Remarqué

 私、怪談とか怖い話を読むのがめちゃくちゃ好きなんです。好きが高じて昔は2chのオカ板にも出入りしてたぐらいで。

 最近は心霊系youtuberとか怪談師のyoutubeチャンネルとかいっぱいあって、しかも今なんかホラーブームじゃないですか?毎日いっぱい供給があって精神的にかなーり充実してます。


 出社日の通勤時とか、家で作業している時とかは大抵、怪談師のyoutubeチャンネルや心霊youtuberの動画をかけ流してるんですよ。作業用BGMみたいな感じで。

 私、仕事の六割ぐらいがリモートで自宅出勤なんです。だからほぼ一日怪談を聞いてるような日もありますね。

 …ただ、一回だけちょっと怖かったことがあって。


 いつものように仕事中にランダムで動画を流していて、…もうどの怪談師が喋っていたのかわかんないんですけど、一本の怪談が流れたんです。


 どこかの空き家に、幽霊が出るという噂があった。

 管理されている物件ではあるが、警備が緩かった。

 数人の若者が肝試しで中に入った。

 そしたら、ある部屋の中で蹲っている女の姿を見て、逃げ帰った。


 …とまあ、正直言って当たり障りのない普通の怪談なんですけど。

 それで最後に「怪談師がこの空き家について調べてみたら、詳細は伏せるけど、かつてその家で実際に死者が出るような事件が起こっていたことがわかった、その家はいまはもうない」ってところで話が締められて。


 この話、めっちゃ怖かったんです。

 というのも、話の中で空き家の造りを説明する箇所があったんですけど、…こう、平屋で、玄関に入ると土間の向こうに長い廊下が伸びていて、その突き当りにキッチンとダイニングがあって、両側に扉が付いていて、そこに四つほど部屋があって、トイレと風呂場はダイニングの中にある扉の先にあって…というその家の造りが、どう考えても私が小学生のときに、親の出張についていくかたちで半年だけ住んだ借家と全く一緒なんですよ。

 明確な県の名前は言ってなかったんだけど…「近畿地方」って土地も一致していたし、何より家に入る前の…駅から少し離れた、川に近い場所にまばらに家が建っているところ、っていう家の周辺環境の説明も完全に一致してて。


 それも怖かったんですけど…いちばん怖かったのが、話の舞台が「今から三十年ぐらい前」って説明されるんですけど、私たち一家が住んでいた時期が明らかにその「若者たちの肝試し」の後なんですよ。

 私たちがその家に住んでいたのは二十年前ですから。


 …半年で地元に戻れるってことが分かっていたんで、とにかく家賃が安い家を借りた、らしいんです。

 当時は所謂「告知事項」ってのも緩かったんでしょうね。少なくとも私は何にも聞いてませんでしたよ。両親が気を使って言わなかっただけかもしれないけど…。

 築年数が古いから若干不便なところはあったけど、まあ半年住むぐらいなら別に良いかな、と思うような家でした。住んでいる間に変なことがあったかって言われると、全然なんですけど…まあ、シンプルに気持ち悪いですよね。

 そういえば話の中で「女が蹲っていた」部屋、私たちは物置かなんかにしていて、生活スペースとしては使っていませんでした。

 なんかそれも、この怪談聞くともしかして、って思っちゃうんですよ。両親が告知事項を知っていて物置にしたのか、直感的にその部屋を生活スペースにすることを避けたのか、それともただの偶然なのか…みたいな。


 いや、まあ、事件云々の話は流石に嘘かも知れない、とも思ったこともありましたよ。でも、「住んだ事がある家が怖い話の舞台になったらしい」ってところはどうしても動かしようがないし…。


 これ以降、「家」系の怪談を読んだり聞いたりするときは、「もしかしてこの話の舞台って、いま住んでるマンションなんじゃないか…」って微妙な邪念が入るようになっちゃって。

 特に「この物件、まだあるらしいですよ」なんてオチで言われてる話は、全然そのが可能性あるわけじゃないですか。全部の話が間取りを丁寧に説明してくれるわけでもないし。

 嫌なことに気付いちゃったなあ、って思いますよ。


 …まあ、普通に怖い話が好きな方が勝つんで、今でも毎日怪談聞きまくってるんですけど!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る