


「未來…帰ろう。」


「ですから…私は…。」


ズキッ…!


“頭が…痛い…。”


『強い妖気にあてられたのか…離れなさい』

「未來!!」


颯真は人の姿に戻り妖力を最小限に抑えた。


トクン…トクン…。


「私は…未來…じゃ…な…い…。」


『妖狐よ…何の用で来たかは知らぬが…。』

『この者はおぬしが探している者では無い。』


「なんだと…?」


『少なくとも当人が未來では無いと申しておるじゃろ?』


“確かに…操られている感じでは無い…。”

“じゃあ…なんだ…記憶喪失?”


「くそ…気配は間違い無く姉貴なのに…!」


ズキッ…!


姉貴…!!

なんだろう…この懐かしい感じ…。

私は…大事なことを忘れているの?

この人は…私の弟?


ズキ…ズキッ!!

「ううぅ…。」

トクン…トクン…。

ドクン…!!


未來…?

あなたには帰るべき場所があるのよ?

大切な家族が…。


母さま…父さま…颯真…?


「未來!!」


『薫さん…早く拝殿に戻りなさい!』


「違う…私は…薫じゃない…。」

『なっ…?』


「私は…未來…颯真は私の弟!!」

「未來…思い出したのか!?」


『記憶が…戻ったのじゃな…?』

「はい…思い出しました。」


「じいさん…未來と話しがしたい…。」

『そ、そうじゃな…。』


「何があったんだよ8年だぞ?」

「そんなに…。」

「あの日つむぎと何が?」

「ハッキリと覚えているのは…。」


つむぎさんに首を絞められて妖力を奪われて…。

そこからの記憶がないの…。

気がついたら、お社の中にいて…。


「そうか…あの子は?」

「あの子は私の娘…果那よ。」

「さっきから不安気に見てるぞ?」

「果那…おいで〜。」

「あの子の父親は?」

「居ない…。」

「え?」


果那が3歳の時だったかな…。

突然妖狐の姿になっていたのを見てしまったの…。

それを見て逃げ出した…。

それから…ずっと帰って来ないの…。


「果那ちゃん寂しいかい?」

「ううん…お母さんがいるもん。」

「そうか…。」


颯真は優しく果那の頭を撫でた。


「えへへ。」


「未來…果那ちゃんはあれから妖狐の姿に?」

「私の知る限り無いわ…。」

「それに、おじいちゃんが結界を張ったから…。」


「お父さんが居なくなったのは果那の所為だから…

果那がキツネさんになったからだって。」


「誰かに言われたのか?」

「……。」

「じいさんか…余計な…。」

「未來…これからどうする?」


「少し考えさせてくれるかな?」

「あぁ…オレは…未來が生きているのがわかれば良い…。」

「それに果那のこともあるから…。」


「そうだな…人として育てるか…。」

「昔を思い出すな…。」

「母さまも苦労しただろうね…。」

「そうだな…。」


未來…オレは…いま里の頭首になった…。

婆さんは隠居させた方が良いと眞白姉さんの考えでな…当初は眞白姉さんがって話しもあったんだけど…颯真の方が相応しいと皆の意見でな…。


「そうなんだ…。」


未來…おまえたちの帰る場所はオレが守っているからいつでも帰って来い…。


「頭首として命令はしないんだ?」

「しない…。」

「おまえたちの気持ちを尊重するよ。」

「颯真…ありがとう。」


「じゃオレは帰るよ。」

「じいさんと話し合って決めろ。」

「うん…。」



そしてオレは里に戻って事の報告をした


「それで置いて来たですか…。」

「あぁ…。」

「そんなじいさん殴り倒してくれば良かったですよ!」

「泉水…言い方…。」

「何にせよ決めるのは未來だからな」

「それはそうですけど…。」


「静流さんのおかげで無事見つかったよ。」

「ありがとう。」

「いえ…。」

「静流~もしかして照れてるです?」

「照れてません…。」



その頃、未來は今後の事を話し合っていた。

未來は果那に外の広い世界を見せてあげたい

自由に生きれる世界で育てたいと言った。

記憶が戻ったのであれば家族の元に戻れば良いと宮司はそう言った…。


「おじいちゃんも家族です。」

「未來さん…。」

「あの人と出会い何処の誰かもわからない私を受け入れてくれて…。」

「私は嬉しかったのを覚えています…。」

「そうか…。」


しばらく宮司と思い出話をした…。


「おじいちゃん…。」

「なんじゃ?」

「もし、あの人が戻って来たら伝えて下さい」

「ごめんなさい…と。」

「わかった…元気でな…。」

「おじいちゃんも…ほら果那…。」

「おじいちゃんバイバイ。」




こうして未來と果那は颯真たちの待つ場所へ戻って行った…。


「おかえり」

「ただいま」


果那ちゃん、ここは皆…果那ちゃんと同じキツネさんなんだよ。

だから何も気にする必要は無いんだよ。


うん!!


そうですウチらは家族ですから

これからは助け合って行くですよ〜。


はい、泉水お姉ちゃん!


え!?お姉…?


ドスッ!!

ぐふっ!


果那ちゃん…かわいいです!

ぎゅ〜て、するです!


未來…果那ちゃんは世渡りが上手いかもな…。

そうね~

この平穏がずっと続けば良いが…。





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