第一幕 かわら版
「二組の
「うん。あの地味で大人しい子でしょ?」
「そうそうそうなんだけど違うのよ!なんかね夏休み明けから人が変わったみたいにかっこよくなったんだって!」
「えー!見に行こ見に行こ!」
…………
うるさい……
……頭が痛い。
思わず書類を広げた机に上半身を預ける
「ちょっと先生?
甲高く頭に響く声がもう一人
「もう昼休みですよ?杖に突っ伏しちゃってまぁ、そんなに養護教諭は暇なんでしょうかね」
キツイ香水の臭いが鼻につく
「すいません、クs……
「偏頭痛?甘いわねぇ若いだけが取り柄でしょうに!そもそも健康管理が……
……
ブクブクと太ったこの女が嫌いだ。
何かと揚げ足を取ってはネチネチと……
ご自慢の極太の太ももでも揚げてろっ……
……
いや、よそう……
「ちょっと保健室に頭痛薬を置いてきてしまってるので失礼しますね」
「ちょっと、あんたっ……
クソ鴨と頭痛にリンチされるなんてごめんだ
あのままあの場にいたら昼休みがまるまる潰されてしまう
苛立ちからかいつもよりガンガンと頭に響くようになってきた
クソ鴨の縄張りから階を下って更に歩いて対角の新校舎側
消毒の香りが心地の良い、私の城
部屋の鍵を閉め、薬を鷲掴み、おもむろにベットへ倒れ込んだ
本来ならば体調不良の生徒用だが、それはそれでその背徳感がたまらない……
目を閉じると沈んでゆく……
深く……
布団と自分の体との境がわからなくなって……
……気がつくと見知らぬ場所にいた
神社……だろうか
……古びてはいるが赤い鳥居に囲まれている
……それは怖さを感じるほどに美しかった……
鳥居のカーテンを抜けると小さな本堂があった
……
……狐の像が2つ
片方は頭が崩れ、もう片方は両の前足が崩れていた……
その像は崩れてはいても威風堂々とした立ち姿で……
「「おかえりなさい」」
気がつくと涙がこぼれていた
……悲しい
……
悲しくもないはずなのに……
涙が止まらない
涙が止まらないのだ……
キンコンカンコーン
……こんな時間か
もう昼休みは終わり、5時限目が始まってしまっている
ベットに横たわったまま、白衣のポケットをまさぐる
……?
ひどい悪夢でもみたのだろうか、液晶の中の自分は目が赤く腫れていた
……泣くのなんて何年ぶりだろう
なぜかわからないがとても晴れやかな気分で頭痛はどこかへ行ってしまっていた
仕事に戻らなければ……
「すーっ……すーっ……」
はっと振り向くとそこには可愛らしい寝息を立て眠る幼い少年がいた……
………!?
……頭が真っ白になった
ここは高校、あり得ない光景だった
可愛らしい寝顔は13歳そこらに見える
いや、そんなことよりもこの部屋の鍵は確かに内側から閉めたはず……
ガチャッ……
……確かに閉まっている
この部屋に入ることすらできるはずが無い
一体どうやって……
プルルルッ!
唐突に保健室の電話機が鳴る
「はい。こちら保健室、宇佐美です。」
「宇佐美先生ッ!職員室前の廊下まですぐ来てください!男子生徒が階段から落ちてしまって……」
クソ鴨の声だが緊迫した様子だ
令和かわら版 千代霧丸 @chomsr
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