第118話 偽物は魔王の始まり




「そうかい、もう行くんだねぇ」




 とある宿屋の正面玄関。

 そこにわざわざ顔を出してくれたアグネスは、俺達四人が聖都テンペランより出立する旨を聞くや、前述のような言葉を口にしてくれた。


「ああ。観光はもう十分楽しんだしな」


 会談襲撃より早二週間。

 活気づく聖都は未だその勢いを衰えさせてはいないものの、連日連夜どんちゃん騒ぎの町中へ繰り出そうにも、思い当たる名物や名所には足を運んでしまっていた。


「美味しいものたくさん食べられました!」

「珍しい香辛料も手に入れられて料理の幅が広がるというものです」

「ここにしかない香水とか化粧品とか見られて満足です!」


「──と、まあこんなもんスわ」


「人生楽しんでるねぇ」


 各々ご満悦な表情を浮かべるアータン達を見て、アグネスは呵々と笑い声を上げた。


「結構結構! 人生短いんだからねぇ。何かと危ないご時世だけど、だからこそ楽しめる時ぁ楽しんどかなきゃ損だよ!」

「お婆たまがそれを言うと説得力があるようなないような……」

「どういう意味だい?」

「ご長寿でおられますよう心よりお祈り申し上げます……的な」

「そいつぁご丁寧にどうも──こいつは礼さ!!」

「Let’s sir!?」


 ほんの冗談を口にすれば、八十歳とは思えぬハイキックが俺を襲った。

 だが残念だな。

 今日という日に至るまでの毎日、俺はお婆たまに死ぬほど扱かれていたのだ。鞭の如くしなるハイキックを、お婆たまの足が怪我しないよう手の甲で受け止めつつ、勢いを殺すよう力を受け流す。


 どうだ、これが俺の成長!

 ご老体を労わりつつ、自分の身をも守る究極の受け流し術!


「その技、見切ったァ!!」

「甘いッ!!」

「ン二撃目ェ゛!?」


「「「ライアーライアーさん!?」」」


 上には上が居た。

 一撃目を華麗に受け流したと思ったら、空中でえげつない錐揉み回転を決めるお婆たまが、がら空きな俺の後頭部目掛けてもう片方の足を叩き込んだ。俺は死んだ。


 八十歳の二連蹴りじゃねえよ……。

 どういう身体能力してんだ。俺の気遣い返せ。


「チ、チクショオ……!」

「免許皆伝にはまだ遠いね」

「怪我が快方に向かっているようで嬉しい限りでございます……!」

「その節はどうも」


 ポンポンとアグネスは自分の体を叩いてみせる。

 サルガタナスより受けた傷も、あの後迅速に治療を受けられたおかげで無事全快したようだ。良かったねぇ。


「ったく、また寿命が延びちまった。無駄に長生きだけはしないと決めてたんだけどねぇ」

「そんなこと! アグネス様にはずっと健康で生きててほしいです!」

「アータン……嬉しいこと言ってくれるねぇ。ほら、飴ちゃんをあげよう」

「わーい!」


 ありがとうございます! とお礼を告げたアータンは、幸せそうな顔でアグネスより賜った飴玉をお口の中で転がしていらっしゃるわ。


「祖母と孫かよ……」

「コラ! ライアー、無礼だぞ!」

「いいんだよ、ベルゴ」

「しかし……」

「小さいこと気にする男だねぇ……尻の穴に手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせられて詰め物外されたいかい?」

「滅相もありません」


 怖ぁ。

 淡々とした口調で元騎士団長の大男を恫喝する老聖女、怖ぁ。


 飴玉を堪能するアータンは横に置いておくとして、俺とアスはその光景を前に、ただただ肩身を寄せ合って震えるしかなった。


「あ、あれが聖女の威厳……!」

「そうだ……ちなみに小さいことを気にすることを『尻の穴が小さい』と形容することもある……」

「不潔ですッ!」

「俺に帰する責じゃなかろうて!?」


 来ました、久々の不潔に反応するケツキック。略してフケツキック。

 サタナキアとの戦闘を経たアスのフケツキックは、以前にも増してキレが凄まじい。威力は当社比1.2倍ってところか。尻を蹴られて体が浮かび上がるなんてあっていいか、普通?


「尻が……尻が死ぬて……!!」

「あぁ!? す、すみませんライアーさん!! つい反射で……!!」

「ちなみに『尻の穴が小さい』の由来は、穴が小さいと男色家のお偉いさんを受け入れられないという説が」

「不潔ですッ!!」

「あくまで説だから!?」


 再度、俺の尻にキックが叩き込まれる。

 俺ったら本当に困ったちゃんだわ。ツッコミを欲しがる余り、強烈なケツキックを許容しちゃうんだもの。


 今の俺のお尻は熟した桃より真っ赤っか。追熟し切って完熟よ。


「アッハッハ!」


 不意にアグネスが腹を抱えて笑い出す。

 え、なに? 俺の完熟桃がそんなに面白かった?


 と、まあ冗談はさておき。

 頬に朱が差すほど大笑いしたアグネスは、目尻に溜まったもの指で拭う。そうやって潤んだ視界を明瞭なものとした彼女は俺達四人を順々に見つめた後、白銀の波髪を揺らすよう鷹揚に頷いた。


「アンタ達は大物になるよ。アタシが保証してやる」

「ほーん、聖女様の保証とな。何年保証?」

「そうさねぇ……二十年ってとこかい」

「ヤダ、老舗もビックリの長期保証」

「アタシが老舗みたいなもんだろう」

「自分で言っちゃうのか……」

「悪いかい?」

「いいえ」


 あとさらっと百歳まで生きる宣言したな。

 そういう図太いお婆たま、俺大好きよ。百歳と言わず百五十歳くらいまで生きておくれ。


「そう言われちゃあ仕方ねえ。お婆たまが嘘吐きになっちまわないよう頑張らなくっちゃな」

「そうしといてくれ。家族探すついで魔王倒すなんて宣ってる奴らなんて、世界中探してもアンタらぐらいだよ」

「それって褒めてる?」

「ああ。だだ褒めさ」


 やったぜ。

 お婆ちゃんっ子な俺にはぶっ刺さりなお褒めの言葉を頂いたところで、聖都に清らかな鐘の音が鳴った。

 一時間ごとに数度鳴る鐘の音は現在の時刻を表している。たった今鳴った鐘の音の回数を数えれば、そろそろ出立する時刻が迫っていることは明白であった。


「……ぼちぼち頃合いかな」

「みたいだねぇ」

「色々お世話になりました」

「……なんだい、急に他人行儀に」

「最後くらいは礼儀正しく。そいつが俺のやり方だ」

「今更取り戻せないとは思うけどねぇ」


 親しき仲にもなんとやらだ。

 俺とお婆たまは気の置けない関係ではあるものの、またしばらく顔を合わせなくなるのだ。別れの挨拶くらいは最低限の礼儀を弁えたいというのは本心だった。


「……ま、いいか。アンタ達、これから王都に帰った後はどうするんだい?」

「いや、先行き不透明な将来だ」

「究極的に言えば人類皆そうさね。……それならアヴァリー教国を目指すといい」

「アヴァリー教国? そりゃなんで」

「この前、ミカから手紙が届いてね」


 聞けば、まだディア教国を発つ前にミカより手紙が届いたらしい。

 その手紙によれば、彼女は仲間と共にミレニアム王国より東方に位置する国──アヴァリー教国を目指すと書いてあったとのことだ。


「あの子は冒険者やりながら各地の困りごとを解決して回っているからねぇ。まったく誰に似たことやら……」

「誰に似たことやら」


「……ム? 何故オレを見るのです、アグネス様」


「誰に似たのかなぁ……」

「誰に似たんですかねぇ」


「何故アータンとアスも見つめるのだ!?」


 全員に見つめられ、慌てふためくベルゴ。


 誇れ、ベルゴ。

 お前の娘はとても良い子に育っているぞ。世界中の困りごとを解決して回るだなんて、まるで勇者みたいじゃあないか。


「何の手掛かりもなく探すのは大変だから教えといてやるよ」

「そうか……ありがとう」

「アンタらの家族、ちゃんと見つかるといいねぇ」


 アグネスはにこやかに微笑みながら、出立が差し迫り、踵を返す俺達の背中を見送ってくれた。

 名残惜しさは勿論あるが、アグネスは聖女会談やらなんやらと、まだまだやることが残っている身だ。


 そして、それは俺達も同じ。

 為すべきことを為す為にも、今は立ち止まらずに進むべき時だ。


「よっしゃ!! 王都戻ったらギルマスに報酬貰ってウハウハだぜぇー!!」

「そうだった……!! 金貨百枚だっけ?」

「大金だな。しばらく路銀には困るまい」

「ですね。ライアーさん、何に使われるかご予定とかは?」




「孤児院に寄付」




『ま、真面目……!』


 なんだ? 俺が真面目じゃなかった時があるってのかい?

 俺はいつだって真面目さ。日々、善行と悪行をちょうどいい感じに積み重ねるよう心掛けているのさ。


 それもこれも歴代ギルシンに存在していた“業”と呼ばれるシステム。

 ゲーム中の行動が罪化の方向に影響するこいつは、主人公が〈昇天〉するか〈堕天〉するか──延いてはルート分岐に関係する重要な要素だったのだ。


 そいつはギルシン世界に転生した俺とて同じ。

 感謝、勤勉、純潔、寛容、節制、忍耐、謙遜──七つの美徳に対応した行動が、そっくりそのまま罪化に現れる以上、俺の日常にはそうした思考や行動が根付いている。




「命は金に代えられねえがなぁ、金で命は救えるんだよぉ!」


「すっごい悪者風に良いこと言ってますね」

「心根が現れてるな」

「でもそれがライアーだし……」


「金という名の愛、存分に受け取るがいいーーーっ!!」




 勇者は一日にしてならず。

 ここ、テストに出ます。




 ***




「……」


 去り行く四つの背中を見送る聖女アグネス。

 数奇な運命の下、聖都までの道中護衛を頼んだ彼らとの別れは、人生経験の長い彼女からしてみても一抹の寂しさを禁じ得ぬものであった。


 しかし、その寂しさの中に一かけら。

 たった一かけら分だけ異なる寂寞があることを、彼女は感じ取っていた。


 離れ行く四つの人影。

 その内の一つ──使い込まれたマントを靡かせる一人の青年。


 彼の後ろ姿をジッと見つめていたアグネスは、不意に込み上がった感情が目尻の涙として溢れてしまった。


──重なる。


 きっかけは、サルガタナスの〈聖域〉に閉じ込められた時だ。

 夢の中でレイエルが指し示した記憶と、今見る光景が重なった。


 てっきり自分が耄碌し、忘れ去ってしまっていたとばかり思い込んでいた。


「……大きくなったねぇ」


 所詮、夢の中で思い出した記憶だ。

 時と共に記憶は薄れゆく。




 けれども、彼女はこう呼んだ。




「──ベリアル」




 その名を口にした瞬間、聖女はハッと驚く。


──はて? 誰の名前だったろう?


 たとえ遠い記憶だとしても、自分の為に死んでいった者達の名前は、誰一人として片時も忘れたことはない。


 そんな自分が唯一思い出せない名前。

 思い出そうとしている内に、頬を伝っていた涙は乾いてしまっていた。




 ***




「──陛下。こちらが彼の伝説の聖剣……浄罪の聖剣と断罪の聖剣です」


 どうぞ御心のままに、と。

 六魔柱が一柱、〈邪見のルキフグス〉は跪きながら手に入れた二振りの聖剣を差し出した。


 部屋全体が深海のように冥く、そして仄かに蒼く光る結晶の空間。

 そこは謁見の間だった。魔王軍の中でも一握りの存在しか立ち入ることの許されぬ場には、ルキフグスの他にたった一人だけが君臨していた。


『……これが』

「残るは“王冠”と“杖”を残すばかり。陛下が全てを手に収めた時、これより先の未来永劫、この世界は陛下を救世主と崇め奉ることになりましょう」


 平伏するルキフグスの言葉に、彼ともう一人を隔てるカーテンの奥より低く……しかし、どこか若さを滲ませる唸り声が響いてきた。

 思案を、巡らせているのだろうか。

 そう考えつつも、空白の時間が幾何か流れた頃合いを見計らい、ルキフグスは閉じていた口を再び開く。


「どうか今しばらくのお時間を。あとは陛下の忠臣たる我らが、万事滞りなく事を進めさせていただきます」

『……〈憤怒〉と〈暴食〉は』

「当初の予定通り。地上の人間共を惑わす贖罪の山羊として、十分機能を果たしております」

『他の〈大罪〉は』

「こちらも抜かりなく。儀式に必要な罪冠具の回収は時期を見て行います。回収方法もすでに目途は立っておりますので、ご憂慮なさいませんよう、伏してお願い申し上げます」

『〈虚飾〉は』

「──」


 ここに来て初めてルキフグスが面を上げた。

 三対の黒翼で全身を覆う大悪魔は、漆黒の羽の隙間から覗く瞳に暗い炎を揺らめかせながら、カーテンの奥で玉座に座る存在に目を遣った。


「……サルガタナスが〈虚飾〉に反撃されたものの、命に別状はありません。然るべき対処をすれば直ちに問題はないかと」

『……そうか』

「お望みとあらばすぐにでも始末に──」

『構わん』


 間を置かぬ返答だった。




『奴は──私が始末しよう』




「は!」


 ルキフグスは深々と頭を垂れる。


 魔王軍にとって彼こそが至上であり至高。

 何人たりとも彼の意思には逆らえず、抗うことも許されない。


 そう──彼こそが

 魔王を自称する悪魔や魔人が跋扈する時代、その称号を正式に名乗ることを許された唯一無二の存在。


 ある者は英雄と。

 ある者は災厄と。

 ある者は勇者と。

 ある者は死神と。



 時代の潮流により呼び名が変わっても尚、ただ一つ揺るがぬ意味は──絶対的な力を持ちし者。




「全ては陛下の御心のままに──」




 光を避けし悪魔は、千年目に君臨せし彼の名を呼んだ。





















 この罪深き世界の歴史は証明している。






 






 ***







 かくして偽物の聖女の物語も終わりを迎えた。




 交錯する本物と偽物の聖女。

 本来どちらも死ぬ運命にあった者達は、勇気ある者達の奮闘により、その運命を捻じ曲げられた。


 しかし、物語はまだまだ終わらない。

 書き換えられる〈悲嘆〉の物語は、ここからが本番だ。


 捻じ曲げられた運命。

 それに伴う予測不能な未来。


 それでも彼らは行く。

 〈虚飾〉、〈嫉妬〉、〈怠惰〉、〈色欲〉……徐々に力を結集させし彼らは、より良い未来を目指して進む。


 積み上げた業がいつか報いるはずだ。

 善行でも悪行でもそれには変わりない。


 だからこそ、彼らは少しずつでも世の為人の為の旅を続ける。


 次に目指すは修羅の国。

 かつては魔の者に鎖されながらも、今では人種を問わず受け入れるようになった寛容なる大地。


 しかし、彼らはまだ知らない。

 寛容さの下に埋もれし、尽きぬ強欲の胎動を──。


 これは〈虚飾〉の物語。

 悲劇を嘘にする物語。

 嘘吐きライアーの──全てを救う物語なのだから。











第三章

色欲の聖女











 ***




 祭囃子が鳴り響く街並み。

 家は木造。屋根には瓦。道行く人々の多くは、上下一体となった着物を腰に巻く帯で止めるといった装いをしている。


 ここはアヴァリー教国のとある街。

 ミレニアム王国や他の七大教国とも違う赴きの街並みの中、とある四人組は軒先の長椅子に腰かけつつ、穀物の粉を丸く練って茹でた食べ物──団子を頬張っていた。


「へぇ~! それじゃあヴァザリアは、そのお姉ちゃんに化粧を教えてもらったんですね!」


 濡羽色の髪を女剣士ルキは、団子を頬張りながら談笑していた仲間にそう返した。

 背の高さに比例して脚が長い。そして、まつ毛も長かった。

 加えて、その紅い瞳だ。見ているだけで意識が吸い込まれそうになる魔性の輝きは、さながら磨かれた紅玉のよう。その魔性を半減させる為か、その仲間はあえて片目を隠す髪型をしているほどだ。

 青系統のグラデーションも相まって、整えられたショートカットは実に爽やかな印象を振り撒く。


 しかし、何よりも人の目を引くは彼──否、の美しさだ。

 一見すると絶世の美青年にしか見えぬ槍使いの名はヴァザリア。とある理由で故郷から離れ、各地を渡り歩いていた……こう見えて女性である。

 おかげで救われた少女の性癖を破壊してきた回数は星の数にも上っていた。


 そんなヴァザリアは身の上話をしていた。

 途中、過去に出会った『お姉ちゃん』との思い出を話していた訳だが、それをルキに触れられた途端、魔性を宿していた瞳は目の色を変えて光り輝き始める。


「そうなんだよ! 僕のお姉ちゃんはすっごく綺麗なんだ!」

「急にデカい声出すんじゃないわよ」


 団子を頬張るアイベルが窘めるも、ヴァザリアは意に介さない。


「お姉ちゃんは綺麗で、可愛くて、化粧も上手で! 目も宝石みたいにキラキラで、髪も絹みたいにサラサラで!」

「いいお姉さんだったんだな」

「だから僕、そんなお姉ちゃんと結婚したいなぁ~……なんて……」

「……?」


 器用に鉄仮面の隙間から団子を頬張っていたエルが固まる。

 エルだけではない。ルキとアイベルも、ヴァザリアが口にした言葉を理解できず、微動だにしなくなっていた。


 思考を処理しようと頭が回る。

 けれども一向に思考は完結しない。もし彼らをゲーマーが目撃すれば『ローディング中かな?』と訝しむほどの光景だった。


「あれ? 皆どうしたんだい?」

「……ちなみに聞くが、そのアスって人は女なんだよな?」

「ううん、男だよ?」

「? ……お姉ちゃんって呼んでなかったか?」

「呼んでるよ。お姉ちゃんだけど男の人なんだよ」

「…………………………?」

「僕何か難しいこと言った?」


全部ずぇんぶよっ!!」


 ようやく思考処理が終了したアイベルが口を挟んだ。

 語気が強めなツッコミであった。


「何よ、男なのにお姉ちゃんって!? 男ならお兄ちゃんでしょ!?」

「違うんだ! 男だけどお姉ちゃんなんだよ!」

「訳分かんないんだけど! ちょ、一旦ハッキリさせましょ! アンタのお姉ちゃんの性別はどっち!?」

「男だよ」

「じゃあお兄ちゃんじゃない!」

「でも修道女シスターなんだよ?」

「男のシスターならブラザーでしょうが!」

「違うんだ! シスターなんだ!」

「でもちんちんぶら下げてんでしょ!?」




「……おちんちんシスター?」




「エルは何言ってんのっ!?」

「そういうの公衆の面前で言うのよくないと思うよ……」


 思いついた言葉を口に出した途端、責めの矛先はエルへと移り変わった。

 ヴァザリアが憧憬する相手──アスについて知らぬ面々は、しばし彼の性別について議論を交わすのであった。


 愛に寛容な宗教、スーリア教。

 それは異性恋愛が一般的な価値観の者達にとっては、大いなる混乱の元となるのだった。

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