第14話 【魔王の側近だったらしい】



――なぜか魔族も旅の仲間に加わり、俺達3人はヒュテリアへ向かい歩き続ける


 それからの道中は魔族がいるおかげか全く魔物に襲われておらず、

 リリアから魔族に関する話を聞きながら歩いていた。


 魔族とは魔力を多く宿した種族で、

 魔力総量が多いこと以外は基本的に人間族と同じなんだそうだ。


 そして、他種族と敵対している者は多いが、友好的な魔族も中にはいるとか。

 魔族のネメシスはこの大陸だと今いるウィンディア王国の西で、

 その広さは岩人族ドワーフの国ドワングル、人族ヒュームの国デルジア、

 そして今俺達のいる森人族エルフの国ウィンディアを全てまとめたくらいの広さらしい。


 地球で表すなら、アメリカ合衆国と同じくらいだろうか。

 かなりデカい。それに人口も魔族が頭1つ抜けて多いとのこと。


 魔族の国があるのだからもちろんそこにも王はいるわけで、

 魔族の王は魔王と呼ばれており、リリアは自分がそんな魔王の側近だと語っている……え?


「ちょっとまった!今なんて?魔王の側近!?」


「うん、魔王様の側で働かせてもらってたよ」


「そんなやつがこんなところにフラフラしてて良いのか?」


「あたしにやりたいことが出来たらいつでも辞めていいって話だったからねぇ。

 やりたいこと出来たからやめてきちゃった――てへっ」


「魔族ってそんな軽い感じなのか…?」


「いやいや、他の国とあまり変わらないとは思うけど。

 あたしが特別待遇だっただけかなぁ」


「え、それじゃあリリアちゃんはなぜそんなに特別な扱いをされていたの?」


「実はあたし強力な結界を作ったり出来るんだよねぇ、

 魔王城を丸々囲えるくらいの」


((想像以上に重要な人物だった……))


「それなら尚更、リリアがいなくなったらその魔王様とやらは困るんじゃないか?」


「うーん。まぁあたしは今ユーリ達に付いていきたいからどうでもいいけど、

 あたしの結界なんてなくても魔王城を落とせる国なんてないから多分大丈夫」


「なるほどな……でもそんな強力な結界を作れるようなら、

 その隷属の首輪くらい簡単に壊せるんじゃないか?」


「うん。ただの首輪と変わらないねぇ」


「うそ……相当な魔力と技術がないと壊すなんてこと出来ないはずよ?

 でも、城1つ囲む結界を作れるくらいならそれ程の魔力があってもおかしくはないわね……」


「まあ、そういうことなら問題ないだろう」


「え?どうして?」


「だってもしそれが本当ならさ、

 俺達を殺すつもりならとっくに殺してると思うんだよね」


「確かに」


「だから言ったじゃない。

 危害を加える気はないってねぇ」


「まぁそれなら良いか。

 仲間が増えるに越したことはないし、

 ましてや魔王の側近クラスなら戦闘面も安心だ。

 それじゃあ改めてよろしく頼むよ。リリア」


「こちらこそよろしくねぇ」


 リリアは想像より全然やばいやつだった。敵じゃなくて本当に良かったよ―――

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