第33話 ネッター、家を買う

無事に着きました。そりゃ僕より運動神経いいから、心配するまでもなかったな。

「「おおー」」

普通の人による、普通の人の案内。のはずだ。

みーちゃんのしっぽは見えないし、ゆきちゃんは姿を隠している。


リフォームはバッチリ。外見はペンション、でも内装は普通の一軒家だ。

「最近は非現実感よりもくつろぎを好まれる方が多いので、1階は普通の間取りにしています。2階は屋根裏部屋をロフトにして天井を高く開放的に仕上げました。露天風呂があったのですが、温泉が出なくなったので、子供プールか池に転用できるように循環設備だけ残してあります。」


「この辺に住んでいる方っているんですか?」

「今はほとんどいません。公共温泉の従業員の方くらいですかね」

「公共温泉はまだあるんですか?」

「はい、宿泊施設付きのが一つと、銭湯みたいなのが一つ。宿泊できる方はそれなりにやっていますが、銭湯の方は住民が減って苦戦しているようですね。」


「(どうかなネッターさん?結構良いよね)」

「(うん、街中だとこの設備でこの価格はあり得ない。別荘というより郊外ベッドタウン扱いだね)」

「(空気の匂い、火山の熱水源に似てる。本当にどこか繋がってると思う)」


「とても良いですね。決めます。契約に進めて頂きたいです。」

「ご検討ありがとうございます。それでは、事務所に戻って審査書類にご記入をお願い致します。」


「はぁあー。人生で一番大きな買い物をしてしまった…」

「でも、あれならネッターさん結婚しても暮らせるよ。足があれば街も通勤圏内だし」

「結婚しないでフィールドワークとリモート報告でも暮らせそうだしな!」

ぐっさ。あたたたた。

それなら一生塔の野営ベースから出ない。もう引きこもる。くすん。


「んじゃ、夜中にスラりん連れて、公共温泉とかいうヤツの源泉から熱水源に行けるか試してみる。んで、うまく行ったら、あのペンションの井戸に抜け穴作ればいいんだな?」

「そう。熱水直接でなくて井戸水経由でルート作るだけなら行けると思うよ」

「よっしゃ!プールダンジョンー♪」

「溺れそうだから水は張らないよ…」


さて、用事も済んだし、買い食いでもして帰るかな。

「そういえば、君達の好きな魔力飴のお店に寄って、お土産買って帰ろうか」

「え!ここにあるの?」

「行きたい行きたい!」


「ちょっと歩くけど、君達平気だよね。あとみーちゃんは人見知りの親戚の子って感じでお願い。ゆきちゃんは隠れていられるかな。」

「「うん、頑張るから連れてって!」」


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