昔から憧れていたゲストハウス運営の夢が叶う。
主人公瑠唯がとんとん進む開業準備に心躍らせる所から物語はスタートし、夢が叶う奇跡も現実的な裏付けがあってこそというリアリティの中、壱岐についたしょっぱなから”喋る猫”に出会うという非日常。あっという間に引き込まれました。
猫は自らを神と名乗り、この島に災厄をもたらせる禍つ物を探してやってきたらしいのだけど、二人のやり取りはほんわか和みの要素満載。切羽詰まった危機感もなく読み進めていれば、ゲストハウスに訪れる少し変わった人たちとのエピソード。
昔仲良く遊んだ事もある男性との再会もあり、ここから恋愛パートなのかな? と思いきや、不自然なほど距離を取る主人公。
そんな感じで、ちょこちょこと彼女の過去を知りたくなる要素が出て来て、不穏な禍つ物の気配に先が気になりどんどん読んでしまいました。
神様たちの興味深い逸話が出て来たりとか、読み応えが多数ある中、どんどん物語は佳境に向かって盛り上がります。これまでの伏線が一気に回収される爽快感は読んだ人の特権かなと。
ゆったりした時間の流れる壱岐島。そこに『青嵐』という名の、新しくオープンしたゲストハウスがあります。
その宿には、看板猫よろしくオッドアイの白猫がいるんですが。
ここだけの話、その猫ちゃん、人の言葉を喋る神さまなんです……!
壱岐島の空気を肌で感じるような、読み心地の良い物語です。
白猫姿の神さま『でうす』とのやりとりもどこかコミカルで、ほっこりします。
新米オーナー・瑠唯の頑張りの背景にあるもの、どこか不思議なお客さんたち、壱岐島に近づいているという『禍つ物』。
ゲストハウスの日常にするりと滑り込んでくる違和感は、徐々に大きくなっていき——
終盤、それまであった数々の伏線がつながっていく展開は圧巻。
神話を絡めたストーリーも読み応えがありました。
未来に光のさすような、爽やかで優しい読後感が素晴らしいです。
胸に沁み入る物語。おすすめです!
瑠唯は故郷の壱岐島に戻り、家族から引き継ぐ形でゲストハウスを開業します。
東京で旅行業をしていた瑠唯。
自分のゲストハウスを開業できるなんて最高じゃない!楽しいお仕事小説の始まり!!
と、思いきや……。
瑠唯は、何やら事情を抱えている様子。祖母や幼馴染の男性の助けの手をやんわりと振り払い、一人で頑張ろうとします。
頼りたくない。その裏には、人と関わることの恐れがあるような……?
そんな瑠唯の前に、オッド・アイの白猫があらわれます。
本人が言うには、神の化身だそう。
本当に神様の化身なのでしょうか?
のんびりと過ごし、エサをねだり、祖母に甘える様子は猫そのもの。
ですが重大な任務があるようで、猫の気ままな生活をしながらも目を光らせています。
瑠唯が営むゲストハウス「青嵐」に、次々と集まってくる奇妙な客。
そして、幼馴染の男性が瑠唯に向ける不器用な優しさ。
ミステリーと恋の両方で、ドキドキしてしまいました。
丹寧さんは文章を書くのがお上手なので、読み応えがあります。神様の知識もあり、その世界も大変におもしろかったです。
夢のゲストハウスを開業しようとしていた瑠唯の目の前に現れたのは、「神」を名乗る猫だった。
「禍つ物から、島を守るためにやって来た。こんな姿で出てきてしまったので、お前の家で飼ってくれ」
「うちは接客業なので、猫は入れられません」
取り付く島もなく、神に対してそう言う瑠唯。壱岐島だけに。
だがここは猫島と呼ばれる壱岐島。あっさりと神は瑠唯の祖母を篭絡。瑠唯は猫に「でうす」と名付けた。
ゲストハウスを訪れる、様々な秘密を抱える客人たち。そこで起きる、不思議なことの数々。
そんな中、瑠唯は、雪の中で「誰かを探さなければならない」悪夢を見る。
それはもう二度と会えない、大切な人の夢だった……。
神代から伝わる伝承と、外国からの玄関口でもあった壱岐島。はたしてそこに潜む「禍つ物」とは。
伝承に裏付けされた、ハラハラドキドキのストーリーも気になりますが、今作品は壱岐島の描写も素敵で、旅をしているように思えます。ぜひ。