第3話「アイドルの赤子として」
「オギャア、オギャア……っ!(赤ちゃんから転生って、ふざけんな……!)」
泣き声が漏れると同時に、俺は自覚する。声帯も未熟で思考も乱れている。それなのに、意識だけはやけに鮮明だ。なぜ俺は泣いている? なぜこんな小さな体に……。
「よーしよーし、元気でちゅね〜? 優ちゃん〜♡」
母親の声。どこかで聴いた、テレビ越しのあの声——まさか……。
目の焦点も合わないのに、俺の記憶は照準を定めていた。そう、彼女は前世で一世を風靡した三人組アイドルユニット《レイジーメタル》のセンター——飛鳥(あすか)だ。
え……飛鳥が……俺の母親!?
「まったく。優は飛鳥にべったりで、ツカサは俺にべったりだな。名もなき幕開けって感じだ」
父親の声も、妙に滑らかで聞き覚えがある。——前世で人気だった男性アイドルグループ《KO1》のジェリーこと新田仁(じん)。
どういうことだよ。俺の両親が元トップアイドル同士って……そんな芸能界フルコンボある?
前世ではそこそこ裕福だったが、今世はもう“格が違う”。著名人夫婦の双子として産まれた俺。しかもお互いアイドルって、なにこの設定、転生というよりドラマ脚本じゃねえか。
今世での俺の名は、新田優(にった・すぐる)。前世と微妙に読み方が違うだけで、ほぼ同じ。……いや、ありがたい。名前覚え直すのって本当にめんどくさいから。
そして、隣にいるツカサ——どうやら、俺と同じく前世の記憶を持っていることに気づいた。
ツカサと目が合った(ような気がした)瞬間、視線が言語を越えて語りかけてくる。
——おい、すぐる。これ、転生っていうより……“再キャスティング”じゃね?
そうだ。俺たちの物語、今度はスポットライトのもとで始まる。
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