第8話 悲劇…。
偵察に出ていた静流が帰って来た…。
風磨は里のアジトを出て颯真たちが暮らす町の神社にいるようだ
仲間はおらず未來の姿も確認できていた。
「夜白様…ただいま戻りました。」
「静流、お疲れ様…。」
「風磨のやろうは!?姉貴は無事なのか!?」
「ちょっと、颯真落ち着きなさい…静流が話そうとしてるでしょ?」
静流の話しによると拝殿でなにやら企んでいる様子だという。
未來の無事は確認したが元気はなく
ボーっとしてる感じだった。
風磨はそこを根城に計画とやらの実行をするきなのだろうか…。
風磨の計画とは一体…?
「とにかく居場所はわかったんだ…ここは正面突破だろ!」
「それは無謀というものだと思います」
「いくら風磨が一人だとは言え未來さまがいるのですよ?」
「いわば人質みたいなものです!」
だからと言ってここでじっとしていても仕方ないだろ…。
「静流…私と静流で正面から入りましょう…。」
「颯真は様子を見つつ側面から境内に来てちょうだい」
「側面から?」
「本当に風磨が一人とは限らないということですよチビッ子。」
「そうか…だからチビッ子言うな!」
確かに罠を仕掛けていないとも限らない皆でいっきに
入り込んで一網打尽にされる可能性もないわけではなかった。
仮にも風磨は水藻とともに戦場を駆けて来た…。
なにも策を講じてないハズが無かった。
「今夜、未來を救いにいきましょう…。」
「いまからじゃないのかよ?」
「これからだと静流が動けなくなりますから…。」
「申し訳ございません…。」
「夜白様に颯太さまより伝言を預かっていました…。」
「伝言?」
「はい…。」
“夜白…ここまで子供たちを育ててくれてありがとう辛い思いばかりさせて済まないと思っている颯真はオレが里に行くように話した未來のことは颯真に任せて大丈夫だろ…おまえは無理はするな…。”
「と…言っておりました…。」
「颯太さん…。」
「親父のやつ余程母さんが心配だったんだな…。」
・
・
・
「そういえば母さんに聞きたいことがあったんだった…。」
「聞きたいこと?」
「あぁ…母さんはオレたちを此処で育てようとは思わなかったのかな?って」
「それは…母様からも言われたんだけど…。」
夜白は颯太との思い出の地で育てたかった。
ここにいれば、二人とも自由に過ごせていたかもしれない
でも、人として育てたかったのだ…。
「そっか…ありがとうな…。」
クス…。
「颯真…ここに来て少し変わったわね…。」
「そうかな?」
「泉水とも上手くやってるようだしね」
「そんなことないだろ…。」
「そう?泉水はまんざらでもないみたいよ?」
確かに泉水さんはオレに良くしてくれてる此処に来たばかりの時は
イヤなやつだと思っていたけど…面倒見のいい人だった。
まぁ…年が若ければもっと良かったかな…。
バシッ!!
「いてっ!!」
「颯真なにげに失礼です!」
「あ?オレなにもいってないだろ!?」
「言ってなくても心の中で思ったです!」
「人の心を勝手にみるな!!」
・
・
・
・
その夜…ついに決戦の時はきた…。
神社の鳥居の前まで来た時、風磨が語り掛けて来た。
『遅かったな…夜白殿!』
「風磨…未來を返してもらいます!」
『ふははは…返してほしかったら境内まで来るがいい。』
あからさまに罠だと言ってるようなものだろ…。
「いきましょう!!静流!」
「夜白さま・・・でもこれは…。」
「来いというのなら行くまでです!」
夜白と静流は鳥居から境内へ向かった…。
「よし、オレたちはこちらの茂みから向かおう…。」
「敵の気配はないです。」
「行こう!」
ガサガサ…。
オレと泉水さんは妖気を抑え茂みに身を隠しながら進んだ
この茂みは境内の裏側まで続いていた。
「そういえば…もうすぐ夏祭りの季節だな…。」
「なんです?急に緊張感のないやつです!」
「いや…なんとなくな…。」
「全部終わったらその祭りとやらにウチを連れて行くです!」
「なんでだよ?」
「……。」
「あぁ…約束だ終わったら一緒にいこう。」
「約束ですよ?」
颯真たちは境内の裏手で待機していた…。
少し遅れて夜白たちが境内に現れた。
「風磨!来ましたよ?未來を返しなさい!!」
「夜白様…お下がりください…。」
「大丈夫よ」
『お望み通り娘に会わせてやるぞ?』
ギィ…。
本殿の扉が開いた…。
そして、未來の姿がそこにあった…。
だがその瞳には生気が無かった・・・まるでガラス玉のような瞳だった。
「未來!よかった無事だったのね…。」
“風磨さまの邪魔はさせない…。”
「未來?」
スッ…。
未來が夜白に向かってきた…。
ドスッ!!
「うっ!?」
「夜白さま!?」
未來は袖に隠し持っていた短刀で夜白を突き刺した…。
「み…みらい…なぜ…?」
“あなたが…風磨さまの邪魔をするから…。”
一足遅く颯真が到着した…そして目にしたものは
未來が母を刺している場面だった…。
颯真は慌てて飛び出した。
「未來~~~おまえ何をやってんだよ!!」
颯真がそう言うと未來はゆっくりと颯真の方を向いた…。
「そ…颯真…わ、私は大丈夫…未來は操られている…みたい…。」
『ふはははは…どうだ?愛する娘に刺された気分は?』
「この外道!!」
『今この場で娘にかかった術を解き放つのも一興だな…。』
「させません!!」
バッババッ!!
静流が風磨の気配のする方に呪符を投げた…。
『な!?』
「颯真さまあとは頼みます!!」
「あぁ…母さんを頼むよ…。」
「くれぐれも…飲まれないでください…。」
シュッ!!
静流は夜白を連れ姿を消した…。
『未來…その小僧を始末しろ!!』
ザッ…。
「姉貴!!目を覚ませ!!」
「……。」
「未來!!!」
『いくら叫んでも無駄だ…その娘は我の操り人形だからな…。』
「くそ…やるしかないのかよ…。」
その時…。
「未來ちゃん!!やめるんだ!!」
湊が現れた…。
「湊!?おまえどうして!?」
“あなたも…邪魔をするの?”
「湊!!危ない逃げろ!!」
ザザッ…。
「う、うわっ!?」
湊がやられる…そう思った時、未來の動きが急に止まった…。
「…く…ん…。」
「え?」
「みな…と…くん?」
「未來ちゃん…ボクがわかるのかい!?」
湊の呼びかけに未來の術は解け瞳には生気が戻った…。
『我の術が解けただと…?』
『何だ…あの小僧は…!?』
「湊くん…どうして…また…怖い思いさせて…ごめん…ね。」
「ボクの方こそ…酷い事いってゴメン!!」
「うん…だ、だいじょう…ぶ…。」
ドサッ…。
「未來ちゃん!?」
「しっかりして…未來ちゃん!!」
「気を失っただけだ…湊…話はあとだ…姉貴を…未來を頼む!」
「颯真…わかった…死ぬなよ?」
「ああ…。」
そろそろ決着をつけよう…。
隠れてないでいい加減…出てこい風磨!!
「フフフ…そうか誰かと思えばあの時の小僧か…。」
「妖気がすこし上がったか?」
「だが、それの程度で我に勝てると思うのか?」
ザザザッ!!
「やってみないとわからないだろう!!!」
バキッ!!
「ぐっ!?」
「これは母さんの分!」
ドカッ!!
「ぐふっ!?」
「これは…父さんの分!!」
ベキベキッ!!!
「がはぁっ!!」
そしてこれは…オレたち家族が受けた痛みだ!!!
颯真の渾身の一撃をまともにくらい風磨は吹き飛んだ…。
はぁはぁはぁ…。
ザッ…ザッ…。
だが風磨には効いていなかった…。
「フフフ…あーはははは!!」
「何が可笑しいんだよ!」
「これがお前たち家族の痛みだと?」
「ならば大したことないな…もう一度聞くぞ?」
「その程度のチカラで勝てると思っているのか?」
風磨の気配が変わった…。
やばい!!
とっさに後ろに飛び躱そうとした…。
遅い!!
ザシュ!ズバッ!!
「か…かはっ…。」
ドシャッ…!!
颯真は崩れ落ちた…。
“チカラの差が…ここまであるのか…?”
「く…くそっ…負けられないんだ…。」
「ほう…まだ立つか…。」
「へへ…まだ終われない…。」
「そのまま寝ていれば死なずに済んだものを…。」
「どうせ…殺す気なんだろ…?」
「ならば…お望み通り串刺しにしてやるわ!!」
ブォォ!!
ブシャァァァ…。
風磨の手刀が颯真の胸を貫くかに思えた…。
「な…!?」
「颯真…無事です?」
「泉水さん!!!」
ドシャ…。
颯真を庇い泉水が紅に染まった…。
「邪魔しおって…この女め!!」
うおぉぉぉぉ~~~っ!!!
「し、しまっ…!?」
バキィィッ!!
「泉水さんしっかりしろ!!」
「なんで…オレなんかの為に…。」
「な…なぜ…ですか…ね…。」
「お祭り…行きたかった…です…。」
ダメだ…出血が多すぎる…再生が間にっていない…。
「しゃべるな…意識を傷に集中するんだ…!」
「颯真…妖狐化するです…そうすれば…ま…けない…です…。」
カクン…。
「泉水さ…ん?」
「うそだろオイ!!泉水さん!!」
「泉水ぃぃぃぃぃぃ~~~~~~!!!!」
ドクン‥ドクン‥ドクン‥
許さない…風磨ぁぁ…お前は許さない!!!
うおぉぉぉあぁぁぁぁぁ!!!
颯真の妖気が一気に高まった…そして…。
ゴゴゴゴゴ…。
くそ…油断した…ん?小僧の妖気が…?
ゴゴゴゴゴ…。
なんだ?地鳴りだと?
颯真に吹き飛ばされ戻って来た風磨が見たものは…。
『はぁぁぁ…。』
「なんだ?貴様は…誰だ?」
ジロッ…。
ガアァァァッ!!!
妖狐化しその力に我を忘れ…飲み込まれてしまった…。
静流が去り際に言った“飲まれないで下さい”とは
そういうことだった…。
シュンッ!!
ガシィッ…メリメリ…メキ…。
“速い…受け止めるのが精一杯…だと?”
「ぐはぁぁ…なんだと…!?」
その一撃はいままでの颯真のものより遥かに重く
受け止めた風磨の腕を粉砕した…。
『おまえは…殺す…。』
「くっ…!」
バキバキバキ…。
風磨の腕を引きちぎった…。
そして…ドスッ!!!
「ぐわぁぁっ!!」
颯真の拳が風磨の腹部に刺さりこんだ…。
メキメキ…。
“颯真さまそれ以上はイケません!!”
『……!?』
ブンッ…ドシャ…。
颯真は風磨を放り投げた…。
『貴様…だれだ?貴様も殺すぞ?』
「やはり飲まれてしまいましたか…。」
「失礼…。」
パァァァァン!!!
静流が颯真の頬を力いっぱい引っ叩いた!!
『!!』
「いって!!」
「目が覚めましたか?」
「え…し、静流さん…な、なんで…!?」
泉水が殺された…そのことが引き金になり妖狐本来の姿になった
制御していたハズだったのに…。
「泉水を連れて里にお戻りください…。」
「え?なんで…!?」
「風磨は私が常闇に封印してきます。」
「いや、でも…。」
「お戻りください!!!」
「あぁ…わかったよ…。」
「夜白様はご無事です…では…お元気で…。」
「静流さん!!」
風磨はまともに動ける状態では無かった…。
静流が傍に近寄ると…。
「きさま…何をする気だ?」
「あなたは此処に居てはイケない存在…私と共に闇に戻るのです…。」
「何…だと…?」
「きさまは憎くないのか…人間が…ふはは…知っているぞ?」
「おまえは一族の為にと人身御供にされんだろ?」
「黙りなさい…。」
「愛する者を奪われ憎しみにくれたはずだぁ…お前もオレも同じなんだよ!!」
「黙りなさい!!」
「かはっ…。」
「私はあなたとは違います…夜白様たちによって救われたのです…。」
ふはははは…。
「なにが可笑しいのです!」
“良いことを教えてやる…夜白はあの娘に刺された傷で死ぬ!!”
「ばかな…傷はふさがりました…。」
「まさか…!?」
“そうだ…あの短刀には呪詛が込めてある7年後…だ…。”
「くっ…外道が…!」
「それは本当か!?」
「颯真さま…?」
颯真は静流と風磨が話してることを聞いてしまった…。
母さんが7年後に…死ぬだと…そんなバカな!
「呪いを解く方法はないのか!?」
「残念ながら…。」
ふはははは…苦しみもがいて死ぬがいい…。
バキッ!!
「貴様はここでオレが地獄に送ってやる!!」
「颯真さまお別れです…。」
「この者を許すわけにはいきません…。」
「どうかお幸せに…。」
「離れてください…。」
そういうと静流と風磨の周りを白い光が包み込んだ…。
「やめろ!!いやだ!!あそこには戻りたくない!!!」
シュワワ…シュッ…!
そうだ…泉水を里で休ませてあげなきゃな…。
「オレが守ってあげなければいけなかったのに…ごめん…。」
ぎゅうっ・・・。
オレは泉水の身体を強く抱きしめた…。
「痛い…です。」
「え?」
「バカですね…ちょっと出血が多くて気を失っただけですよ?」
「何だよ…オレはてっきり…。」
「てっきり?なんです?」
「バカやろう…。」
色々あったせいか急に体のチカラが抜けた気がした…。
泉水さんが生きていたことでホッとしたのだろう
妖狐の姿から人間の姿に戻り気を失ったようだった…。
「こんなボロボロになるまで…お疲れ様です…。」
ちゅっ…。
卑怯かもしれないですけど…。
いまだけは…です…。
「さあ…チビッ子…かえるですよ…。」
これで本当に終わったのだろうか…。
結局…風磨が思い描いていた計画とは何だったのだろう
一族と人間への復讐だったのだろうか…。
でもそれは風磨しか知らない事だ…。
少なくとも…オレたちは静かに暮らしていたい。
母さんのことや未來のことは…絶対に知られてはいけない。
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