第13話 【魔族…?らしい】



 夕食に作ったブラックウルフロードの肉で作ったカレーはとても美味しかった。

 ブラックウルフの肉を焼いて食べた時はかなり酷かったが、そもそもの肉の質と、調理法を変えただけでかなり美味しくなった。


 あ、そういえばブラックウルフの肉もまだ残ってるんだった。

 近いうちに使っておかないといけないな。


「ブラックウルフの肉を食べた時はすごく不味かったけど、あの肉はめちゃくちゃ美味しいな!」


「そりゃまあ、王宮の食事で出るような高級食材だからね」


「――へ?」


「あれ?だから私言ったじゃない。あいつの素材は高く売れるわよって」


「そうだったのかよ!てっきりブラックウルフの肉は不味かったからこいつの肉も安いもんかと……」


「今回倒したやつから出た分の肉を全部売ったら、多分父さんからあなたが受け取ってた金貨と同じくらいにはなるわね」


「もっと早く言ってくれよ……もう半分使っちまったんだが……」


 完全に失敗した。同じ系統の魔物だからってその素材の価値が同じじゃないなんてことくらい少し考えれば分かることなのに。


 既にもう半分加工してしまった。


「まぁ使ってしまったものは仕方ないな。それに美味しかったし」


「そんなことより――はぁあぅ………私は先に寝るわね。付近には軽い防御結界を張ってあるから見張りとかはしなくても大丈夫だと思うわ。じゃあおやすみ」


「あぁ、おやすみ」


 俺もそろそろ寝るとしよう。

 焚き火の火を消し、寝袋に潜ると、すぐに眠気がやってきた。今日はそれなりに忙しかったし、疲れも溜まっていたんだろう。


 ちなみに、俺とエルフィナが寝るテントは別々です。エルフィナのことが好きな方々は安心してね!!


 ――そして次の日の朝


 朝食は昨日のカレーの残りで済ませ、早々に出発した。

 ここまでの道中、あれだけ出会でくわしたブラックウルフも全くいない。ブラックウルフロードを倒した影響だろうか?


 出発から2時間程歩いたところで、エルフィナが手で止まるように指示してくる


「強い魔力を感じるわ、魔族かもしれない。気を付けて」


「わかった」


『スタッ』


軽いステップのような音とともに、目の前に魔族が現れる。


「おい、俺達に何の用だ?」


 敵意は感じられないが、一応ハンドガンを構える


「おっと、そんなに警戒しなくても良いよ〜、別に危害を加えに来たわけじゃないんだ」


「それなら尚更だが、何の用だ?」


「いやぁ、君がエルフの村でうちの部下をボコボコにしてるところを見ちゃってねぇ。気になったからこの目で見に来たってわけさ」


「あれがお前の部下だったなら、仇討ちじゃないのか?」


「いやいや、あれはうちの部下があたしに無断でやったことだからねぇ。それに全然言うこと聞かない連中だったし別に気にしてないよ」


「はあ、お前が何をしたいのか全く分からないんだが」


「んーとねぇ。君たちの旅に同行させてもらえないかなってだけの話さ。魔族のあたしはダメかい?ダメならこのまま殺しちゃおうかなぁ」


「――見た目で他の連中に警戒されそうなんだが……それはどうする?」


「それなら、人間族と大差ない見た目に変われるから問題ないよ」


「ふむ。どう思う?エルフィナ】


「いやまあ、めちゃくちゃ危険だとは思うけど――えーっと。これだ!これを着けてくれるなら問題ないんじゃない?」


「なんだそれ?首輪?」


「これは隷従れいじゅうの首輪って言ってね。着けられた者は着けた者に逆らえなくなるの。もしも無理に攻撃的な行動を取ろうとしたら首が飛ぶわ」


「お前なんでそんな物騒なもん持ち歩いてるんだよ……まあいいか。だそうだ、魔族さん。これ着けてくれるなら同行しても構わないよ」


「全然問題ないね。あとあたしの名前はリリアだよ。よろしくね2人共」


「「よ、よろしく」」


魔族が旅の仲間に加わってしまった―――

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