第3話
陸上部の一年生たちが腹筋をやっている横を通っていくと通用門がある。
学校は大通りから一本外れたところにあって、いつも閑散としている。反対に、大通りはいつも若者たちで賑わっていて騒がしい。私は朝も帰りもこの道を使う。駅まではこの道をただひたすらまっすぐ歩けばいい。
暑さで溶けてしまいそうだ。私も、さっきもらったクッキーのチョコも。
太陽はまだギラギラと光っている。露出した腕や脚が焼かれていく。
街路樹の下に立つと、私はパッケージをあけてクッキーを取り出した。写真を撮ることもなく、そのまま口に運ぶ。
クッキー生地はサクッととろけた。ココアの苦味が口いっぱいに広がる前に、チョコレートの甘さが私を包む。どちらかが主張しすぎることはなく、互いが互いを引き立てる味わいだ。
こんなクッキー、初めて食べた。
作業で消費したカロリーを一気に補給する。普段はおやつなんて食べないけど、今日はいいんだ。なんとなく食べたい気分だから。アイスでもなくガッツリしたパンでもなく、一口のクッキーが食べたい。
私は空き袋を胸ポケットにしまった。
「おいしい」
「友希ちゃんまた明日ね!」
同じクラスの、南ちゃんだ。
後ろから駆けてきて、そのまま、先へ走って行った。
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