これが俺の第3話


 あのクサレど畜生羽虫達のクエスト達成の証として、師匠は妖精の涙(笑)を手に入れていた。

 気がつけば手のひらにあったのだという。


 ちなみに、俺の手のひらには何故か雑草があった。

 しかも並びは「w」だった。


 意味はよくわからないが、殺意が湧いたので即燃やした。


 クソが!

 師匠の笑顔がなければ、絶滅させていたところを!


 師匠の御心に感謝しやがれ!!


 そんな事もあり、無事?にギルドへと戻り、クエスト達成の報告をしに来たわけだが。


 ――ギルド内が、やけに騒がしい。


 どうやら、ここを出る前に聞いた噂の「すごい新人」とやらが、ここの一番強いと言われている教官との一騎打ちで勝ったらしい。


 ……至極どうでも良い。


 そのせいでギルドが騒がしくなり、師匠のかわわな御耳を汚していると思うと、俺の中の何かが沸騰する。


「……消しますか?」


 俺は師匠にボソッと、その新人とやらの殺害許可を求めた。


 しかし師匠は、


「構わん、放っておけ」

「それより――早くクエスト達成の報告をしよう」


 と、大地より広い心でお許しになった。


 流石師匠!!

 あぁ、また師匠の女神っぷりを拝めた……!


 その場に跪きそうになる衝動を必死に堪え、俺たちは受付へと向かう。


 師匠を煩わせてはいけない。

 下僕たる俺が、受付嬢に報告する。


「すいません、クエスト達成の報告をしに来ました」


 声をかけた受付嬢は、他の受付嬢と例の噂の少年について話していた。


 若くて、美少年だとか。

 若くて、強いだとか。

 若くて、将来有望だとか。


 ……すげーどうでもいい。


 つーか、師匠の貴重な時間を無駄にしていると思うと、イライラが止まらない。


「すいません」


 もう一度声をかけると、受付嬢は今気がついたとばかりに、こちらを軽く見て、ダルそうに返事をした。


「は〜い、クエストの達成ですねぇ〜」


 ――イラッ。


 これが師匠への対応なら、生まれたことを後悔させているところだが、まぁいい。

 今は師匠を待たせている。ここは我慢だ。


「ではこちらに、ハンターカードとクエスト達成の証を提出お願いしまーす」


 俺は無言で、カードと妖精の涙(笑)を差し出した。


 ハンターカードとは、

 身分証明、ランク、討伐履歴、依頼達成数、危険度評価――

 すべてが記録される、冒険者の命そのものだ。


 受付嬢は慣れた手つきでカードを確認し――


「……え?」


 固まった。


「……え、ちょ、え?」


 二度見、三度見。

 カードをひっくり返し、目をこすり、もう一度確認。


「……っ!?!?」


 明らかに様子がおかしい。


「な、ななな、なにこれ……ランク……履歴……」


 ブツブツと呟きながら、受付嬢の顔色がみるみる変わっていく。


 さっきまでのダルそうな態度はどこへやら。


「し、失礼しましたっ!!」


 突然、背筋を伸ばして声のトーンが跳ね上がった。


 そして――


 今まで適当にしか見ていなかった、こちらをを改めて見直す。


 因みに俺たちはフードを被っている。

理由は単純だ。

 無駄に騒がれないため。

 ――師匠の御顔を偉大さを、他人に晒さないためだ。

(因みにレイは言わずもがなアマイロも超絶イケメン)


 受付嬢の視線が、フードの奥へと。


「……え?」


 一瞬、空気が止まった。


 ――気づいたのだろう。

 俺が、凄腕のハンターだという事実に。(違う)


「え、あ、えっと……あの……」


 露骨に声が上ずり、姿勢が前のめりになる受付嬢。


「そ、その……よろしければ……お名前とか……」


 媚びだ。

 完全なる媚び。


 だが――


「用件は?」


 冷たく返す。


「……っ」


 受付嬢、凍結。


 媚びが、一切通じないと理解した瞬間の顔だった。


「……ク、クエストは、確かに達成されています……報酬はこちらです……」


 ぎこちなく処理を終え、報酬を受け取る。


 目的は果たした。

 俺はすぐに師匠の元へ戻ろうと――


 その時。


「ねぇ、君さ」


 聞き覚えのない、軽い声。


 視線の先。


 ――そこには。


 噂の「すごい新人」が、師匠にナンパをしている姿があった。


「一人? よかったら一緒に――」


 ……。


 …………。


 ……………………。


 ――あぁ。


 俺の中で、何かが完全に目覚めた。


 世界が赤く染まる。

 鼓動が重く、低く響く。


(……コロス)


 師匠に、

 ナニヲシテイル?


 俺の脳内で会議が勃発した。

 長机。ホワイトボード。10人くらいの俺が勢ぞろい。

 全員、顔も声も動きも俺だ。


「議題だ――師匠に近づくクソムシの処理法!」


 目を輝かせたアマイロが手を挙げる。


「即消滅させる」

「物理的に排除」

「存在を抹消」

「名前から履歴まで消去」


「却下する理由はなし」

「むしろ加速すべき」

「師匠の笑顔を守るためだ」


 別のアマイロが立ち上がる。


「爆弾設置、バレなければ完璧」

「隕石落下、時間差で」

「毒入りお菓子もあり」


 さらに別のアマイロが腕を組む。


「視界から消す」

「風に飛ばす」

「星から飛ばす」


 ホワイトボードには「処理法候補」が書き出され、赤ペンで全て丸がつく。


「優先度高はどれだ」

「全案最優先だ」

「全て実行可能」

「迷う必要なし」


 地味アマイロが机に突っ伏す。


「……まず、新人に圧をかけて黙らせ…」


「甘い!!」

「それでは新人が生き延びる!」

「全案実行せよ!」

「迷うな!!」


 議長アマイロが立ち上がる。

「まぁ落ち着きなさい諸君」


そして議長アマイロがホワイトボードに書き込む。


 10人のアマイロが一斉に拍手した、ホワイトボードには“新人消去計画:コロスコロスコロスと赤文字で書かれていた。


 ――その瞬間、一気にアマイロの意識が現実に戻った、この間約0.03秒


アマイロ始動開始。

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この厨二病、世界最強の女魔術師成り 誰がなんと言おうと アキイロ @akiieodeizu

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