第15話 【到着らしい】



 それからも一切魔物に襲われることはなく、その日の夕方にはヒュテリアに到着した。


「はあぁ……やっと着いたぁー!」


「2人ともお疲れ様。今日はもう宿をとって休もうか」


 近くにあった宿へ行き、部屋を借りてから俺は少し散歩する。

 森の中で初めて見た時から思っていたが、この街ヒュテリアはかなり大きい。

 恐らくエルフィナの住んでいた最南端の村の5,6倍の広さはあると思う。

 軽く付近を散歩してから、宿に戻る。


 宿に戻ると、エルフィナが少し不機嫌そうな顔で待っていた。


「お腹空いた!ユーリ!早くご飯食べよう!」


「あたしもお腹が空いてその辺の人間を食べてしまいそうだったねぇ」


「えっ…魔族って人間食べるの…?」


「あははっ…さすがに冗談だよ。食事は他種族とあまり変わらないねぇ」


「ま、まあそれはそれとして、ここの宿屋は食事も提供してるみたいだし、せっかくなら食べてみようか」


 3人で部屋を出て一階の食堂に行く。


 食堂に入ると、宿屋の受付をしていた女将さんが出迎えてくれる。


「3人で食べに来てくれたのかい?嬉しいね!」


「せっかくならと思いまして。女将さんのおすすめでお願いします!」


「はいよ、少々お待ちね」


 しばらくして、スープとパン、それにサラダが運ばれてきた。


「「いただきます!」」


(―――ん……?ま…ずい?)


 すごく不味い。スープは味気がなく、パンは石みたいに硬い。サラダは雑草を食べているかのようだ。

 横を見ると、エルフィナとリリアも顔をしかめていた。


「女将さん…これ…」


「とても不味いでしょう?ごめんなさいね。今この街ではある問題のせいで質の良い物が食べられなくてね。こんなものしか出せないのよ」


「その問題って?」


「ブラックウルフロードとその群れがこの街の付近に居座ってしまったせいで、狩りや採集が十分に出来ないのさ」


「あ、そいつだったらこの街に着く前に倒してきました」


「へ…?あんた達がかい?」


「はい。その時に出た素材をこの街で売ろうと思ってます」


「それが本当ならすごくありがたいね。あれを倒せるようなハンターなんてこの街にはいなかったからね」


「こんな不味いものしか出せなくて申し訳ないけど、お代はタダでいいから」


「ありがとうございます。でもお食事を頂いた以上しっかりお代は支払います」


「そうかい。それならありがたく頂戴するよ」


「ごちそうさまでした」


 それから俺達はそれぞれ部屋に戻って眠りについた―――

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