第8話 新たなる助けを呼ぶ声

 パピは一旦自分の世界に戻ってきました。戻ったのは良いけれど魔のトライアングルの【花鳥亭】では無く、人間世界のアメジスト王国の王都にいます。

 王国の王族貴族の子弟子女が通う【アメジスト王立学園高等部】の学舎区画に有る学園と寮との中間に位置する公園の噴水前に男女7人が集まって何やら騒いでいるみたいです。

パピが助けを求める声を聞いたのは十中八九この中に居る女生徒の1人でしょう。何時ものように姿を隠して見守っています。

そして新たに作った魔法【撮影魔法】で記録しています。そうです。スマホの機能を魔法に作り替えたのです。パピの実力は凄いのです。


 「ミネルバ、そなた今日もこちらのルピナス嬢を虐めたそうだな、そなたには人の心と言う物が無いのか?」

キンキラキンの立派な服装の男子生徒がミネルバと言う女生徒を糾弾しています。

「わたくしが虐めなどした覚えはございません。バルトン王子様一体何を証拠にそのようなことを仰っておられるのでしょうか?」

 「ええい、この期に及んで見苦しい。ここにいるルピナス嬢が泣きながら訴えてきたのだぞ。これ以上の証拠が有るものか」

パピは呆れていました。この王子バカなの?

一方的に特定の者の言う言葉を信じてもう一方の言葉を信用しないなんて!

 というより、ミネルバ嬢を何としても悪人に仕立てようという悪意に満ちています。

パピはミネルバ嬢の心を覗いてみました。

 (わたくしという婚約者が有りながら、ルピナス嬢に心を移したバルトン王子様、彼女の色香にメロメロなのですわね。取り巻きのご学友の方達も彼女のボデイタッチやら甘え声に魅了されちゃってるわね。わたくしたちのように結婚するまで貞操を疑われるような行いをしないように努めている彼等の御婚約者を裏切って、皆さん(自分だけがルピナス嬢に愛されている)と思い込んでいるのだわ。ルピナス嬢の掌の上で転がされているのが判らないのね。気の毒な人達ですこと)

と言うことらしいです。

 と、ルピナス嬢が念話を発したのが感じ取れました。すると離れている場所で、魔物が一人男子生徒に襲い掛かりました。グレーウルフです。「ギャー!」男子生徒が大きな悲鳴を上げました。

 みんなの視線がそっちに向いたときルピナス嬢はミネルバ嬢の傍に走り寄り自ら噴水のプールに飛び込みました。

「キャー、ミネルバ様止めてー!」

と叫んで!

ザブーン!!

 バルトン王子とその取り巻きはルピナス嬢がプールでばちゃばちゃしている所を目撃しました。

「ミネルバ嬢貴方なんということをなされるのか!」

取り巻きの1人が叫びます。

そう、まるでミネルバ嬢がルピナス嬢を突き落としたかのように。

「ミネルバ貴様をルピナス嬢に危害を加えた現行犯で逮捕する」

バルトン王子とプールから助け上げられたルピナス嬢はニヤッと笑ったのをパピは見逃しませんでした。

とんだ三文芝居ね。

パピはミネルバ嬢に念話で話し掛けました。

『今は大人しく我慢してね。国王様やこの国の重鎮の方々の前で

無実を晴らしましょう』

『でもどうやって?』

『安心して、あなたにはあたいや沢山の味方がいるわ。ああそうそう、あたいの名前はパピルース。パピって呼んでね。貴方の助けを求める声に呼ばれて来た魔女っ娘よ』

『ああ、魔女っ娘女神様、有難うございます』

 パピは王子やルピナスの思い通りになる事防ぐため公の場で無実を晴らす為の工作を始めました。もたもたしてると、密室で罪人にされてしまいます。パピの言葉を公爵様が信じて下さったのはパピの胸に飾った、お婆様から授かったペンダントと、お婆様の名前(パポッテイー)を聞いたからでした。

 お婆様はアメジスト王国の元王宮魔法師で幾度となくこの国の危機を救った恩人だということでした。

(お婆様ってとても凄い人だったんだ!)

パピは驚くとともに尊敬の念を抱くのでした。


★★★★★★★★★★★★★★


水曜日、木曜日、金曜日の投稿はお休みします。

次回は土曜日に投稿予定です。

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