第13話 マネキン
ご連絡頂いたブティック中野です。
お尋ねされたマネキンの件ですが、簡潔に申し上げれば、壊れたから撤去したというのみです。その経緯を書かせていただきます。
2カ月ほど前の水曜日、あの位置に置いてあったマネキンの右腕が落ちて割れているのを店員が発見しました。すぐに回収し、新しいものと交換しましたが、いつ壊れたかは判明しませんでした。たまたま近くに店員もお客様もいらっしゃらず、防犯カメラの死角でもあったためです。
それから一週間後の水曜日、今度は左腕が落ちていました。その次の週は頭が、その更に次の週は足、その次にはどうしてか胴体部分が落ちていました。マネキンは5つのパーツに分けられるのですが、胴体の次は右腕に戻りました。そのようなことが計7回続きました。
さすがにおかしいという話になり、そこにマネキンを置くのを辞めました。だから、あそこにはマネキンが置いてないのです。
まだ、マネキンが続々と壊れた理由はわかりません。近くで工事があったとか、そういう、原因だと思われるようなことも特にはありません。
怪談を集めていらっしゃると聞いたので調べてみましたが、過去にその土地で何かあったということも特にはありません。
ただ、マネキンの一部が落ちて壊れる、それだけです。
防犯カメラも設置したのですが、パーツが落ちる瞬間に限って不具合を起こし、録画されていなかったり、画面が真っ黒になったり、画角が変わっていたりもしました。
店員が見張っていても、お客様に声をかけられた一瞬のうちに落ちているというようなことになります。どうやっても、その瞬間を目撃できないのです。
不審な人物なども見られていませんので、人為的なものとは思えないのですが、落ちて割れる時の音に誰も気づきません。しかし、レコーダーをセットしてみると、確かに硬いものが落ちて割れる音が入っています。
かなり気味が悪かったですが、今はマネキンを置いていないのでそのようなことは起こっていません。
その代わり、毎週水曜日に、誰のものかわからない破損した人形が置かれるようになりました。
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