常人とはかなり乖離した心情と信念をもつ主人公。悪しきものとは言えないがゆえにこそ、それは他者との衝突をおびただしく生み。信念と他者とのあいだで、彼ははげしく葛藤する。その姿に、共感できない人、したくないと思う人は多いだろう。けれども、本作を読むあなたには是非、彼に共感することをお勧めする。なぜなら……。まあ、最後まで読んでみてください……。
正義感が一際強い男がいた。彼はその正義感ゆえに損ばかりしていた。そして、そのせいで大切なものを失った。彼は、彼の「ほんとう」を封じた。「普通の」「目立たない」人間であろうとした。しかし、ある場面を見て、彼は憤りを感じずにはいられなかった。そんな彼が目にしたものとは。そして、それを振り切り逃げた先には……そこに、「ほんとうのあなた」が選ぶだろう道が示される。見よ、これが、鐘古こよみ「三題噺」文学の極み。
本作の魅力は、「リアルな心情描写」と「読者に謎を残す結末」だ。正義を貫こうとするほどに疎外され、傷つき、悩む主人公の姿が丁寧に描かれる。誰もが一度は感じたことのある、理想と現実のギャップ。そんな中で揺れ動く主人公の苦悩に、共感せずにはいられない。
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