第26話 『ちんもくステーション』 その10
しかし、占い師さんは続けました。
『あなたが、とり得る方策はふたつです。みっつめは、あるかもしれないが、わかりません。ひとつは、つまり、ここにとどまること。ここは、夢の世界でも孤立しています。ここにいれば、現世のあなたは、死ねません。永遠ではあらませんが、少なくとも一億年は生きられます。ふたつめは、この駅から出て行くことです。すると、現世のあなたは、死ぬことができます。』
『なら、どうなりますか?』
『めでたく、現世から消え去るでしょう。』
占い師さんは、立てていた不思議な棒を机に置きました。
『では、おしまいです。』
キオスクのおばさんが、サービスチケットを4枚差し出しました。
『ありがとうございます。あ、あなた。ちょっと、お話ししたいことがあります。ふたりだけで。』
占い師さんは、おじさんを呼び止めたのです。
『おら?』
『はい。』
『わかった。ああ、ふたりは、帰っていてください。』
ぼくとキオスクのおばさんは、なんだかすごく気になりながらも、ホテルに帰ったのです。
🏨✨
自室にもどったぼくは、ベッドに仰向けにひっくり返りました。
『占いは占いだからな。誰にも未来は分からない。予想は可能でも、予知ができる余地はない。しかし、ここは、夢の中だよな。ほんとにそうなら、なにが起こってもおかしくはない。ぼくは、かつて、‘’ねたりあーさん‘’ のおはなしを書いたが、そのあたりは、あいまいなままデータの中に沈んでしまって、いまは、どこにあるのかさえ、分からない。でも、さっきの占い師さんは、なんだか知っている人みたいな気はするよなあ。誰かと通信していたような感じがした。まてまて、そうだ。ぼくは、小さなラジオを持っていたはずだ。いつも、かばんに入ってるんだからな。』
そこで、ぼくは、久しぶりに、かばんの中をごさごさ漁りました。
『あった!』
それは、小さな小さな、日本製のアナログオールバンドラジオです。
『なんで、いままで気がつかなかったのかな?』
それで、ぼくは、中波の530Khzから、まずは、ダイヤルを回し始めたのであります。
一番、普通の放送があり得る場所です。いや、でした。
📻️アーアーキコエマスカ、
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