第28話 『ちんもくステーション』 その12


 『もしもし、おらだ。ついに、お呼びがかかった。これから、地獄特急に乗るだ。あの占い師は、死神の一種だな。なに、おらは、現世で悪事ばかりしていたから、当然の報いだ。あんたも、よく考えてくらさい。楽しかったよ。ありがとう。地獄には来るなよな。』


 『ちょっとまって。あっ。』


 『ぷち。』


 ぼくは、あ然となりました。


 しかし、ふいに、窓の向こうで、ごお〰️〰️っ、という音がしたのです。


 反射的に窓を見ました。


 その窓は、木の板で封鎖されていたのですが、良くみれば、小さなすき間が開いていたのでした。


 そこから、外を覗いてみて、すぐに分かったのです。


 それは、ホームでした。


 ぼくたちが降りた、あのホームなのです。


 おじさんがポツンと立っていました。


 なにか、電話みたいなものを握っていましたが、それを、ホームのゴミ箱に投げ入れたのでした。


 そして、来たのです。


 真っ黒な棺桶みたいな汽車でした。


 しかし、そのお顔は、パンダさんだったのには、ひっくり返りそうになりました。


 おじさんは、ちょっとこっちを見て、にこっとしたようにも見えたのでした。


 それから、その漆黒の客車に、ひとり、乗っていったのです。


 ショパンさんの『ピアノソナタ第2番』が、ホームに流れました。


 その荘厳な雰囲気の中を、汽車はゆっくりと滑るように発車したのです。


 それは、おじさんとの、永遠の、別れだったのです。




         🐼🚂🐼














 


 

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