第27話 参戦は逆転の始まり




「もらったぁ!」

「! しまった!?」


「よっと」


「ぎゃあああ!?」


 従魔隊の一人に襲い掛かった悪魔が居た。

 しかし次の瞬間、悪魔の首はどこからともなく現れたライアーの剣によって斬り落とされる。


「後ろにも目ぇ付けとけよ」

「す、すみません!」

「あっ、嘘。今の悪魔に言っただけ」


「げぁ!?」


 『ごめんごめん』とフランクに謝るライアーは、逆手に握り直した剣で背後から襲い掛かってきていた悪魔の首を貫いた。

 振り返ることもせず、だ。

 この乱戦の中では魔力探知も散漫にならざるを得ない。それでも尚、敵の接近を感じ取って冷静に対処できるのは、紛れもなくライアーが場慣れしている証拠に他ならなかった。


「そんじゃ、後はよろしくぅ」

「はい!」


 劣勢になっていた従魔隊を救ったライアーは、背後から迫りくる老悪魔の魔力を感じ取る。

 直後、頭上から岩石が降ってきた。

 回転の遠心力をそのまま破壊力へと転換した岩の槌。それに対してライアーは避けることもせず、真上に刺突を繰り出した。


 岩石へと突き立てられる剣。

 この質量差、普通に考えれば鉄で打たれた剣であろうが問答無用で拉げるであろう。

 しかし、ライアーの繰り出した刺突は岩石に放射状の罅を広げたかと思えば、彼に当たるよりも早く岩石をバラバラに砕いてみせた。

 砕かれた岩石のいくらかは彼の鉄仮面に落下してカンコンと小気味いい音を響かせるも、ノーダメージであるのは火を見るよりも明らかであった。


「おやおやアガレスさん? 武器が砕けちゃったねぇ。駄目よぉ~、武器はもっといいもの使わなくちゃぁ~」

「減らず口を……」


 槌部分を失った鎖を振り回すアガレスは、再び地面に鎖を叩きつける。

 すると地面にはポウッ、と魔力の淡い光が灯った。そうしてアガレスが鎖を引き抜けば、再び半球状に抉られた地面が鎖の先端にくっついて即席のフレイルが完成する。


「なるほど、〈土魔法テッラ〉か」

「分かったところでどうしようもできまい」


 巨岩を先端に付けた鎖は、再び標的をライアーと定めて蛇の如く宙を這う。

 前方からの飛来。先の一撃は従魔隊の人間に流れ弾が行かぬよう迎撃したが、これに関しては射線上に味方がいない為、ライアーは回避を選択した。

 その場で跳躍し、立っていた場所に着弾した巨岩を足場にしたライアーは、そのまま鎖の上を綱渡りするかの如く駆けて行く。


 しかし、


「避けられるものなら避けてみろ──〈土魔法テッラ〉」


 アガレスが鎖に魔力を込める。

 すると、先端の巨岩が光を灯し始めた。ただの岩石の表面が波打ったかと思えば、直後その表面が鋭利な棘へと変貌する。

 棘は伸長し、鎖の上を走る剣士を背後から襲う。


「っとォ!?」


 これをライアーは剣で切り払い迎撃。

 ただその間にもアガレスは地面にもう一方の掌を突き、魔力を注ぎ込んでいた。


「〈大土魔法テラクエ〉」

「っ!!」


 地面を伝播し波及する魔力。

 それはライアーの進路上の地面を無数の棘へと変形させるに至った。


 前方からの棘。後方からも棘。

 ライアーの持つ剣は一本。


「ぐっ!」


 何とか棘を切り払い迎撃し続けるライアーであったが、その内の一本──ちょうど彼の死角から迫りくる槍が、鎧を身に纏った胴体を貫いた。


「がはっ……!?」


 棘に貫かれ、宙に浮く剣士の体。

 そこへ次々に殺到する岩の棘は、慈悲も容赦もなく剣士の肉体を串刺しにしていく。間もなく鉄仮面からは夥しい量の血が溢れ出た。


「……他愛もない」




「えいっ」

「げぁあああ!?」




「!」


 刹那、アガレスが見つめていた場所とは違う方向より声が聞こえた。

 気の抜けた掛け声と、塵になって消滅する悪魔の悲鳴だった。


 弾かれるように顔を向けたアガレスが目にしたのは、たった今串刺しにしたはずのライアーが従魔隊に飛び掛かった悪魔の一体を切り伏せた場面であった。


「悪いね、手柄頂いちゃって」

「いえ! 助かりました!」


 軽く会話を交わしたライアーは、アガレスの方に振り返る。

 鉄仮面の上からでも分かるほどニタァ……、と目を歪ませるライアー。彼はアガレスの方に駆け寄る間にも、別の悪魔の背中を魔法で狙い撃つなど、徹底的に敵の妨害に心血を注いでいた。


 そしてアガレスの前まで戻ってくるや、


「よっ。何か楽しい夢でも見てたか?」


 隠しもしないニヤケ面で煽ってきた。


「──」


 アガレスの巌の如き顔が、更に深い谷間を刻み込む。


「貴様から殺す」

「過激なラブレターは事務所がお断りしてるんで」


 再度、轟音が夜空を衝いた。

 巨岩がめり込んだ地面からは大量の土煙が舞い上がる。しかし、それほどの破壊力も命中しなければ意味はない。

 『あらよっと』と危なげなく土煙の中から現れるライアーは、そのままアガレスの懐へと潜り込み、岩をも砕く剣を振るって悪魔の命を絶とうと仕掛ける。


(こやつの幻影……ただの〈幻惑魔法ハル〉ではない)


 至近距離での斬撃を鎖でしのぐアガレスは思考する。


(普通〈幻惑魔法ハル〉であるならば魔力探知に掛かるはず……だがこやつにはそれが通用しない!)


 そうでなければ何度も幻影を見破れず、味方を背中から刺されるなどという結果は起こり得ない。

 しかし現状、それらはすでに何度も起こっていた。

 自分と戦っているはずの剣士がいつの間にか幻影とすり替わっており、従魔隊と戦っていた悪魔を不意打ちで仕留める。そうやっていつしか悪魔の軍勢は数を減らすに至っていたのだ。


(上級の〈大幻惑魔法ハルシネ〉でも探知に掛からぬなどあり得ない。あれは単に魔法の範囲が広いだけだ)


 不自然な幻影。

 従来の魔法ではありえず、魔力探知にも掛からない状況。


 そこまで思考が回った瞬間、ライアーの斬撃がアガレスの胴体を袈裟斬りにした。


「っ!!」

「おらぁ!!」


 アガレスが反撃に出るより早く、ライアーの乱雑な蹴り──現代で言うところのヤクザキックが傷口に炸裂する。

 苦悶の表情を湛えるアガレスは、そのまま蹴りで吹っ飛ばされた先に建てられていた丸太の防壁に叩きつけられる。


 傷口からは大量の血が流れ出る。

 それを掌で掬うアガレス。


 この熱と痛みは幻などではない。


「……なるほど、シン魔法か」


 得心。

 それからのアガレスは早かった。


「ならば、最早小細工など要らぬわ」


「!」

「ライアー殿!」

「ああ!」


 察したライアーに従魔隊隊長イェリアルが呼びかける。

 すでに二人は掌を構え、魔力を練り上げる。


「──〈大魔弾マギア〉!」

「──〈大水魔法オーラス!〉」


 即座に繰り出せる、それでいて最低限相手を仕留め得る一撃が宙を疾走する。

 純粋な魔力の弾丸と、大質量の水の弾丸。手負いの悪魔相手であれば十分な威力のはずだった。


「──


 だが、それはあくまで無抵抗であればの話。

 アガレスが足首に嵌められた足枷に手を添え、言葉を紡いだ。


 その瞬間、彼の全身に波打つような紋様が広がり、全身から魔力が噴き上がったではないか。

 二人が放った魔法も噴き上がる魔力の壁に阻まれて霧散する。


「一足遅かったか……!」


 悔しそうに歯噛みするイェリアル。

 その隣に立つライアーは、静かに剣を構え直した。


「いいや」




「──我が〈シン〉は〈嘲弄ちょうろう〉」





 魔力によって巻き上げられた土煙が、更なる魔力の噴出によって吹き消された。

 すればそれまで隠されていたアガレスの変貌が目の前に現れる。両椀の翼は肥大化し、巌の如き顔面は、爬虫類の皮膚を彷彿とさせるゴツゴツとした質感へと変わっていた。


 だが、最も大きな変化はその下半身にあった。

 半人半馬ケンタウルス──この世界にも伝説として語り継がれる生き物が居る。下半身が馬であるケンタウルスのように、アガレスの下半身は鰐の胴体に変化していたのである。


「我は……〈嘲弄のアガレス〉なり」


 地鳴りのようなしわがれ声を響かせるアガレス。

 次の瞬間、罪化したアガレスの下半身に生える尻尾が地面に叩きつけられた。巨大な肉体に比例した破壊槌の如き一撃。したがって周囲に広がる衝撃も凄まじく、悪魔に対し優勢を保っていた従魔隊の足取りを強制的に乱していく。


「ぐっ!? なんというパワーだ……!!」

「遊戯はこれまでだ、人間共。貴様らの底は見えた」

「底だと? 馬鹿を言え、まだ我々には……」

「これより始まるのは一方的な蹂躙と心せよ」


「隊長!! 海から……!?」


 一人の従魔隊が海を指差した。

 先の震動で激しく海面は激しく波打っている。月明かりに照らされるのも相まってチラチラと水光を放っているが、それらを切り裂くようにして謎の影が次々に浮かび上がってきた。


「増援だと!?」

「〈嫉妬〉を仕留める為に用意した。貴様ら如きには過ぎた戦力だがな」


 アガレスが合図を出すように腕を掲げた。

 すると、海面に顔だけを出していた悪魔が口腔に魔力を溜め、地上の従魔隊目掛けて魔法を放ち始める。


 陸に上がらぬまま始まる一方的な狙撃。

 これに従魔隊の面々は必死に防御を試みるが、アガレスが引き起こす地震によって足場が不安定になった結果、防いだものの鞍上から弾き落されるといった事態が発生する。


「おのれ!」


 隊長であるイェリアルはシーコーンの手綱を握り、苛烈な攻撃の前に躍り出る。

 そして防御魔法を展開し、落馬した従魔隊員達を悪魔の魔法から防ぐ。


「海側に出て防御に回る者と地上の悪魔に迎撃に回る者に分かれよ! 地上の悪魔の数はもう少なくなってきている! 片方を優先して殲滅し、確実に海側の悪魔を仕留めるんだ!」

「──いい采配だ。が居なければの話だがな」

「っ!!?」


 突如、イェリアルの張った防御魔法が貫かれた。

 すかさずシーコーンを操り、角より巻き上がる水流で迎撃するイェリアル。しかし次の瞬間、全身を凄まじい電流が襲い掛かってきた。


「がっ!? しまっ……!?」

「フハハハハ!!」

「ぐっ!?」


 間髪入れず叩き込まれる蹴り。

 防御が間に合わなかったイェリアルは、そのまま鞍上から蹴り落とされる。受け身も取れずに地面に叩き落されるイェリアルは、全身に残る痺れに抗いながら現れた悪魔の方を見合った。


「貴様は……!?」

「告解しよう。オレの〈罪〉は〈徴発ちょうはつ〉……」


 〈シン〉を解放し、罪化を始める悪魔フォルネウスが告げる。


「オレは、〈徴発のフォルネウス〉だッ!!」


 罪化したフォルネウスの姿は、まさに海の怪物と称して過言ではない風貌だった。

 頭部には一対の頭鰭とうき

 サメの如き鋭い無数の牙。

 腕から脇腹にかけて広がるヒレ。

 そして、背中からは身の丈ほどの尾が延びており、その先端──尾棘にはバチバチと眩い電光が爆ぜていた。


「〈嫉妬〉とやり合えると思っていたのだが……とんだ肩透かしだったな」

「油断するな、フォルネウス」


 上陸したフォルネウスに対し、地響きを響かせるアガレスは低い声で唸る。


「騎士以外に厄介なのが一人居る。恐らくは罪使いだ」

「罪使い! それならば」

「〈罪〉を完全解放する前に──潰す」


 二体の悪魔の視線が一か所に集まった。


「あっ、もしかして俺?」


 呑気な声を上げる鉄仮面の剣士目掛け、アガレスとフォルネウスはそれぞれ自身の魔力を集中させる。


「──〈大土魔法テラクエ〉」

「──〈大雷魔法フルグロ〉」


 片や大地が。

 片や雷撃が。


 たった一人の男を殺す為だけに解き放たれた魔法が、ライアー目掛けて殺到した。

 着弾まで十秒と掛からなかった。二つの魔法はライアーが立っていた場所でちょうど激突した。


「──っぶなす!?」


「……やはりか」


 しかし、どうやって躱したのかライアーが爆心地より飛び出てきた。

 舞い上がる埃で鎧こそ汚れているが、これといって傷が付いている様子は見られない。


「守りが硬いか、そもそも位置すらも惑わしているのか……」

「アガレス様。それならば手っ取り早い方法があります」


 凶悪な笑みを湛えるフォルネウスは魔力を練り上げ、自身の頭上に複数の雷槍を浮かべてみせた。


 夜暗に電光が爆ぜる。

 その一本一本が人間を絶命させるに十分な破壊力を備えた凶器。加えて雷魔法は光魔法を除いた属性の中で最速の攻撃速度を誇る。発射されたのを見てから回避するなど不可能に等しい。


 すなわち、フォルネウスが出した答えはこうだ。


「避けたところで無意味にすればいいのです」

「……貴様という奴は」


 だが、とアガレスは口角を僅かに釣りあげた。


「確かに、その通りだ」

「おいおい待ちたまえチミ達そういう無差別攻撃は脳筋染みてアホに見えるからやめた方がよろしいんじゃないかと俺は思うのですが」

「勝利に勝る誇りなどありはしない」

「チクショーーーっ!!」


 ライアーの情けない悲鳴が夜空に木霊した。


「これだから悪魔は!! 自分が負けそうになるとすぐヤケクソになるんだから、もぉーーー!!」

悪魔われわれは貴様らと価値観が違う。騎士のように下らぬ信念に命を賭すこともなければ、情などという下らぬものに命を捨てることはしない」

「負けそうってのは否定しないのな」

「……その減らず口を呪うがいい」


 目に見えて激昂するアガレスが地面に魔力を込める。

 彼もまた広範囲の魔法攻撃でライアーを仕留めるつもりであった。たとえこれすらも躱されようと、従魔隊の面々は無事では済まないはずだ。


 どっちに転んだとしても戦力を削ることはできる。


 そう考えた二体の悪魔はライアーだけに目を向けていた。




「──〈猛毒魔法ヴェネヌーマ〉!」




 故に、見落とした。


「ぐああああ!?」

「これは……ぎぎぃ!?」

「フォ、フォルネウス様ぁー!!」


「なにっ!?」


 海中に潜んでいた悪魔達の悲鳴が次々に連なる。

 何事かと振り返るフォルネウスの目に映ったのは、魔力によって生み出された猛毒に冒される海面と、それを浴びて苦しむ悪魔の姿であった。


「おのれ新手」

「危なぁーーーいっ!!」

「がっ!!?」


 フォルネウスが海の方を向いた、その一瞬の隙を突いたライアーのドロップキック。

 海の化物と化した悪魔は、まんまと猛毒漂う海の中へと蹴り落とされた。それどころか直前まで放とうとしていた雷槍も海に浸り、電撃に耐性を持たぬ悪魔達が次々に感電し、海の藻屑と化していった。


 海面から水飛沫が上がる中、ライアーは一仕事終えたと言わんばかりの面持ちを湛え、額(鉄仮面)の汗を拭う素振りを見せる。


「ふぅ……俺が危なかったぜぇ……」

「〈大土魔法テラクエ〉!!」

「全員撤退!!」


 直後にアガレスの繰り出した〈大土魔法〉が襲いかかるが、ライアーは寸前で倒れていたイェリアルを回収しながらシーコーンに飛び乗った。

 彼の言葉の意味を察した従魔隊の面々は、一斉に海に目掛けて乗っている馬ごと飛び込んだ。


 そのまま彼らは海中に落下──することはなく、それぞれシーホースとシーコーンは海面に立ってみせた。大地に立ちさえしなければ〈大土魔法〉も届きはしない。


「さすが海のお馬さん。後で海ぶどうをごちそうしてやるからな」

「ブルルッ」

「にしても今の魔法……」


 ライアーは〈猛毒魔法〉が飛来した方角を見遣る。

 散々悪魔が暴れたせいでボロボロになった家屋が立ち並ぶ中、月明かりに照らされる小高い岸壁の上に彼女は立っていた。


「ライアー!」

「アータン! 戻ってきちゃったのね!」

「ごめんなさい! でも私……!」

「ナイス魔法! 一網打尽じゃねえか!」

「!」


 満面の笑みでライアーはサムズアップする。

 それを見たアータンは叱られる直前の子供のような表情から一変、パァっと表情が明るくなった。


 しかし、ここはすでに戦場。

 自分に当てられる濃密な魔力の気配を感じたアータンは、すぐさま気を引き締めてこの場に居る悪魔を見渡した。


「あれが……!」


 存在感を放つ悪魔は二体。


 一体は下半身が鰐と化した翼腕を持つ悪魔。

 もう一体はたった今海に叩き落された鮫と鱏の合の子のような悪魔。


 どちらも人外染みた凶悪な面構えをしており、今にも襲い掛かってきそうな気迫に満ち溢れていた。


 一瞬、恐怖で足が竦みになる。

 だがしかし、アータンはそんな自分の脚を力いっぱいに叩きつけた。


(震えている暇なんか……ない!)


 ここに戻ってきた理由を考えろ。

 そう自分に言い聞かせ、アータンは今一度杖を力強く握る。


「私だって……私も戦うんだ!!」


 この村を。

 ここの住民を。


 その為に悪魔を討つ。

 かつて、姉がその為に聖堂騎士団に入っていたように。


「……そうか」


 奮い立つアータンを一瞥し、アガレスが呟いた。


「あれが〈嫉妬〉か」

「よっ」

「っ!」


 刹那、迫りくる激流があった。

 それを両腕を交差させて防御すれば、腕に鋭い痛みが二つほど生じる。


 片方は突き出された剣の切っ先で、もう片方は渦を巻くシーコーンの角によるものだった。


「若い女の子に色目使ってんじゃありませんよ、おじいちゃん♡」

「さっきは不覚を取ったが……二度と同じ轍は踏まぬ!!」


 ふざけた声色を発するライアーに対し、義憤に燃えるイェリアルは右手の親指に嵌められた指輪を掲げて見せる。


「我、告解する!!」


 従魔隊隊長イェリアルの告解。

 〈罪〉を解放して罪化が始まる一方で、悪魔が猛毒に喘ぎ苦しむ海面の方にも動きがあった。


「クソォ!! あの鉄仮面め……!!」


 海面から姿を現すフォルネウス。

 他の悪魔が毒に苦しむ中、彼だけが毒に耐性を持っているのか、さほど毒が効いている様子もなく陸に手を掛けようとする。


「〈火魔法イグニ〉!!」

「!!」


 そこへ放たれる魔力の炎。

 フォルネウスはもう片方の掌を突き出して防ぎ、なんとかこれを凌いだ。


「女ァ……!!」

「あ、貴方の相手は……この私だ!!」


「アータン殿! 我々もお力添えいたします!」


 フォルネウスに立ち向かうアータンに続くように、態勢を立て直した従魔隊が横並びになって加勢する。


 かくして出来上がる構図はこうだ。



 ライアー&イェリアルVSアガレス

 アータン&従魔隊VSフォルネウス


 意図せず各々の戦う相手を見定めた戦士と悪魔は、己の敵をその瞳で見据える。




 けっして相容れぬ両者の戦いの火蓋は、再び切られた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る