第6話 颯真覚醒

未來が自ら囚われた理由を知った静流は颯太の依頼通り湊が現れるのを待っていた…。


普通の何もチカラの無い人間が来るはずも無いと静流は思っていた。

夕刻になりやはり来ないかと結界を張ろうとしたその時、湊が来た。


「この神社に来るのは何年ぶりだろう」


さすがにこの時間になると薄気味悪い

ましてや既に使われてないとなれば荒れ放題になり更に気味悪さを増す。


「颯真のお父さんが来れば分かる言ってたけど何も無いな…。」


ガザガザッ!


「うわぁ!!」


カァカァ〜…。


「なんだ…カラスか…やばいものでも出たかと思った…。」


“やばいものとは妖かしですか?”


「え…!?」


なんだ誰もいないのに声が…。


“あなたが湊さまですか?”


な、な、なんなんだよ…!

頭の中に直接話しかけてくるこの感覚は…!


“もう一度聞きますあなたが湊さまですか?”


落ち着け落ち着け…。

湊は自分に言い聞かせる…。


「僕は湊だけど…あなたは!?」


湊が声の主に問いかけると…。

静流が目の前に現れた。


「う、うわっ!!」


その静流の姿を見て驚くなと言うのも無理な話かも知れない。

長い黒髪に紅い瞳に白装束…頭にはキツネの面。

普通に見ればこの世の者では無いと判断できた…。


「私は静流と申します。」

「颯太様より伺っております。」

「湊と言う少年が来たら頼むと…。」


颯真のお父さんが言っていた道というのがこの静流だった。

湊を未來のところへ連れて行ってくれというのが颯太の依頼だった…。


「確認します…湊さまあなたは未來様の為に生命をかけられますか?」


静流の言いたいことは、この先は生命の保証はできないということだ。


「未來ちゃんは僕を助けてくれた…。」

「今度は僕が助けたい…!」


「では、行かれるのですね?」

「はい!」

「わかりました…では参りましょう。」


こうして湊は未來の元へ妖狐の里へ足を踏み入れた…。

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           ●

その頃、颯真は異質な空間に1人でいた泉水が何処かに行ったまま帰って来なかった…。

泉水は颯真にチカラを戻すのに躊躇していた…それは…。


「くそっ…いつまで持たせるんだよ!」

「待たせたです…。」


泉水が戻って来た…。

少し浮かない顔つきだった。


「遅いんだよ!いつまで持たせるつもりだったんだよ!」


「ウチは別に一生待たせても構わないんですけど?」

「なっ…!?」


「でも白夜様の言いつけです…。」

「最後に確認するです。」

「最後ってなんだよ…。」


泉水は颯真にチカラを戻した時の身体の変化やリバウンドによる肉体の崩壊など説明した…。


「万が一の事もあるです。」


ごくっ…。


颯真は簡単に考えていた…。

思えば未來が覚醒した時とは違うのだ未來のチカラは元々あって眠っていただけだが颯真は場合は封印されていたものを無理矢理に起こし解放する…。

反動が無いわけがなかった。


「あのさ…もし、耐えきれてなかったら…?」

「そうですね…身体は滅んで死ぬです。」

「でも、やるしか無いんだ…。」

「泉水さん…お願いします!!」


颯真の真剣な眼差しに泉水は納得した

コイツならきっと大丈夫だと…。

「では、始めるです…。」

「昔どこかの偉そうな坊さんに教わった術です…。」


偉そうなって…実際偉いんだろう…。


「目をつぶって意識を集中するですよ」


臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前……『解!!!!』

【我が封印しきものを戻し賜え!!】


泉水は九字を切った…本来九字とは僧侶や陰陽師が邪気を払うものであったが泉水はそれを封印の鍵にしていた…。


「封印は解いたです…。」

「え…?いや別に何も…。」

ドクン!

「うっ!?」

ドクン…ドクン…

「か、身体が…あ、熱い…!」


ピキピキ…バリッ…。

「うあああああああ〜〜!!」

肉体の崩壊が始まった…。

「やっぱりダメだったですか…!?」

颯真は身体中に激痛が走りのたうち回った…。

「ぐわぁぁぁぁ…くそっ…くそぉぉぉ!!」


“こんな苦しい思いをして…。”

“貴様は何を望むのだ?”


「うあああああああ!!」

「な、何も…ただ…ぐあっ」


ただ…自分の大切な人を人たちを…護るチカラが…欲しいだけだぁぁ~!!


“その覚悟見届けようぞ…。”


颯真の身体が金色の光りに包まれた…。


「チ…チビッ…子…なのです?」


「ふぅぅぅ~~…。」


光の中から現れた颯真は上級の妖狐そのものだった…。

髪は銀髪になり金色の瞳…。


「ちょっ…チビッ子!?耳と尻尾はどうしたです!?」

「あ?妖狐になる手前で留めたんだよ…。」

「あり得ないです!!妖狐化しないでその妖力なんて…。」

「あり得ないことなんかないだろ?」


そういうと颯真はニヤリと笑った…。

妖狐化するのを拒んだのかそれは颯真しかわからない。


「まさか颯真は…この妖力を制御してるですか?」

「そうかもな!」

此処に来た時の颯真とはまるで別人だった…。

チカラを取り戻りたからなのか、その顔は自信に満ちていた。

それが逆に悲劇にならなければいいのだが。

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そして、夜白の元へ向かった白夜だが…。

「おかしいねぇ…たしかこのあたりだと思ったんだけどねぇ…。」

道に迷っていた…。

夜白は略妖力が無い状態で一緒に居るはずの眞白は風磨の探知を逃れるべく

最小限に抑えていたせいで白夜も探せないでいた…。


オロオロ…。

「どうしましょう…。」

「あれ?白夜さま?」


人の姿をしている白夜は普通の人間にもみえるのだが…。

今の時代白夜の名を知るものは人間界には里のものしかいない。

名を呼ばれ振り向くとそこには胡桃がいた。


「おまえは…胡桃かい?」

「やっぱり白夜さまだにゃ!」

「相変わらずその口癖なんだねぇ…。」

「あ…。」

「どうしたんですか?人里に来るなんて珍しいですね?」

「夜白に会いに来たんだけど…さっぱり分からなくてねぇ…。」

「夜白ちゃんならここにいるにゃよ?」


胡桃は目の前のマンションを指さした。

「なっ!?」

「案内するにゃ!」

「そ、うかい?悪いねぇ…。」


自動ドアを入りインターホンの前に立つと

白夜は…扉が勝手に開くのかい?と言わんばかりにドアを見ていた。


クスクス…。

おもしろいにゃ…。

ピピピ…。

ピンポーン♪

部屋番号を押し呼び出しを押した…。

「はい。」

インターホン越しに夜白の声が聞こえた。

それを聞いた白夜は…。

「夜白!お前どうしたんだい?そんな箱の中に入って!?」

「母様?」

「プッ…白夜さまおもしろいにゃ…夜白ちゃん今行くにゃよ~。」


エレベーターを降り夜白の部屋に入った白夜は

二度と人里には行くまいと誓っていた。

「母様ご無沙汰しています。」

「元気そうだね…という感じでもないねぇ…。」

「かあさま!」

「眞白?お前…何でここに?」


いままでの経緯を白夜に話した…草薙のこと目覚めた風磨が未來をねらって

襲って来たことそれで眞白が怪我をしたこと…。

そして颯真が行方不明になってること…。


「風磨って…?もしかして風磨おじさんかにゃ?」


そうだ…風磨は胡桃の母小雪の弟…

つまり胡桃にとって叔父にあたるのだ…。


「なんで教えてくれなかったにゃ!!」

「胡桃…。」

「未來ちゃんをさらったのが風磨叔父さんだったなんて…。」

「お母さんやこむぎは…何て言ってるにゃ?」


胡桃はまだ知らなかったその叔父によって母も妹も殺されていることを…。

風磨の封印が人間により解かれ自由になった風磨は突如と里に現れた

他の仲間たちも手にかけそれを止めに入った小雪も惨殺された…。

白夜が留守の間を狙った行動であった…。

もし白夜がそこにいたら殺されていたかもしれない…。

それほどまでに風磨はチカラをつけていた。

一族に対する恨み人間に対する恨みが風磨を強くしていた。


「胡桃そのことは追って話します…。」

「はいにゃ…。」


「どうして母様がここにきたの?」

「あ、そうそう…そうだったわねぇ。」

「まず…颯真は里に来てますよ?」

「え!?」

颯太の導きで妖狐の里に来たこと白夜に颯太が会いに来たこと

夜白に順を追って話した。

「颯太さんが…?」

「おまえのところには来てないのかい?」

「……。」

「薄情だねぇ…あれほど夜白を泣かしたら許さないと言ったのに…。」

「だから人間は好きになれないんだよ…。」


キッ…。

夜白は母を睨みつけた。


「!!!!」

「いくら母様でもそれ以上颯太さんの悪口は許さない…。」

「へー…良い顔するじゃないか…。」

「その顔が出来るってことは大丈夫だね…。」


夜白が母を睨んだその眼には怒りが満ちていたのを白夜は気がついた。

同時に夜白が天使に封印されたチカラも解放されようとしていることに…。

チカラの源は怒りだった。

怒り無くして本来のチカラは得られない…。


「夜白…お前は里に行って子供たちを連れて帰って来なさい…。」

「え…でも私には…。」

「もうわかってるんだろ?自分でも…。」

「夜白ちゃん…もしかしてチカラがもどってるのかにゃ?」


"我のチカラを封じに魂よ…我のチカラを解放し賜え…!”


そう言うと夜白の身体は白く光り出し妖狐の姿になった…。

「母様…胡桃ちゃん私いってくるね…。」

「気をつけてね…風磨は強い私でも敵わないだろう…。」

「夜白ちゃん待って!!私もいくにゃ!」


「胡桃は…よしなさい…お前に何かあったら萌香ちゃんを一人にする気かい?」

「もうおまえ一人じゃないんだよ?悲しむものがいることを忘れてはいけないよ?」

「…わかったにゃ…夜白ちゃん…気をつけてね。」

「うん、いってきます!」


シュッ!!


夜白が行ったあと胡桃には事実を白夜は語った…。

母も妹も殺されたことを…。

胡桃はことばを失っていた…瞳には涙があふれていた…。

そして神社の竹藪に着いた夜白に風磨からの刺客が待っていた。













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