第46章 父親への反抗心

 菱珪玉が伝書鳩を飛ばしてから二日と経たない間に、菱家には大勢の精鋭兵たちが集められた。菱珪玉も噂でしか把握できない範囲では、その数は三万を下らないらしい。

 だが、それを知ったところで、菱家の中でも権勢など皆無に等しい菱珪玉にはどうすることもできなかった。彼以外に母親である上官氏を弔う人間はいないくらいなのだから。

 菱珪玉は厩の中で寝そべりながら、ふと思う。

(母上の訃報を上官当主はまだ知らないのかもしれないな。父上は常に蜂起のことしか頭にないようだから。そういえば、父上がある意味奔走していることを百里家の人間は一人でも知っているのだろうか)

 その瞬間、菱珪玉はいてもたってもいられなくなり、すぐさま書斎に戻り二人に向けて書簡をしたためた。

『菱家正夫人、上官氏が逝去した。菱家内にも精鋭兵が集結している。その数三万を下らない』

 二羽の伝書鳩がそれぞれ上官双晶と百里景砂の元へ飛び立つのを見送っているとき、菱珪玉にはようやく恐怖心というものが芽生えた。

(こんなことばかりしていては、いつか父親に殺される日が来てしまうかもしれないな)

 しかし、だからといって菱藍雲に反抗するのを止めよう、という気にはまるでならなかったが。

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