第9話 ありがとう・・・そしてさようなら。

風磨との抗争から数日が過ぎた。

母さんの傷は見た目には癒えていた…。

オレの怪我も回復していた。

変わったことと言えば…。


私たちは町に戻りいつもと変わらない生活が戻ると思っていた。

でもそうはならなかった…。

里から戻ると胡桃は祐治さんの都合で海外へ引っ越していった。

その方が色々と良かったのかも知れない。

母様も眞白も一緒に里に帰った。


そして恒例の夏祭りが始まった…。

「颯真?未來?支度で来てるの~?」

「あぁ…。」

「うん…ちょっと待って~…。」


母さんも未來もいつも通りに戻っていた…。

あのことは言うつもりも無い。


「二人とも浴衣似合うわね…。」

颯真は少し照れた顔をしていた…。

「そ、そうか?」

「颯真~何~?照れてんの?」

バシッ!

「いったぁ~い!」

「うるさいんだよ!」

「そういえば湊のやつ来るのか?」

「ん~…塾の帰りに来るって言ってたけど…。」


姉貴は湊と仲直り出来たようだ…。

委員長も満足気な顔で

「あなた達が仲良くしてないと調子狂うのよね!」

などと憎まれ口を言って来る。


「出かけるわよ…。」


お祭りに出掛けるなんて何年ぶりだろう…。

そういえば…泉水さん来てくれるんだろうか?


祭囃子が聞こえ普段あまり人けのない神社もこのときは

人が多くなる提灯の灯りや出店の屋台で周りの雰囲気も変わる

オレたちは神社の入り口で湊を待っていた。


「こんばんは」

「湊くん!」

「湊…おまえ何で浴衣着てこないんだよ?」

「あ、いや…塾の帰りまっずぐ来たからさ…。」

「湊くんは颯真と違って勉強頑張ってるんだよね~。」

「んだと?てめえ!!」

「なによ!文句あるの?」

「こんなところまで来てケンカしないの!」


やっぱり泉水さん来ないか…。

思わずボソっと呟いてしまった。

「なに?泉水さん誘ったの?」

「まあ…な。」

「ふぅ~~ん」

未來はちょっと冷やかす様な目でオレを見ていた

「い、良いだろ…べつに…。」

オレは少し照れた顔をしたようだ…。

クスクス…。

「母さん?」

「あ、ごめんなさい…颯真がそんな顔すると思わなかったから。」

そして待ち人来る…。

「こんばんは」

と思いきやクラスメイトの委員長だった…。

「なんだ委員長か…。」

「こんばんは麻衣子ちゃん!」

「夜白さまお元気そうで良かったです。」

「ありがとうね。」


はい?いま何ていった?“夜白”さまって言わなかったか?


「なんです?」

「あのさ…委員長名前なんだっけ?」

「クラスメイトの名前くらい覚えておきやがれです!」

「泉水 麻衣子ですけど?」

「泉水さん…おまえか…。」


普段学校でオレたちが人ではないとばれない様に

様子を見にクラスメイトになりすまして忍び込んで

いたそうだ…。


「あれ…母さんは、てっきり知っていると思っていたけど…?」

「しらんわ!!!」

「さて、母さんは展望台の方にいってるわね…。」

「みんなで遊んでらっしゃい」

「じゃ、いこ~湊くん!」


まさか、あの泉水さんが…クラスにいたとはな…。


「さぁ、颯真くん案内してくださいです!」

「あぁ…行こうか泉水さん…。」

「泉水…。」

「え?」

「泉水さんじゃなく泉水と呼んで欲しいです!」

「お、おう…わかったよ泉水…行こう」

「はいです!」

            ・   

            ・ 

            ・

            ・

夜白はひとり展望台に来て町の風景を見ていた…。

「ここは…変わらないな…。」

「学園に通ってた頃イヤな事や悩みがあったらここへ来てた…。」

「あのころに戻りたいな…会いたいよ…颯太さん…。」

“夜白…久しぶりだな…。”

え…?振り向くと颯太が立っていた。

「颯太さん?」


あぁ…ちょっと無理言って静流さんに連れて来てもらった。


「静流?まさか…。」

「はい、静流は此処におります。」


静流は風磨と共に常闇に自分も一緒に封印してしまったのだと

誰しもが思った…。

それほどに強大な妖気を風磨は放っていたからだった。

だが颯真との戦いによって妖力の殆どは颯真に持っていかれていた。

それに静流にはまだ消えるわけには行かない理由もあった。

それは…。


「私たちは静流まで消えてしまったのだと思っていたから…。」

「まだ私にはやることがありますので消えるわけには行きません。」

「それより夜白様あまり時間がありません颯太さまと…お過ごしください。」

「ありがとう…。」


静流さんには色々世話になったんだ…。


「そう…みたいね…。」


夜白?


「あれ…おかしいな…なんで・・・もう泣かないって決めたのに…。」


泣きたいときは泣くと良いぞ?


「う…うん…ごめんなさい…いまだけ…。」


すまなかったな…おまえ一人に任せてしまって…。

辛かっただろ…。


「ううん…私よりもあなたが…私はあなたを犠牲にして…しまった…。」


そんなこと気にしていたのか?

オレはお前たちを一時でも守れたんだから満足だよ。


「そんな…私は…あなたと居たかった…。」


なあ夜白…これからも辛い事悲しい事があるだろう…。


「そうね…。」


でも、きっとおまえ達なら乗り越えていけるとオレは思ってる…。

おまえ達には幸せになって欲しいそう願っている。


「ありがとう…。」

「あのね…颯太さん…私も…。」


ん?なんだ?


「ううん、なんでもない…。」

「颯真も未來もこれから沢山の人と出会って大きく羽ばたいて欲しいな。」


そうだな…。

あいつらなら大丈夫だろ。


「そうね…うん、きっと大丈夫。」


“颯太さま…そろそろお時間です…。”


あぁ…わかった…ありがとな静流さん色々と協力してくれて


“いいえ私は別になにも…。”


「静流、私からも礼を言います…。」

「静流のおかげで颯真は殺すという業を犯さずに済みました。」

「本当にありがとう」


“そんな…。”


オレからも改めてありがとう…。


“お二人ともおやめください…私は別に大したことはしてませんから…。”


「静流?照れてる?」


“照れてません…。”


「ホントに?」


“少しだけ…。”


さて…そろそろ行くよ…。

「うん…颯太さん…またね…。」

ああ…。

“では…夜白様失礼します…。”


こうして颯太は夜白の前から去ったほんの少しの間だったが…。

夜白にとっては颯太との永遠の時間だったのかも知れない。

私は颯太さんにあの時言えなかったことがある・・・。

もう時期あなたの元へ行くと思います…。

その時はよろしくお願いしますね…。

私は、あの子たちを立派に育ててみせますから褒めてくださいね。


その時まで…さようなら…です。





ここまで拙いお話を読んでいただきありがとうございました。

このお話しはまだ続きますが…そのときはまたお付き合いいただけると

幸いです。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る