第5話 未來の行方

颯真は父と静流の導きがあり母の故郷妖狐の里に辿り着いた。

この先の泉に白夜がいるという…。

考えてみたら白夜になど会った記憶もなかった…。

オレの事わかるかな…喰われたりして

などと考えていた。


泉が見えて来た…。

瀧から細い水が落ちていた。

荘厳な感じがする…。


ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…。


粒の細かい砂利が敷き詰めてあり歩くと音がする…誰か来ても分かるようになのか?


「誰です?」


やはりそのようだ…。


ザッ…ザッ。


「おまえは…?」

「颯真かい?」


オレの事がわかるようだ…。

なぜわかったのだろう?

オレは小さく頷いた。


「こちらに来なさい…。」


傍に行くと優しく抱きしめてくれた…。


「よく来たね…。大きくなったねぇ。」

「前に来た時は3つくらいかね…。」


え?オレは婆さんにあったことあるんだ…。


「誰が婆さんだい?」

「あ…。」

「まったく・・・親子揃って・・・。」


「聞きたい事があって此処に来たんだ!」

「聞きたいこと?風磨のことかい?」


風磨がオレたちの前に現われたことは知っていたようだった。

未來がどこに連れて行かれたのは知らないらしい…。


「風磨のことじゃない…いや、それも聞こうと思っていたけど…。」

「なぜ、オレはチカラが使えないのだろう?」

「オレにチカラがあれば姉貴が連れて行かれなかったのに…。」

「うぬぼれるでない…。」

「え…。」

「仮におまえにチカラがあったとしたら今おまえは此処にいなかったんだよ?」

「風磨に殺されていたかも知れない・・・。」

「・・・・・・。」


そうだ…颯真の妖気を良しとするわけがなかった。


「颯真…チカラが欲しいかい?」

「そりゃ欲しいに決まってる!」

「チカラを得てどうする気だい?」

「姉貴を連れて帰りたい。」


風磨と戦ってもお前には勝ち目はないかもしれないというのに・・・。

なぜ無謀なことをしようとするのか・・・。


「そんなこと…!」

「お前が死ねば悲しむ者もいるというのに…。」


「オレは後悔したくない・・・親父だってチカラも無いのに草薙に挑んだ・・・。」

「オレだって・・・。」

「強くなりたい…そういうことだね?」


「……。」


「だけどすまない・・・お前のチカラを封じたのは私では無い。」

「封じた者以外は封印を解けないのだよ。」


「え…じゃあ誰が・・・?」


「泉水!」


シュタッ!


「はい、白夜さま。」


白夜がそう呼ぶと姿を現した。

なんだ?このちっこい妖狐は…。


「颯真のチカラを解放してあげてください。」

「はい。」

「は?」


「チカラの解放をお願いします。」


「ですが…このことは夜白様はご存知なのです?」


「いいえ…私の独断です。」


「……。」


「わかりましたです!」

「ホラ、ちびっこ行くですよ!」

「なんだよオマエは!?」

「オマエこそなんなんです!?」


え…なんか聞き覚えが…?


「いくですか?行かないのですか?」

「あ?行くさ!だがチビチビ言うな!」


「オマエの方がチビだろ!」


「ウチはこう見えてもオマエよりず〜っと年上なのですよ?」

「敬えやがれです!」


「くっ…何歳なんだよ?」


「女性に歳を聞くなんてデリカシーがないチビです!」


「泉水…?」


「…はいです!」


「仕方ないです…。」


ギュッ…泉水は颯真の手を掴んだ。


「なっ!?なんだよ!」

少し顔を赤らめた颯真だった…。


「なに照れてるです?手を離すなですよ?離したら死ぬです!」

「て、照れてなんてねぇよ!」


シュッ!!


「う、うわぁっ!?」


ドサッ!


「いってぇ~…。」

「ここは…?」


「ここは静流が作った空間ですよ。」


「まず聞かせてもらうですよ。」


「オマエがチカラを欲する理由を知りたいです…。」

「理由に納得出来たら解放してやるです!」


「オレは…姉貴を連れ戻したい…それだけなんだよ…。」

「チカラがなければアイツから姉貴を取り戻せないから…。」


「なるほどです…。」


「それじゃ…!」


「ダメです…。」


「何でだよ理由を話せばって言っただろ!?」


「納得出来たら…と言ったですよ?」

「何が納得いかないんだよ!」

「夜白様はオマエが人として育つことを願い此処へ来たのですよ?」


母さんが?なぜ?


「な、何でおまえが知ってるんだよ!」

「おまえでは無いです!」

「うちには泉水と言う名があるです!」


めんどくさい奴だな…。


「何で泉水さんが知っているんですか?」


「それはウチがオマエのチカラを封印したからです!」


なにドヤ顔してんだよコイツは…。


「…少し待っているです。」


シュッ!


「おい!!何処に行くんだよ!」


泉水は白夜の命令とは言え腑に落ちていなかった。

もう一度、確認しに白夜の元へ向かった。

チカラを颯真に戻す時のリバウンドで身体が滅びるかも知れないのだ…。

それを白夜は知らぬハズも無いなのに

夜白の許可も取らずに…。


「白夜様はなにを考えているですか…。」


だが白夜の答えは変わらなった…。

「わかりましたです。」

「頼みますよ?泉水。」


「私は…夜白のところへ行きます。」

「留守を頼みますよ…泉水。」

「はい…です。」


           ◆

           ◆

           ◆

           ◆

その頃、静流は未來の行方を探していた意外にも近くに未來はいた。

未來さまの気配はここで終わっている・・・。

でも、ここは?


人間が作ったお寺・・・?

しかも見張りもひとりもいないなんてどういうこと?


あれは檻・・・?

静流が檻に手をかけようとした…。


「檻に触らないで!!」


「その声は・・・未來さま?」


「静流さん?どうして?」

「救けに来ましたといいたいところですけど・・・。」

「この檻は壊せそうにないですね呪符が貼り付けてあります・・・。」


「颯真さまが救けに来るまで辛抱してください・・・。」

「え!?颯真が来てるの!?」


「チカラを取り戻しにいま妖狐の里に。」


「未來様は自ら囚われたと聞きました…なぜですか?」


「もう誰も傷つかないで欲しい・・・。」

「私がおとなしく着いてくれば誰も傷つけないって約束してくれたから・・・。」


「だから・・・私は風磨と一緒に来たの。」


「なるほど・・・未來さまの優しさですね。」

「ですが、それを風磨が守るハズも無いとお考えになられたのですか?」

「……。」


ガザ…。

誰か来たようだ…。


「わかりました…ですがくれぐれも早まらないよう…。」


そう言い残し静流は未來の前から消えた。

未來は自分が犠牲になることで家族や大切な人がこれ以上傷つくことが怖かった…。

だが…それは未來にとって最悪の事態を招く事になるとは思いもしていなかった。


戻って来たのは風磨だった。

「ネズミが入り込んだか?」

僅かだがイヤな気配がする…。

風磨が未來のいる牢獄に来た。


「おとなしくしている様だな?」

「……。」

「そろそろ答えを聞かせて貰おうか?」

「…なんど…なんど聞かれても私は…アナタと一緒になる気はありません!」


「貴様の意志など我には関係ないのだ…。」

「言う事を聞かぬのなら聞かせるだけだ。」



風磨は未來に術をかけた自我が崩壊し主人に付き従う様に…。


「イヤだ!なにこれ…何もかも忘れ…」

「忘れたくないよ!」

頭の中が真っ白に…いやだ…。

助けて…!父さま…母さま…颯…。


ドサッ…。


「草彅!時期を早めるぞ?」


「はい!」


草彅は生きていた未來に急所を貫かれてたはずなのに…。

自分の意志とは無関係に風磨に従わされた未來は…。

颯真のチカラは戻るのか…白夜が夜白のところへ行く理由とは…。











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