第二十話

 とある日、ここは真也の通う小学校、日が沈んで幾分か時間が経ち辺りが真っ暗になった、本来生徒は勿論教師もいない筈の時間帯である、にも関わらず、その校門に近づく5人の小さな人影が見えた。


「ねえ……本当にやるの……?」


「当たり前でしょ、何の為にここまで来たのよ。」


 校門に近付いてきたのは5人の女子生徒であった、背丈からして上級生らしい。


「けど……やっぱり怖いよ、止めとこうよ……」


 女子グループの一人は夜の学校の雰囲気に怖気づいてる様子だった。


「大丈夫よ、一人で行くんじゃないんだから……」


 そう言うとグループの一人は怖気づいてる女子の手を引っ張る。


「……よい……しょ!」


 女子グループは校庭に誰もいない事を確認すると、閉められた校門を乗り越えて校庭に入り、手に持った懐中電灯をつけると、夜の学校に恐る恐る入って行く。


『キャアアアーーーーーーー!!!』


 中に入って少し経った頃、まるで何か恐ろしい物に遭遇したような女子グループの悲鳴が響いた。



 そしてその翌朝。


「おはようみんな!」


 翌朝、麗華の元気な挨拶が教室に響いた、真也も一緒に教室に入る。


「おはよう、麗華ちゃん。」


「ねえねえ二人共知ってる?」


 クラスメイトの一人が挨拶を返し、もう一人が2人に話しかけて来る。


「何が?」


「昨日学校に幽霊が出たって話。」


 クラスメイトの女の子の話に、麗華と真也は思わず目を合わせる。


「幽霊って……どんな?」


「おかっぱ頭の女の子の幽霊よ、昨日の夜学校に忍び込んだ子が見たんだって。」


「忍び込んだ?」


 思わず素っ頓狂な声を出す麗華、真也も女子の行動を疑問に思ったのか、怪訝な表情になる。


「それでその幽霊なんだけどね、花子さんなんじゃないかって噂なの。」


「花子さんって……トイレの?」


 麗華の問いに頷くクラスメイト、麗華もトイレの花子さんについては知っているらしい、真也は全く知らないのか、ピンと来ていない様子だった。

 

「それで……その子たちはどうなったの?」


「警備員に見つかって怒られたみたい。」


「……そうなんだ……」


 ひとまず無事であることが分かった事で安心した様子の麗華。


「つーか、なんで夜の学校になんて忍び込んだんだ?」


「ちょっとした肝試しだったんだって。」


 真也の問いに答える女子、それを聞いた二人は呆れている様子で、麗華はため息をつき、真也は明後日の方向を見上げていた。


「みんな、ホームルームを始めるぞ、席に着けー。」


 担任の教師が教室に入る、そして教師の声に従い、生徒達が席に着く。


「起立! 礼!」


『おはようございます!!』


 日直の男子の言葉と共に、生徒達が大きな声で挨拶をする。


「着席!」


 一斉に席に座る生徒達。


「おはようみんな、早速だがみんなに伝えておきたい事がある。」


 全員に聞こえるほどの声で話す教師、生徒達は何事かと言った表情で耳を傾けている。


「昨日の夜、学校に5人の女の子が忍び込んだらしい、女の子達は警備員に見つかったらしいが、夜に出歩いて学校に忍び込むなんてけしからん事だ、みんなは真似しちゃいかんぞ。」


『はーい!』


 強い口調で忠告する教師、生徒達は大きな声で返事をする。


「後、トイレの花子さんがどうとかも言ってたな……先生が子供だった頃にも流行ってはいたが、ああいうのは殆ど嘘っぱちか勘違いだ、あまり真に受けないように。」


『はーい!』


「……」


 教師の忠告に対し、再び大きな声で返事をする生徒達、しかし真也は花子さんを知らないからか、黙って空を見ていた。



「なぁ麗華。」


「ん? 何?」


「トイレの花子さんって、なんだ?」


 休み時間、真也はトイレの花子さんについて麗華に尋ねていた。


「ああ、トイレの花子さんっていうのはね……」


 トイレの花子さんについて真也に説明する麗華、麗華はトイレの花子さんが学校のトイレに出る幽霊である事、昔から全国各地の学校で噂になってる事等を真也に話した。


「……待てよ、たしか幽霊って長い間放置するとヤバいんじゃなかったか?」


 真也は以前麗華から聞いた話を思い出し、麗華に問いかける。


「そうなんだけど……正直に言うと、花子さんについては私の家もよくわかってなくて……」


「そうなのか?」


「うん、地縛霊なら色んな学校に現れるのは変だし……複数の霊なら、容姿や名前が一致しているのもおかしいし……正直、私の家も、殆ど単なる噂だって認識なの。」


「そうか……ありがとよ。」


 話が終わったので自分の席に戻る真也。



 その後大した動きもなく、その日1日の授業が終わり、真也達は帰宅した。


「トイレの花子さんですかい?」


 自分の部屋で隠と話す真也、どうやらトイレの花子さんについて隠にも尋ねているらしい。


「ああ、何か知ってるか?」


「う~ん……あっしも噂程度なら聞いた事ありますが……詳しい事は全然わからないんすよね……」


「お前もなのか。」


「ええ、何分謎の多い怪異でやんすからねぇ、実在するのかどうかも……」


「そうか……」


「ところで、何故そんなことを?」


「学校に出たって噂になってな。」


 不思議そうな顔で問いかける隠、真也は学校で聞いた噂を隠に話した。


「ほうほう……ところで、その女の子達は何ともなかったんですかい?」


「ああ、麗華が会いに行ったみたいだけど、特に呪われてたりとかも無かったみたいだぜ。」


 それを聞いた隠は訝しげな表情になり、後ろ足で立ち顎に前足を添えて考え込んだ。


「……益々妙でやんすね……子供なんて幽霊ってにとっちゃ格好の獲物なのに何もしないなんて……」


 その時、部屋に近付く足音が聞こえたので、話を止める二人


「お兄ちゃん……あの……」


 香奈がオドオドした話しづらそうな様子で部屋に入って来た。


「どうした?」


「私……宿題のノート、学校に忘れて来ちゃったみたいなの……」


「そうか……それで?」


 恐る恐る打ち明ける香奈、香奈の話を聞いた真也は素っ気なく言った。


「お願い、一緒に取りに行って。」


 手を合わせて懇願する香奈。


「なんで俺が?」


 やや眉を潜める真也。


「だって……外、暗くなってるし……お父さんもお母さんも……今夜は遅くまで帰らないし……」


 真也が外に目を向けると、思ったより時間が経っていたのか、確かに薄暗くなっていた、香奈の言った通り、両親は外の用事により今夜は遅くまで帰らない。


「お願い……!」


 再び手を合わせて懇願する香奈。


「しょーがねえな。」


 面倒くさそうに頭を掻きながらも承諾する真也、香奈はパアッと明るい表情になる。


「行くぞ。」


「うん!」


 部屋を出る真也とそれに付いて行く香奈と隠、しかし三人はこの後、思いもよらぬ出来事に遭遇するのだった……

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Dragons second war〜異世界から生まれ変わった最強ドラゴンによる現代無双戦記〜 @saizu

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