中章 街の噂

 百里家での儀式が執り行われた後、雲渓大陸には百里家の長女にまつわる噂で話題は持ちきりだった。

「百里家にまたあの力が現れたらしいぞ」

 と、辰砂領で餅を売っている男が言う。

「ああ、それは俺も聞いたよ。失踪した百里家の長女が戻ってきたんだろう?」

 と、常連の客。

「うん。百里家の長女は上官家の養女になっていたらしいんだってな」

 と、今度は別の常連客。

「ああ。だけど、戻ってきたときは、菱家から戻ってきたんだろう? しかも、菱珪玉に見送られて百里家まで戻ってきたらしいじゃないか」

 餅売りの男が平然と言うと、餅を買いに来た新顔の客が素っ頓狂な声を上げる。

「そうなのか? でも、百里家と上官家はすでに和睦したとはいえ、一時は反目していただろう? しかも、菱家も三家とは相容れない関係だ。そんな家にいて、百里家の長女は清潔なまま戻ってこれたのか?」

「さあな。俺はただの餅売りだから、百里家のお嬢様になんてお目にかかったことすらない。だからその点に関して俺はわからない。でも、百里家の長女にとってはあんまり変わらないことじゃないか? どうせ、自然の力を手に入れた百里家の長女は早く死んでしまうかもしれないんだから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る