第9話 公開裁判
パピは証拠や証人を集めてミネルバ嬢の弁護士の役割を受け持つことにしました。王侯貴族に認めてもらうためにここでもお婆様の名前を利用させてもらいました。
ミネルバ嬢の弁護士にはこの国で最高と言われている高名な弁護人を御父上が頑張って雇っていました。
パピは予めその弁護士と詳しい打ち合わせをして対策を練りました。
「只今よりミネルバ嬢によるルピナス嬢いじめ問題の裁判を始めます。まず初めに、原告側の主張を代理人のエジェンド氏に発表していただきます」
「………………ということで極悪非道なミネルバ嬢を厳罰に処すことを願うものであります」
「被告人。言いたいことは有りますか?」
「只今の主張は全て事実無根であり被告人の無実を主張致します」
「原告人、まずはミネルバ嬢がルピナス嬢を噴水のプールに突き落とした件の証拠を提出してください」
「その時その場所に居た目撃者を呼んであります証言者をここに」
「私はこの目でミネルバ嬢がルピナス嬢を突き落とした瞬間を目撃しております」
ルピナスが自らプールに飛び込んだ時に
「ミネルバ嬢貴方何と言うことを!」と。まるでミネルバ嬢が突き落としたかのように叫んだあの王子の取り巻きの一人です。
「意義あり。こちらにはその時の映像と音声を記録した本人と魔道具を用意してあります。披露しても宜しいでしょうか?」
「許します、披露して下さい」
「有難う御座います。皆様、会場の正面の壁にご注目ください、事件当日当時当時刻の現状をこちらに居る魔法師のパピ嬢が記録したものです。ではパピさん再生開始してください」
「了解です」
みなが注目する正面の壁に噴水の前でミネルバ嬢を糾弾しているバルトン王子とその取り巻きとルピナス嬢が映し出されました。
「い、何時の間に?」
「噓だ!あの時そこの少女は居なかったはずだ」
「はい、あの時あたいはこの様に姿を消しておりました」
突然パピの姿が消えて会場は騒然としました。
「こ、この記録が本当だという証拠は?」
「そう言うだろうと思って王宮魔法師団団長さんに証言者として来ていただいております。団長さんどうぞこちらに」
「王宮魔法師団団長のケイデンです。私が調べた結果、この映像と音声は本物だと保証します。こちらのパピ嬢の創造魔法です。因みにパピさんは元王宮魔法師のパポッテイー様のお孫さんです」
「「「「うおおおおおおお」」」」
パポッテイーの名前が出た瞬間会場がどよめきました。お婆さんはこの国の貴族の人達に広く名前が知られているようです。
「この国の救世主様のお孫さんならこの位の魔法なら創作出来るであろうのう」と国王様。
王子様とルピナス嬢、それに先程証人台に立った男子生徒の顔が幾分青ざめているようです。
そして、グレイウルフ騒動からルピナス嬢がプールに落ちた場面になると異論が湧き起りました。
「何だ!ルピナス嬢は自分で叫んで自分で飛び込んだではないか!」
「ミネルバ嬢は一切不審な行動などしていないぞ!」
「それに先程証人台に立った男は事件の起きた瞬間など見ていなかったぞ、遠くのグレイウルフに男が襲われている方を見ていて
ルピナス嬢が叫んでプールに飛び込んだ後で振り返ってミネルバ嬢がしたかのように叫んでいたな。あたかも最初からミネルバ嬢を陥れるような言動ではないか!」
「そうそうあの時グレイウルフに襲われた生徒はルピナス嬢に頼まれて、念話で合図が会った時に召喚獣のグレイウルフを召喚したそうですよ。ウルフはとても慣れていて、召喚者にじゃれついていただけだと言っていました。考えてみれば、それはみんなの視線を僕に集中させる為だったのではないかと思います。証言が必要なら是非とも証人尋問して欲しいと言っておりました」
とミネルバ嬢の弁護士さんがそう言ってさらに言う。
「このようにプールに落ちたのはミネルバ嬢のせいではなく、ルピナス嬢自ら飛び込んだのが明白であり、ミネルバ嬢の無実は明らかです。裁判長の公明正大なご判断を願うものであります」
「そ、そんな寄ってたかってわたくしを悪者にしたてあげようとするなんて酷過ぎます。バルトン王子様何とかしてくださいませ」
ルピナス嬢はよよよと泣き崩れます。
そこへパピが爆弾を落としました。
「ルピナス嬢ことインデヌートバフアシアさん、貴女バンデイール王国の諜報部所属の諜報員ですよね。聞かせて頂きましょうか。貴女がバルトン王子様に近付いた訳とミネルバ嬢を貶めようとした訳を!」
「え!どどうして私の実名と正体を……」
その先は国家を揺るがす一大事件として扱われることになり女諜報員インデヌートバフアシアとバルトン王子様とその取り巻き4人は地下牢に入れられて国家反逆罪の疑いで厳しく取り調べられることになったそうです。
「今度はパポッテイー様のお孫さんにこの国を救って貰う事になったのではなかろうか……のう公爵殿。我がバカ息子の為にミネルバ嬢にあらぬ疑いをかけて苦しませてしまった事深くお詫び致す、これこの通りだ」
「国王様、頭をお上げください」
「すぐにも、ミネルバ嬢とバルトン王子の婚約は公の場で解消しよう。それでよろしいかな?」
「はい。ありがたき幸せに御座います」
そう答えたミネルバ嬢の顔は晴れ晴れとして美しく輝いておりましたそうな。
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