第2部 第一章 別れ
風磨との争いから7年が経った…。
颯真、未來ともに21歳になった。
高校を卒業したあと颯真は就職し未來は夢の為に進学した。
未來は教師になりたかった。
颯真はよく里に行っていた。
里に異変があったら静流から呼び出されるのだ。
それは泉水に会う目的も…。
今日も颯真は里に来ていた。
「颯真さま…夜白様の様子はどうですか?」
「母さんは今のところは元気だけどな…。」
「そうですか…。」
ある日の朝…。
「母さま、おはよう」
「あら…未來早いわね…おはよう」
「いまご飯の支度するわね…。」
ガシャーン…。
「母さま?」
「だ、大丈夫よ…だいじょ…。」
ドサッ…。
夜白は倒れてしまった…。
「母さま!!かあさま~~!!!」
その声に颯真が飛んできた。
「どうした未來!!」
「母さまが…急に…!!どうしよう…。」
「落ち着け…。」
すっ…。
「母さん?大丈夫か…?」
「そ…颯真…ごめんね…。」
「無理に起きなくていい…動けそうか?」
「ええ…なんとか…。」
「母さん…里に帰って治療に専念した方が…。」
「大丈夫よ…傷は完治してるのだから」
「え?治療って?傷って?」
そうだった…母さんの傷については未來には話していなかった…。
「颯真…母さまの怪我ってなんなの!」
「あぁ…7年前に風磨にな…。」
「そう…なんだ…知らなかった…。」
「未來は気を失っていたしな…。」
「うん…気がついたらベッドだったから…。」
湊にもクチ止めしていたから未來には余計なことは言わなかった。
そう言えば湊のやつどうしてるかな…。
高校卒業して別れてから会ってないな。
「颯真…母さん里に戻るわね…。」
「あぁ…その方が良い」
“でも…颯太さんが居たこの町に居たかったなぁ…。”
「静流さんに迎えに来て貰おうか?」
「大丈夫よ…。」
「母さま…本当に大丈夫なの?」
未來の頬に手をあて夜白は優しく微笑んだ…。
「未來…大丈夫だからね。」
「うん…。」
何かを察したのか程なくして静流さんが来た。
「夜白さま…お迎えに来ました。」
「静流…ありがとう。」
「それじゃ…母さん行くね…あとの事は颯真任せましたよ?」
「あぁ…早く治せよ?」
「母さま…私も里に行く!」
「何を言っているのですか…!」
「未來、あなたには夢があるのでしょ?」
「でも…。」
「母さんも応援してるから…。」
“夜白さま…お早く…。”
「颯真…未來…頑張れ!」
「あぁ…。」
「母さま早く良くなってね!」
「はい…。」
「それでは颯真さま、未來さま…。」
そう言うと静流さんと母さんは行った。
・
・
・
「静流…ありがとう…。」
「いえ…。」
「ここで良いわ…。」
「はい…ですが早く行かれた方が…。」
「静流…この傷は里では治らないから…。」
「……。」
未來の先生の姿…そして花嫁姿見たかったなぁ…。
颯真と泉水…幸せになってくれたら良いな…。
「夜白さま!!」
「静流…いままでありがとう…。」
「最後のお願い聞いてくれる?」
「最後だなんて言わないでください!」
「あはは…ごめんね。」
「子供たちの事を…宜しくお願い…。」
「……。」
「夜白…さま?」
「夜白さまぁぁぁぁ~…!!」
静流は夜白の身体を抱きしめ泣いた…。
静流にとって初めての友達を失った。
夜白は里へ無言の帰郷をした…。
「愛する者を失う辛さ…2度と味わいたくなかったのに…馬鹿な娘です…。」
「白夜さま…。」
「安らかな顔して…。」
「颯太さんと会えれば良いですね…。」
そう言い残し白夜は去って行った…。
夜白が逝った事はすぐさま颯真に伝えられた
だが未來には伝えていなかった。
颯真は葬儀には来なかった。
里へ行くといえば未來も行きたがるからだ…。
母の死を知れば未來はきっと自分を責めるに違いない事は皆がわかっていた。
夜白の遺体は水藻の墓標の横に埋葬された。
「夜白さま…報告したい事があったですのに」
「泉水…。」
「静流ぅ…ぐす…。」
「夜白さまから泉水に伝言です。」
「颯真さまとお幸せにと…。」
「!!」
「夜白さま…。」
わぁぁぁ…。
数日後…。
静流が突然来た。
「颯真さま…つむぎが…。」
つむぎが牢獄の封印を破り脱走した…。
夜白の墓を荒らした跡もあった。
「お気をつけください…。」
ドタドタ…!
「颯真!?」
「なんだ未來…早いな。」
「どうして!!」
「あ?」
「どうして母さまが死んだ事を…!!」
「!!?」
「言ってくれなかったのよぉぉ~!!!!」
「未來…お前どこから…?」
“妾が話した…。”
「!!!!」
「つむぎ…さん?」
“どうせ貴様らの事だ全て話す気は無いのだろう?”
“だから妾が教えてやったのだ。”
「あんた…何の権利があって…!」
「母さまが死んだのは私が母さまを刺したから…本当なの!?」
「ねぇ~颯真!!」
「くっ…!」
「本当なん…だ…。」
ダッ…!!
「未來!!」
未來が部屋を飛び出して行った。
「静流さん未來を頼む!」
「わかりました。」
“あははは!”
パァーン!!!!
「なっ!?」
「オレはアンタを軽蔑する…。」
「何を半妖風情が!!」
「いますぐアンタを殺してやりたい…。」
「去れ…いますぐ消えろ!!」
「おのれ!!妾を馬鹿にしおって!」
バッ!!
ガシッ!!
「いい加減にするです!!」
「泉水!?」
「颯真…未來ちゃんを探しにいって!」
「泉水…ありがとう。」
「やめるです…颯真には勝てないです。」
「貴様も妾を愚弄するか!」
「本当のことです!」
「くっ…覚えておれ!!」
・
・
・
その頃、未來は雨の中神社の境内に来ていた…。
「母さま…ごめんなさい…私の所為で…。」
「いいえ…それは違います。」
「!!!」
「静流さん…。」
「未來さまは操られていたのですから…。」
「そんなこと関係ない!!」
「結果的に母さまを刺したのは私だから…私が母さまを…!!」
あら、どうしたの?
未來…?
「え…?」
なぜ泣いているの?
「母さま…?」
「母さま…ごめんなさい!!!」
未來、あなたが謝る事なんか何もないのよ?
母さんは未來の所為でなんて少しも思ってないから。
「でも…。」
もし、未來が自分の所為でって責めてるなら
それは違うのよ?
あのときは母さんもあなたを守ることが出来なかった
未來の姿を見た瞬間わずかな油断が出来たのでしょうね。
無事だった…よかった…と。
油断がなければ母さんは刺されてなかったから…。
颯真を責めないであげてね…あの子なりの決断だったのだから
きっと未來が本当の事を知ったら壊れてしまうと…。
「……。」
未來…母さんからのお願い聞いてくれるかな?
「ぐす…お願い?」
精一杯、生きて幸せになって…。
それが母さんの願い…。
「母さま…うっ…わぁぁぁぁ…ごめんなさい、ごめんなさい…。」
よしよし…もう泣かないの…。
「ぐす…うん…。」
「夜白さま・・・でもどうやって…ここへ?」
あら静流知らないの?
魂は亡くなってから49日は現世に留まっているのですよ?
「そ、そうでした…。」
「母さま…また会える?」
ええ…そうね…。
いつも父さんと一緒に見守っていますよ?
「静流さんに頼めば会えるんじゃないか?」
「颯真さま…。」
颯真…。
「母さん…オレ…泉水さんと一緒になろうと思ってるんだ…。」
そう…やっと決心したのね。
母さんは、わかってましたよ?
幸せになりなさい…颯真、未來…。
それじゃ母さんはそろそろ行きますね…。
「あぁ…ゆっくり休んでくれ…。」
「母さま…会いに行くから!!」
はい…わかりましたよ…それじゃね…。
「未來…いままで黙っててゴメンな…。」
「いいの…私の為だったんでしょ?」
「あぁ…。」
「なら仕方ないじゃない…私も強くならなきゃ!」
「帰ろうか…。」
「うん…。」
もういいのか?
颯太さん…。
ええ…あの子たちはきっと大丈夫だから…。
そうだな…。
颯太さん…これからはずっと一緒ですね…。
あぁ…夜白・・・それじゃ行こうか…。
はい…。
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