第45章 警告

 菱藍雲の冷徹な視線に、菱珪玉は軽蔑の目を送った。それと同時にはっきりと自覚する。自分が菱家の風格に合う日が来ることは未来永劫ないのだろう、と。

「身近な人間の死と、百里景砂に一体何の関係があるというのですか?」

 と、菱珪玉が立ち上がりながら言う。

「もし私が今日お前の母親を殺したように百里景砂をも殺せば、お前はまた私を責め立てるんじゃないのか?」

「まさか、父上は百里景砂をも殺すつもりなのですか?」

「いや。まだだ。だが、いつかは必ず死んでもらう日が来るが」

 と、菱藍雲は気が狂ったかのように笑いながら言った。

 その間に菱珪玉は部屋を出て、まっすぐに鳩小屋へと向かった。

 鳩小屋は菱珪玉の部屋の一角にあり、全部で十羽の鳩がいる。全て、伝書鳩用に菱珪玉が自ら育てたものだ。その中でも特に飛ぶのが早い鳩を選び、彼は書斎へと赴いた。

『近々命に危険が及ぶかもしれない。万事気をつけたほうがいい』

 とだけしたためて。


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