恐慌

「そういえば、モナちゃんおめでとう!」

「はい?」

「今日からモナちゃんは1人前だよ!」

「…え、ありがとうございます。でもなんで…。」

「だって倒したじゃん、バカでかい竜。だからコウも、教育係終了でーす。」

「お疲れ様でしたー。」

「…お疲れ様でした…。」


 教育期間終了ということは、もう一緒にはいられないのだろうか。1人前と言われた嬉しさと戸惑いが交錯する。


「あ、そういえば俺、やりたいことあったんだった…。」


 コウがガラクタの山を漁り始める。そして取り出したのは…ピアッサーだった。


「ピアス開けるの?」

「うん。この間もらったから。」

「いつもらったんだよー。」

「先週…かな。ちょっとアクセサリーショップ助けたらお礼みたいな感じでもらった。あれ?このピアッサー壊れてね?」

「じゃあ無理じゃないの?」

「いや行けるだろ。こうして…。」


 ベキッ


「あ、壊れた。じゃあこっちでやるか。」


 そうして再び山から取り出したのはニードルだった。なんでもあるじゃんあの山…。


「気をつけろよー。」

「はいはい。」


 グサッ


 …なにかやばい気がする。本人は平然としているが、明らかに刺さりすぎているような気しかしない。ピアスを開けたことはないが、あの開け方は違う気がする。


「コウ大丈夫…?」

「え?うん。これちゃんと空いてんのかな…。」

「…あー!?お前なんでそんな刺さってたんだよ!今すぐ抜け!」


 さっきまでデスクにいたゲンさんもすっ飛んできた。

 ニードルが抜けると、コウの耳から血が垂れてきた。うん、しっかり空いてる!


「…あんまり痛くないんだけど。」

「それはお前の体質だよ。」

「いやこれ絶対空いてない気がする…。」

「きゃー!」

「おい2回も刺すな!しかもミスってるし!」

「コウもうやめた方がいいよ!あ、はいこれ!」


 手鏡を持っていたことを思い出して、すぐにコウに見せる。左耳に穴が2つ空いていて、血が流れていた。

 おー空いてる空いてると言っているが、血が出てる方が気になる!

 ゲンさんと2人できゃーきゃー喚きながら、コウの止血をしたり血だらけのニードルを処理したりした。もちろん本人はキョトンとしていた。


「これであってるのかな…。」

「おー!ピアスだー!」

「結局左側に2個つけたんだな。」


 調べたところ、コウが開けたのはヘリックスというらしい。ピアスっていろんな種類があるんだなー。それにしても…。


「…不良?」

「それな!ヤンキーに見えてくるー。」

「え?そう?」


 元々地毛が明るすぎるのもあって、ピアスをつけると完全に不良のように見えてくる。どうしよう。コウがどんどん不良になっていく…!

 さて、私の本題はこれではないのだ。話を戻そう。

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