あめつち[#2025南雲皋爆誕三題噺]
わたしからあなたにかえせるものはため息のような水蒸気ばかりで、あなたの慈しみ深い雨にこたえるすべもありません。
そのむかし、うまれたての世界であなたがたわむれに飴玉をふらせたとき、わたしは綿菓子の雲をあなたにむけてのぼらせました。そういう遊びは世界が育って、生きものたちが姿をみせるようになってからはしなくなりましたね。わたしたちはあまたの生きものたちの
あなたからとどく慈雨に、やさしい陽の光に、わたしは平野に咲きみちる花を、ゆたかにふくらむ森をもってかえしました。わたしは花がひらくとき笑い、雪に閉ざされるとき眠りました。
わたしたちのあいだをいったい幾つの命が通りすぎていったのでしょう。世界はいま老いて、終わりを迎えようとしています。あなたとはいちども手をとりあえないままで。でも天と地というのはそういうさだめなのだとわかっていました。あなたのこぼす
だからあなたが落ちてくるなんてすこしも思わなかった。
そんな不意打ちはないでしょう。崩れておちる天は地を、わたしをこなごなにくだいて、わたしのなかに天が、あなたがまじってゆく。
あなたの記憶のなかで
きっとわたしたちはこういう優しい混沌から生まれたのだと、さいごにわたしはおもいました。
お題:『不意打ち』 『あめ』 『笑う』
さーちゃん、お誕生日おめでとう! すてきな一年になりますようにー!!
croquis[2冊目] 夏野けい/笹原千波 @ginkgoBiloba
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