第60章 蜂起の理由
菱藍雲が蜂起した日、菱珪玉はちょうど馬に餌を与えているところだった。
菱家の誰もが蜂起を知る中、彼だけは馬に餌を与えることしか知らなかったのだ。
その日の夜、やけに得意げな顔をした菱藍雲が菱珪玉の部屋に入ってきたときにようやく異変に気付くことになった。
「珪玉、何をしているんだ?」
と、普段なら決して口にすることはない菱藍雲の言葉を、菱珪玉は聞こえないふりをしてただ挨拶だけをした。
「父上でしたか。どうかしました?」
「いや、別に。ただ、お前の様子が気になってな」
「珍しいですね。今日はいつもの雑務はないのですか?」
「ないとも。今日から必要になるのは軍務だ。三家との戦いがどんな状況になるのかをしかと注視していないといけないからな」
と、言い終わるとどうしても口を閉ざすことができない、というように菱藍雲は高笑いし始めた。
それを肝まで冷え切るくらい冷ややかな目で見ながら、菱珪玉は言った。
「まずは、蜂起の成功おめでとうございます。ですが、私は父上の蜂起に賛同はしませんし、それはおそらく母上も同様でしょう」
「ああ、そうだろうな。お前らは同意しないだろう。私が何をしようとしてもお前らの同意を得ることは一生できない。昔、私がお前の母親を娶ろうとした時ですら、あいつは私に嫁ぐことを最後まで拒絶していた、とも聞いたことがあるからな」
「なぜ、今お二人の過去を私に話すんです?」
「さあな。ただふと、上官双晶は今何を思うのか気になっただけだ」
と話す菱藍雲が身に纏い始めた空気には、どこか悲哀が漂っているようにも菱珪玉には見えた。
「それで、父上は上官当主が何を思っていてほしいと思うんですか?」
すると菱藍雲はまるで考える素振りも見せず、ただ凄んだ表情だけを見せて言った。
「当然、当時私を選ばなかったことを後悔しろ、と思っているさ」
「では、そう思わせるために父上は一体何をしようとしているのですか? 私からすると蜂起というのはただの無駄な行動にしか思えないのに」
「ふん! お前に何がわかる? 我々が蜂起すれば、三家は必ず百里玄武と百里楓祥をなんとしてでも守ろうとするだろう。その時に駆り出されるのは蒼家や百里景砂だ。まあ、正直なところ蒼家は
「それだけのために父上は百里景砂を始末するというのですか? 蜂起してまで?」
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