第50章 菱珪玉の幼少期
菱珪玉は、当時菱家の世子だった菱藍雲と、その正室だった上官氏の長子として生まれた。上官氏が過去に話してくれた内容によると、菱珪玉が菱家の嫡子としての寵愛を受けたのは生まれて間もないころのみだったらしい。
菱家の公子は三歳になると書画を、五歳になると琴棋を学び始める。菱珪玉もまた例に漏れることなく学び始めたが、すぐに彼は菱家の誰もから異質な目つきで見られるようになってしまった。百里家の公子は皆軍事絵に興味を持つため、画には興味を示さない人間が一人もいないのが普通なのだが、菱珪玉はそれに全く興味を示そうとはしなかったのだ!
だが、彼はそれが原因で菱家の誰もが自分に軽蔑の目を向けるようになっても、それを気にすることはなかった。母親の上官氏が常々、
「人の目は気にしないで自分の好きなことをしていなさい」
と言っていたせいもあるのだろう。
おかげで、菱珪玉は菱家の中では二人といないほど珍しく自由に育ってしまったのだ。
七歳になると、菱珪玉は百里家で開催された琴の鑑賞会に参加するために、菱家の子弟三人を連れて百里家へ赴くことになった。
だが、無言の道中を耐え抜いた後に待ち構えていた琴の演奏会は、菱珪玉にとってはつまらない、の一言で表すほか、何もできなかった。必死に耐えられるだけ耐え抜いた挙句、菱珪玉はその場を逃げ出した。
菱家の面子なんて、彼の頭の中にはなかった。彼はただ、自分の好きなものだけを見聞きしたかっただけだった。
しかし、彼は逃げ出してから大して時間のたたないうちに、前方にいた人間にぶつかってしまった。確か、彼と同じ年頃の子に。
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