第三話 いっせんこえたぞてめーら!

「でね、でね、アッキーが可愛いの! もう食べちゃいたくなるくらい…って聞いてる? アッキー」


 真冬との付き合いも長く、よく続いてるなぁと…心の優しい私でなければ愛想を尽かして離れているだろう。

 それくらいの自負をしても、傲慢だとは誰も言わないと思う…今日この頃。


 いつものように友人である真冬の愚痴を、行きつけのファミレスで聞くのが日課のようになっている社会人生活は、充実しているのかいないのか…。


「はいはい聞いてるから、でなんだっけ秋人あきひと君が食べちゃいたいだっけ? あんたショタはやめときなさい…犯罪だから」

「何言ってるのアッキー、アッキーは可愛い、可愛いは正義! だからショタとか関係ないんだから~」


 最近は会話の疎通も怪しくなって来たか…。


 これでとは驚かされる。

それとアッキーアッキーと言わないで欲しい、ゲシュタルト崩壊しそう。


「もう小学生かぁ、秋人君。最初に会った時は、赤ちゃんだったっけ…、可愛かったなぁ」

「アッキーは今も可愛いよ?」


「ちょっとわけわかんなくなるから、私か秋人君のどっちかを名前で呼んでちょうだい」

「我儘なんだからアッキーは~」


「私の方がそのままなのね、まぁいいけど」 

「それでね、困っちゃってて~」


「ん? なにをよ」

「私が秋人に構ってばかりだから、大樹が拗ねちゃって~」


「それはしょうがないじゃない、育児は大変なんだから。子供に嫉妬してんじゃないわよあの馬鹿は」

「ほんとにね~でも秋人が寝た後は、私がよしよしってしてあげると甘えてきて可愛いんだ~おっきい赤ちゃんができたみ…」


「それ以上いいから…友人夫婦の赤ちゃんプレイ聞くとか拷問だから」

「プレイじゃないよ~、秋人が産まれる前よりも熱心に吸い付いてき…」


「だから、や・め・な・さ・い」


 学生時代も散々変態プレイを聞かされるは、巻き込まれるわと思い返すと頭が痛くなる。真冬も十分…だが、旦那の大樹は相当だわ。


「秋人君は習い事とかさせるんだっけ? 喘息気味だから体力つけさせるために」

「うん、そうなんだ~。色々あるんだけど、水泳に決めたの」


「そうね、全身運動で総合的に鍛えるのに良いって聞いたことあるわ」

「でしょでしょ、だからスイミングクラブに通わせようと思ったんだけど…」


「近場に良いとこなかったの?」

「ん~ん、あったんだけど、秋人の人見知りがね~」


「あぁそっかぁ。秋人君、恥ずかしがり屋さんだったっけ」

「そうなの。だから今は色々慣れさせるために、私が一緒に泳いだりしてるの~」


「へ~、真冬偉いわね。あんた泳げたし…。ちなみに水着は…」

「も~アッキーたらぁ、私だっていつまでも学生気分じゃないよ~。アッキーと一緒に買いに行った時の水着だよ~」


「そうよね…さすがに10は捨てたわよね…」

「え? 今でも使ってるよ。もったいないし」


「!? どこで着んのよ! あんな公然わいせつ水着を!」

「大樹と夜の…」


「わかったわかった…言わんでいいから」


 夫婦仲が良いのは夜の営みが充実してる証拠らしいし、咎めることでもないわよね。


「最近は新しいことにチャレンジしようかって、俺達も夫婦としては未熟だけど出来ることは貪欲になんでも取り入れてみようって」

「へ~、いい旦那に成長したじゃない…バカでイカれたキモイ旦那だとばっかり」


「アッキー酷いよ~。それでね 教育も早い方が良いからって、秋人に子づくりの実践を…」


 ぶほぉーーーーーっ!!!!! ジュース吹いた!!!!! 鼻からまで…


「こんのバカ夫婦がーっ! バカ妻、愚妻、旦那共々私がしばいてやるから、そこへなおれーっ!」

「ひぃぃぃぃいーーーーっ!!! ーが怒ったーーーーっ!!!」


「あったり前でしょうが!!! 小学一年生に、イカれた性教育植え付けてどうすんのよ! 下手すれば生涯もののトラウマよ、トラウマ!」

「だって~人を見る事で観察力も鍛えられるって…」


「何の観察力を鍛えてんのよ! 何の!」

「それに…」


「それに?」

「私も大樹もすっごく盛り上がっちゃって…」


 スパ―――――――――――――――ン!!!!!


「あ、あっきー、いたい…」

「痛くしてんだから当たり前でしょ…。あんたら夫婦のための特注よ、感謝しなさい。あと、さっき悪鬼って言ったの忘れないからね」


 最近はなんでも通販で売ってるけど、派手な音に反して痛くないハリセンも売ってるなんて…便利な世の中ね。


「と・に・か・く、今日から秋人君に、あんたらの盛った姿を見せるのは止めなさい」

「え~」


「<●><●>」

「はい…」


 秋人君の将来が本当に心配になってきた。

もう手遅れかもしれないけど、この夫婦をしっかり見張っとかないと…。


「真冬、あんたら夫婦が仲良くしてるのは良いことだし、それで秋人君含めて家族が円満なのは素晴らしいことだけど、常識内でしなさい常識内で」

「う、うん。ごめんねアッキー」


「もういいから、秋人君のことを一番に考えなさいよ?」

「うん…」


「…あ~もうっ! そんなに怒ってないから」

「…ほんとに?」


「ええ」

「えへへ…ありがとアッキー、大好きだからね」


「ハイハイ」


 こうやって甘やかしてしまう私にも、悪いところがあるんだろうなぁ。


「そういえば秋人君の名前、ほんとに良かったの? 私の名前から一文字欲しいって」

「うん! 私と大樹のことを一番理解してくれて、大切に思ってくれる、私達夫婦の恩人であり親友の名前はどうしても付けたかったの」


「それは褒めすぎでしょ。でもそう言ってくれるのは、嬉しいわ」

「そんなことない! 私も大樹もアッキーに感謝してるんだから! 秋人だって自分の名前大好きだって!」


「そう…」

「アッキー泣いてるの?」


「…泣いてないわよ」

「ほんとに~」


「もう! 怒るわよ!」

「ごめんごめん…アッキーは涙もろいんだから、鬼の目にも涙ね~」


「ま~ふ~ゆ~」

「アッキーが怒ったー」


「「アハハハハ」」


 この三人の家族から、たくさんのものを与えてもらってる。


 私の方こそ感謝してる。これからもこうやって仲良く関わっていけたなら、素敵なことよね…。



「でも大樹が、秋人が真冬にべったりで俺に構ってくれなくても、真冬が秋穂にNTRネトラレタと思うと滅茶苦茶興奮するって、一文字もらってよかったわって…あ、これ言っちゃダメなのだった」


<●><●>

     

<●><●>


<●><●>


「…アッキー? いつもの美人さんが台無し…だよ?」

「そうね、…教えてあげないとね」


「それはまた今度でもいいかな~って」

「秋人君は今日はお泊りで、家にいないって言ってたわよね?」


「そ、そうだったかな~…そんなことなかったような~」

「<●><●>」


「はい」

「じゃあ今日は、私が真冬の家にお泊りしに行ってあげるわね」


「ひぃっ! 今日は都合が悪かったかな~って」

「久しぶりに旦那と一晩中、にゃんにゃんにゃんだふる~! だったかしら」


「………」

「真冬の愛しの旦那糞バカ様も待ってるだろうし、さぁ行きましょう?」


「…お手柔らかに」


 

 そんなどこにでもある、友人の愚痴を聞くだけのお話し


おしまい



本当に申し訳なく思っているような、そうでないような…


小林岳斗先生の


眠れる羊は世話焼きJKの口を塞ぐ


素敵な作品なので、お勧めです。


                             にゃむ   



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いっつも怒ってばかりの友達の愚痴を聞いてたつもりだったけど、よく思い直してみると…惚気やん! Nyamu @Nyamu2023

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ