第8話 起き上がれブタキャラ、ベッドから!
日曜の朝。
「いつまで寝てるんだ、早く起きろ!」
「ぐほお!?」
寝起きのベッドを襲撃してくるパターン!?
目を開けると、オレの腰に乗ってる神様が!
「うう……」
「なぜ泣く!? そこまで強くやっとらんぞ」
「憧れのシチュエーションすぎて……夢が叶いました」
「しょうもない夢だな……」
「その死にぞこないのセミを見るような目も最高です……」
背の低い女子に、屈服されながら蔑まれる。
こんなに嬉しいことはない……。
生涯に一片の悔い無し!
天から光が振り、小さな天使たちがくるくる回ってフライング。
「昇天してる場合じゃないぞ。今日も学校ないんだから」
「そうですね」
MPを貯めなきゃいけないからね。
1日中家でゲームやってちゃ駄目なんだよね。
「1日中家でゲームやります」
「駄目に決まってんだろ!」
「ぶふぉー!」
馬乗りからのビンタ!
たまんねえええ!
左頬がじんじんとするのが、もうね。いや、最高ですね。
相手が神様じゃなかったらMP相当貯まるのにね。
でもこの、MPにならないところが贅沢なんだよな……。
「今ので十分だな?」
「今ので十分です」
ご褒美をもらいすぎたので、モチベーションがすごいぜ。
腰に神様がまたがってるという、贅沢すぎる状況で本日の行き先を考えます。
服は買ったから、次はどこに行くかな。
コンセプトカフェはビジネスだから罵られてもノーカンだった。
そう考えると、容赦なくボロカスに言ってくれる素人ってことになるな。人に文句を言ってる人……
「老害か」
「ほう」
クソジジイとかクソババアから、ボロカスに言われに行くぞ。何言ってるかわからないフガフガした老人に会いに行こう、老人ホームへGO!
「いやだ―――――――!」
「自分で言ったんだぞ」
なんでジジババにボロカスに言われなきゃいけないんだよ。ヤダよ。
ジジイに怒られて興奮するわけ無いだろ!
ドMを舐めるなよ?
まだ子どものほうがいいじゃん。子ども……
「それだ―――――――!」
「子どもにはボロカスに言われたいのかよ」
言われたいでしょ。そんなもん。言うまでもないでしょ。リボンめっちゃつけてる女児からボロカスに言われたいでしょ。よし、幼稚園へGO!
「誰もいねえ―――――――!」
「日曜だからな」
学校が休みのときは幼稚園もやってねえのかよ!
誰も遊具で遊んでねえじゃねえかよ!
じゃあ、どうしたらいいんだ!
「あっ、産婦人科とか!? 生まれたばかりの赤ちゃんなら日曜でもいるよね!?」
「赤ちゃんに人を馬鹿にする心あるわけないだろ。バカか」
「バカだ―――――――!」
赤ちゃんに罵倒されるのはムリだー! バカでもわかることだー!
「どうしたらいいんだ……女児……ツインテールリボン女児に踏まれるためにはどうしたら……」
「いつの間にか妄想が具体的になっててキモいな」
「ありがとうございます!」
「褒めてないから。本当に思ってるだけだぞ」
「ありがとうございます!」
「いや、お前が本当にキモいんだって」
「ありがとうございます!」
こんなただのモブだった俺が、ここまで言われるようになるとは……
「いや、周囲にバレてなかっただけで中身は心底気持ち悪いぞお前」
「そんなあ……へへへ」
「もちろん褒めてないぞ」
褒められるより、けなされる方が嬉しい。だからなんだよな。優しい神様。
「いや、そういうわけでもないが……まあいいか」
大きな二重の目を、ジトりとさせる。うーん、この表情。好きです。長くて整ったまつ毛一本一本が、俺を見下ろしているよ。
「お前は幸せそうだな」
「神様に出会ってからずっと幸せですよ」
「そりゃ神様冥利に尽きるな」
俺より信仰心の厚い教徒いないと思うよね。
「そんなことはないけどな」
さすが神様、俺以外の人間にも優しい。
「いいから早く行く場所決めろよ」
「あひん!」
生足で蹴ってくれたぞ! くぅ~、なんて可愛らしい足で、なんと丁度いい力で蹴ってくれるのか。
少しの毛もなく、白くて美しい肌。適度な筋肉と、柔らかい肉感。キックではなく、足で強めに押すようなやり方。すべてが完璧すぎる。
これが神か。
「神をなんだと思ってるんだ……」
もうちょっと余韻に浸りたい。
「早くしろっての」
かかとで踏まれるのもいいが、足先でこづかれるのがこんなにいいとは……。はあ~。ふぅ~。
「……」
あぁ~、呆れ果てた目が最高すぎるぅ~。はふぅ~。んほお~。
「消えようかな」
「オーマイゴッド!」
「確かにお前の神だが」
俺の神……。
なんとありがたいことだ……なむなむ。
「そりゃ仏様だろ」
ウチの神様、ツッコミ上手だな。
さて、呆れられるのは嬉しいが、いなくなったら淋しいので、頑張らないといけません。
日曜に女児に会える場所。
なんという難問だ……。ぐぬぬ。
「普通に近所の公園に行けばいるだろ」
「公園!?」
その発想はなかった!
まさに神がかり的発想!
「普通にわかるだろ……お前、別に馬鹿じゃないはずなんだけどな……」
「いや! 馬鹿です! 愚か者です! どうしようもない低能です! 園児でもわかることがわからないんですから! どうぞ罵ってください!」
「いいから公園行って来い」
「あっ」
腰の重みが、フッと消えてしまった。
なんと幸せな時間だったんだ……。1日中ゲームする休日なんてもう来なくても構わないぜ。
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