第30話目 魔神の策略
3月にもなったが、いまだ朝は遅い。
十時を回ったというのに、冒険者ギルド《鉄獣の軌跡》の窓辺から射し込む光はまだ弱く、薄い氷を透かすように淡く揺れていた。
薪ストーブの上では鉄瓶が湯気を吐き、外套を脱ぎかけた冒険者たちが、依頼掲示板の前で談笑している。
その片隅、小柄なルーンフォークの少女が椅子に腰かけ、分厚い革表紙の帳簿をめくっていた。
リベリスだ。
今日の仕事は、先日戻ったばかりの依頼書類の整理と、古い登録証の清書。金属の指先が器用に羽ペンを走らせるたび、紙の上に端正な文字が並んでいく。1ヵ月間の職場体験の賜物だ。
「助かるわ、リベリスちゃん。あなたの字、ほんとに読みやすいんだもの」
受付のセラが笑顔を向ける。
リベリスは小さく微笑み会釈を返すと、再び手元に視線を落とした。外に出るのは、どうしてもためらわれる。雪道を歩くのは嫌いではないが、あの夜――襲撃の記憶が、まだ胸の奥に冷たく残っているのだ。
昼休み。
ギルドの一角にある小さな居室では、リベリスが静かに窓の外を見つめていた。外の街は寒さの中で活気を失いかけているが、同時にどこか落ち着かない、ざわついた空気が漂っていた。
「リベリスちゃん、お昼ごはんだよ」
やわらかな声で、セラが声をかける。
リベリスは小さく頷き、抱いていた熊のぬいぐるみをそっと置いた。
「ここなら安全だよ。今の街は……少し落ち着かないからね。」
ギルドの守りは強固であり、戦闘経験豊富な冒険者が出入りしている。しかし、ここ数か月は
裏通りでは、蛮族の群れや破落戸のチンピラたちが警戒を強め、時折小競り合いを繰り返している。
「……街の空気が悪い気がする。恐らくは魔神が街に入り込んでいるのだろう。」
暖炉の火を見つめながら、ギルドの古参冒険者がぼそりと言った。
この街を包む「守りの剣」の結界は高い"穢れ"を持つ蛮族には効果的に作用する一方で、異界の住民の魔神には効果が作用しない。古参冒険者はこれらから魔神が組織だって何か大きな悪事を企てているのではないかと危惧しているのだ。
「鉄道卿の方々が神殿にも協力を仰ぎ私兵団や冒険者と共に町の巡回を強化していますが、なかなか収まりませんね。」
「魔神殲滅のスペシャリストも今は協力してくださっているし、早く解決したいものだな。」
そういって、セラと古参冒険者は話を締めくくる。
リベリスはまだ幼いが、ギルドでの日々は少しずつ落ち着いていた。外のざわつきとは対照的に、ここでは彼女は守られ、少しずつ強くなっていく。
最近は魔動機術と銃の腕を上げ、インテゲルに見せたところ攻撃だけなら
だが、遠くから漂う不穏な気配は、じわじわと確実に街の中心に近づきつつあった。
「……やっぱり、何か大きな陰謀が渦巻いているのだろうな。」
掲示板を眺めていた初老の冒険者がぼそりと呟く。
リベリスは、書類の束を抱えながら耳をそばだてた。
その胸の奥で、じわりと寒さとは別のざわめきが広がっていく――。
ギルドの向かいの喫茶店、そこにはリベリスを見守る二人の姿があった。
「もうすっかりギルドの生活にも慣れたようで安心ですね。事務作業もある程度は出来るそうです。」
プリマが穏やかに笑う。彼女の桃色の瞳がリベリスを優しく見つめている。
「戦闘能力も向上している。小柄で体格が良いとは言えないが、その不利を覆すのが
インテゲルが腕を組みつつも誇らしげに言った。
リベリスは時折スラムのアウサイ商店に戻るのだが、その時にはインテゲルが銃の使い方などをレクチャーしていた。標的に向けて冷静に狙いを定め、正確に射撃を重ねる。フッドの姿を模した的を撃ち抜き、動きを見切る速さは成長の証だった。
「まさか、生け捕りにしたフッドと戦わせるなんて思いもしませんでしたけど....。あれ本当に怖かったんですからね!!!!」
実践を積む必要があるとフッドと戦わせた時、プリマはリベリスを守ろうと暴れようとし簡単にローグに組み伏せられていた。しかし、彼女の心配も杞憂にリベリスは見事に一人でフッドを打ち取ったのだ。
「でも、街の空気は良くない。魔神の噂も増えている。ギルドで匿われているとはいえ自衛は大事だろう?」
インテゲルは事も無げに告げ、プリマはその様子にまたプリプリと怒り始まるのだった。
薄暗い室内、重厚なカーテンの隙間からもれた月明かりが、床にうっすらと影を落としている。
バンションは荒々しい動作で部屋の中を歩き回っていた。
「どうしてギルドなどに保護させているのだ、あの小娘は……!」
手元の酒瓶を掴み一気に煽る。しかし、酒の力を借りても頭は冷えずむしろ熱を帯びてくる。チンピラたちにリベリスの誘拐を命じたが、報告は散々なものだった。
人攫いに長けた蛮族に依頼、スラムへ向かう際に強襲、
「俺の言うことを聞け! なぜわからん!」
ついに苛立ちが爆発し、集まった部下たちに声を荒げる。
「お前らはただの能無しか! 役立たずはここから出て行け!」
怯えた部下たちは震えながらその場を離れていく。
扉が閉まる音が静寂を引き戻し、バンションは肩で息をする。
ひとり残された部屋の中、彼はゆっくりと机の引き出しを開けた。
そこに収められているのは、あの“闇色のクリスタル”。
その黒く妖しい輝きは、まるで生きているかのようにゆらめいていた。
「……お前はただの飾りじゃないんだな」
クリスタルを取り出し、手のひらに乗せると冷たさが指先を刺す。
それと同時に、低く囁く声が頭の中で響き始めた。
『お前は無能、跡継ぎになれぬ二男坊。だが我が力を借りれば、全てを手にできる』
「黙れ黙れ黙れぃッツ!!!!そもそも貴様が
『確かにな。だからこそ、お前の力が必要だ。私と貴様、力と権力を駆使してこそ全てを手に入れられる。そうだろう?』
バンションはぎゅっと目を閉じた。
心のどこかで、この声を拒みたいと生物としての恐怖を覚えつつも、その魅惑に抗うことができない。そして、これほど強力な魔神が自分を必要とする優越感と自尊心に酔いまともな思考が出来なくなっている。
囁きは更に甘美な響きを帯び、彼の中の虚栄心と野心を刺激する。
レプティがこの場面を見れば、3000年前から何も変わらぬ魔神の勧誘手口とそれにホイホイ乗っかる貴族というダブルパンチに眩暈を覚えながら魔法と大鎌を振るう事だろう。
「お前の望みは何だ? 支配か、復讐か、永遠の権力か?」
バンションはゆっくりと頷き、冷たい指先をクリスタルに押し当てた。
「すべてだ……俺は、俺だけは……!」
部屋の空気がひんやりと震え、クリスタルの黒い輝きが強まる。
彼の心は徐々に蝕まれていき、もう戻れない道へと踏み出していた。
翌日、バンションは再び部下を集めた。
「リベリスという小娘がいる。奴を狙い、破落戸を利用し騒ぎを起こせ。ギルドの連中を混乱させるのだ。そして、私が保護という面目で小娘を手に入れる。」
部下たちの目に浮かぶ不安を無視し、彼は続ける。
「これは俺のための戦いだ。だが成功すれば、お前らにも報酬は惜しまない。」
しかし、彼の言葉の奥底には、もはや自分の意思とは別の、冷酷で邪悪な影が潜んでいた。
「すぐに動け。俺の命令だ」
命じられた部下たちは、言葉の重さを感じつつも動き出した。
バンションの背後で、闇色のクリスタルは静かに黒く輝き続けていた――。
一方その頃、スラム街の雑多な店並みの中、ひときわ目を引く小さな雑貨店「アウサイ商店」。
店先には数多くのアイテムが並べられており、スラムの子供たちがカイから給料を受け取り各々のねぐらに帰っていた。る。
「ん?悪いけど今日は店じまいだよ。」
カイが声をかけると、扉の向こうから軽やかな足音が響いた。
颯爽と現れたのは、飄々とした表情を浮かべた男性。
薄手のフードを被ったクールなギャングの幹部、ヒスウだった。
「今日も商売繁盛かい?悪いがレプティに話が合ってな。」
ヒスウは軽く笑みを浮かべながら我が物顔で店内に入ってきた。
カイはすぐに察し、店の奥の狭い通路へとヒスウを案内した。
「ここなら落ち着いて話せるよ。」
やがて店の奥の小部屋にて、カイが軽く戸を閉めると、ヒスウはその表情を引き締め、レプティの方を見ると魔法文明語で話しかける。
『よぉレプティ、久しぶりだな。』
レプティは軽く鼻を鳴らしながら口を開く。
『何の用よヒスイ。前みたいな脅しの仕事なら受けないわよ。』
『いや、今回は情報を教えに来てやったんだ。バンションに動きがあるってな』
『破落戸を利用してたし、あんたの部下にも話が回ってきたって訳?』
ヒスウは狡猾に笑いながら、肩をすくめる。
『まあな。あのボンボンは金払いの良さだけは一流だが、頭はカラッポだ。だが、最近は魔神の影がチラつくせいか、動きが余計に胡散臭くなってきた』
『具体的には?』
レプティが問い詰めると、ヒスウは目を細めて言った。
『蜘蛛の巣団に協力を要請してきた。あいつはボンボンだがギャングの股開かせるのが上手い。金の使い方も思い切りが良い。.....破落戸たちに大金ばら撒いて動かしてる。リベリスのことを狙えってな。だが、それだけじゃない。裏での後継者争いも激しくなっている。クルーク家は表向きは穏やかだが、内実は権力闘争でボロボロだ』
『裏で当主を支えるってなればそれなりに有能だったのかもだけど....魔神に利用されちゃ終いね。』
カイも加わる。
『跡目の話は気になるね。あのバンションが権力を振りかざすのも、当主に認められず焦りがあるからだよね?』
ヒスウは軽く頷く。
『そうだ。あの男は『飾りの二男坊』だ。実子であっても後継者に選ばれなければ無意味。しかも、義兄や義弟、それにその子どもたちが複数控えている。アーションや他の血縁が権力の本命だ』
そういってヒスウはクルーク家の家系図を取り出す。
【現当主】クルーク家当主
├─ 長男(ザルド)… 当主の長子。現役の実務家。
│ └─ 長男の息子(義兄の息子/12歳)… 算術も怪しい、不出来と評判。
│
├─ 次男 マテオ(故人)… 3年前に死亡。
│ └─ 息子 アーション(9歳)… 孫世代の有力候補。母親は外から嫁いできた。
│
└─ 三男 バンション(成人)… 鉄道卿家の血を引くが後継順位は低い。
→ 魔神にそそのかされ、リベリス誘拐を企てる。
レプティが厳しい表情で言う。
『権力争いの中、魔神の介入がどこまで広がっているかが問題ね。それにしてもよくこんなの調べてこれたわね』
『ま、家柄の良い冒険者様の伝手があったからな。』
『リベリスを狙う理由は?』
『そこまでは分らんが、あのガキの持つ力が、奴らの目論見に必要だからだろうさ。魔神絡みのクリスタルも、ただの飾り以上の意味があるはずだ。うちの連中は俺が抑えてる。この山はあまりにきな臭ぇし関りを持つべきじゃねぇと判断しお前らに話を持ってきた。』
『まずはリベリスの安全確保と、バンションの裏をかくことね.....。』
レプティがそう宣言すると、ヒスウは立ち上がり手を振ったりながら去っていく。
『今回のはタダで教えたわけじゃねぇからな。いつか必ず返してもらうぜ。ま、せいぜい頑張んな。』
レプティとカイは顔を見合わせ、今後の手を考える。
「ナァ、結局どンナ話だッタンダ?」
魔法文明語が分からないローグを置き去りにして。
その日、冒険者ギルドの受付には、妙に緊張した空気が漂っていた。
常連たちの間で「もう実質冒険者」になりつつあったプリマだが、突如として彼女のパーティーに指名依頼が入ったのだった。
依頼内容は《無名墓地》に巣食うアンデッドの討伐。特に危険度6Lvのアイスマンが確認されている。《無名墓地》は街から半日ほど離れた、古い戦場跡だ。アンデッドは時折現れるが、ほとんどは下級の亡霊や骸骨兵で、通常は聖属性や浄化魔法を扱える者が適任とされる。
プリマの仲間たちは少数の強者には滅法強いパーティーだが、アンデッド退治の適性に乏しい。だが、当のプリマは例外だ。
彼女は過去の依頼で、妖魔の砦のアンデッドを滅した実績を持っている。
書類上は、彼女への依頼は不自然ではなかった。
――だが、ギルドの面々はどこか釈然としないものを感じていた。
時期が悪すぎる。
近ごろ、魔神絡みの不穏な動きに対応する為、日常的に彼女の周囲を警戒していた冒険者が数日間不在になる。
まるで、それを狙ったかのような絶妙なタイミングだった。
プリマはマジックアイテムでこの情報を仲間に伝え、数日間の護衛を頼むこととなった。
そんなある日の夜、ギルドの向かいの細い裏路地にひとつの影が潜んでいた。
ローグだ。昼間はカイやインテゲルが交代で監視していたが、夜間は彼ひとり。
カイが施した変装魔法で、ゴブリンの姿は隠され傍からはドワーフにしか見えない。ただし隠密行動を優先するため、重厚な金属鎧は脱ぎ、代わりに
防御力は明らかに落ちる。それでも、物音を立てずに動ける方が今は重要だった。
さらに、交易共通語を話せないという弱点を隠すため、石化の耳飾りを外し、通辞の耳飾りを付けている。本来は蛮族は耳飾りを2つ付けられる蛮族加工があるのだが、これも巡回兵にあった際に少しでも不審に思われないため外している。
通辞の耳飾りで相手の会話は聞き取れ、手には酒瓶を握ることで、わざと呂律の回らない酔っ払いの真似をすることで、夜回りの巡回兵の目を欺く算段だ。
これにより普段の2/3程しか防御力はない。だがそれでもまともに訓練していない人間相手なら十分であった。
通りには、酔客や深夜の商人がぽつぽつと行き交っている。
しかしローグの耳は、表通りの喧騒ではなく、路地の奥や建物の影で動くわずかな気配に集中していた。
月明かりが雲に隠れるたび、空気がひやりとする。
静かだ――それが逆に、胸の奥に鈍い警鐘を響かせた。
彼は酒瓶を口に当て、喉を鳴らすふりをしながら、目だけをわずかに動かして周囲を探る。
この街に長くいれば、ただの酔っ払いと“獲物を探す目”の違いはわかる。
今夜は、その獲物の目が、確実に増えているのは、気のせいではないだろう。
夜の街は凍りついたように静かだ。
だが、ギルド向かいの裏路地だけは、妙なざわめきが漂っていた。
ローグは酒瓶を手に、壁にもたれて俯いている。酔いどれを装うため、肩を揺らし、わざと呂律を崩した息を吐いた。
カツ…カツ…
複数の靴音がギルド側面の路地に入り込んでくる。
影が四つ、松明の明かりに照らされて浮かび上がった。
全員、そこそこ上等な革鎧や鎖帷子を着込み、剣や棍棒、短槍まで持っている。顔や腕には粗野な刺青、腕には金属の腕輪――金の匂いがする装備だ。
酔っぱらったふりをして千鳥足のように左右によろめきながら近づく。
「ここを外せば、あのガキを連れ出せるって寸法だ」
男の声が低く響く。
破落戸の一団は窓の鍵や格子に細工を施そうとする。
破落戸には似つかない真新しい金属製の工具や隠密用の装備を揃えている。
「……ウィ~ヒック。」
「あ?なんだてめぇ。怪我したくないならとっとと....」
その先の言葉吐かせず、ローグは酒瓶で相手の頭部を殴りつける。
本来なら対した威力もない酒瓶だが、ローグの筋力があればそれは十分凶器へと様変わりする。
「ガハッ!?」
「んなっ!?......うおおおおおおおおおおお!!!!手前よくもやりやがったなァ‼‼」
一人目が大声を発しながら踏み込んでくる。剣先が喉元へ突き出されるより速く、ローグは腰をひねり、足払いで相手を横倒しにした。
斧頭で肋骨を振り抜き、手首を蹴り飛ばして剣を奪う。
「ぐあっ!」
わざとらしい叫び声が路地に響く。
背後から棍棒が振り下ろされる。
ローグは半歩前へ出て盾で軌道をそらし、斧腹で相手の腹を打ち抜いた。息を奪った瞬間、棍棒を奪って背後の大男へ回転打ち。
硬い衝撃と共に、大男の脇腹の鎖帷子が鳴った。
「ぐぉっ…てめぇ!」
また大声。完全に「聞かせている」。.....だが、何のためだ?
二人が同時に詰めてくる。短槍の突きを盾で逸らし、流れで相手の喉に斧の握りを叩き込む。後ろから迫った剣の切っ先は、盾で受け止め、斧を持ち替え太腿を裂いた。
痛みに呻きながらも、破落戸たちは退かない。むしろ間を取り、さらに声を張り上げる。
「妖魔だぁ! こいつは妖魔だぞぉ!」
「衛兵ぃ! こっちだぁ!」
ローグは眉をひそめる。
まだ正体はバレていないはずなのに、なぜ妖魔と叫ぶ? ……いや、呼び寄せたい何かがあるのか。
最後の一人が飛びかかってくる。
棍棒の柄を両手で握り、全力で振り下ろした瞬間、ローグは踏み込み、盾で相手を弾き壁際へ投げ飛ばす。
十数秒。
四人全員が地面に転がった。息が白く上がるが、ローグの呼吸はまだ一定だ。
だが、ここまで大声を上げられれば――
鎧のぶつかる音、複数の松明の灯りが路地を照らし始める。巡回兵だろう。
ローグは咄嗟に割れた酒瓶を拾い、酔漢の喧嘩を装おうとした――その瞬間。
背中を冷たい指先がなぞるような感覚。
足元に、黒い紋様がじわりと広がる。
「――ッ!」
変装魔法が剥がれ落ち、偽りの人間の姿が霧のように消えた。
露わになったのは、鋭い耳と金色の瞳を持つ妖魔の姿。
耳の奥で、魔神の笑い声がかすかに響いた。
――嵌められたッ!!!!
巡回兵たちの顔が、一瞬で緊張と敵意に染まる。
次の相手は、破落戸より厄介な連中だな。そう内心ごちりながら、ローグは斧を構え直し、低く身を沈めた。
――――その時、巡回兵の背後から修道服に身を包んだ女が歩み出た。
その動きは遅くも速くもない、だが一歩ごとに距離が詰まっていく。
「……まさか、冒険者ギルドを狙うゴブリンがいるとは。軽んじられたものですね。」
右手は硬質化した甲殻のように変じている。
タンノズの
ローグは本能で悟る。ただ者ではないと。
それはそうだろう。なぜなら彼女は――――
「あっ貴方は.....!!!!」
「竜騎聖女のソニア・ジネ様!!!!」
――――1年前に
そのメンバーの一人にして、神官格闘家として名を馳せる人物なのだから。
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