小話 伝授

「君に合いそうなものがあるんだよ」

 そう切り出され、地下室に向かう。

 末本さんは一振りの刀を取り出した。受け取れば、ずしりと刀らしい重さを感じる。だが、少し抜くとと何か違和感を覚える。

「それは知り合いの刀鍛冶が作った、なんというか試作品なんだ」

「見た目というか、外的には模造刀。ある軽くて軟い合金でできていて、刀身が分厚いけど何かに当てればすぐ歪み折れる。だけど、それを形作る合金は霊力の通りがいい。纏わせれば切れ、うまくやれば斬撃が飛ばせる」

「はぁ⁉︎」

 斬撃、その言葉に驚きを隠せない。

「まあそう思うよねぇ。それ貸して」

 手渡し一歩下がれば、末本さんは抜刀の構えをとる。そして一振り。突風が吹き、何か鞭のようなものが壁を叩く音が響く。壁には薄く傷がついていた。

「霊力をそのまま飛ばすから燃費は悪い。でも君はむしろ都合がいいんじゃないかな?」

 背中にじとりとした緊張を背負う。

 すごいと思う。それと同時に恐ろしいとも思う。

「……確かに、魅力的だと思います。だけどこれを手にしていいものか」

「手に余る? 手段は多いに越したことはないと思うけど。……斬撃を飛ばすことは曲芸のようなものだし、切るのも一朝一夕ではどうにもならない。どうだろう、責任というものは技術を身につける中で負うということは」


__闇雲に纏わせればいいってわけじゃない。それじゃ折れなくても切れない。鈍器だよ。

__その感じで飛ばそうとすると爆ぜるよ

 末本さんの言葉を受け止めて、繰り返し挑戦するも、どうも感覚が掴めない。

「一旦休憩しようか。力押ししても刀がダメになってしまうし。希ちゃん呼んでくるから休憩してて」

 左手から切先にかけて帯びた霊力がそこに留まって散らない。何か熱いというか、不味いことだけわかる。刀から手が離せない、離してはいけない。

「__ゆっくり息を吐いてください」

 刀を固く握る手の上から白い手が重なる。

 だんだんと緊張がほぐれていく。刀から外れた手を、握っては開く。ようやく手が戻ってきたような気がする。

「ここ立ち込めてますね。しばらく居てもいいですか?」

「いいよ」

 そんな会話が側でされていても、頭に入ってきていない気がする。

「さて、どうする、今日はやめておく?」

「そうします」

 彼は慰めるように肩を叩いた。

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