第34話 魔力飴の半分は優しさで
「ここだよ」
「すっごくイイ匂いがする!」
「ゆきちゃんは入口から見るだけだからね。みーちゃんも人見知りな子供設定、忘れないでね」
「「はーい」」
カランコロン。ドアを開ける。
珍しく、おばあちゃんが一人で店番していた。他のお客さんはいない。
「いらっしゃい」
みーちゃんが入口で入るのを戸惑っている。
「ごめんなさい、この子人見知りで。入っても大丈夫だよ。」
「おや、そうかい。ちょっと待っててね。」
おばあちゃんは入口の札を準備中に変えて手招きした。
「大丈夫、入っておいで。」
お言葉に甘えて僕らは中に入る。ゆきちゃんもちゃっかり入ってきた。
みーちゃんに説明するように見せて、二人にお菓子の説明をする。
「これが魔力飴。口の中でフワッと溶ける、人気の飴。」
「これが金平糖。ここのは手作りでじっくり時間をかけて作るらしいよ。」
二人ともショーケースに張り付いて、キラキラの宝石達をまじまじと見ている。
「自分の分とお土産の分を選んでね」
みーちゃんの自分用は、迷った末に、いろんな味が入っている小さな飴に決まったようだ。
ゆきちゃんは金平糖に釘付けだ。
「味見してみるかい?」
おばあちゃんがミルクの飴を差し出した。
「ありがとうございます。こういうのは、一つもらって食べてもいいんだよ」
みーちゃんに説明する。ゆきちゃんは姿を隠しているから、残念だな。
みーちゃんはおずおずと飴を一つ取り、口に入れる。
ブワッと目が開く。美味しかったらしい。きっと尻尾も膨らんでるな。
ゆきちゃんは羨ましそうにみーちゃんを見ながら、グッと我慢している。
我慢できて偉い。後で買ってあげるからね。
「そっちの子も、いいんだよ」
おばあちゃんがゆきちゃんの方に飴を差し出した。
「えっ」
「人見知りなんだろ?おばあちゃんは向こう見ているから、大丈夫だよ」
「…いいの?」
「いいよ。うちの飴の匂いがするね。いつも大事に食べてくれてありがとうね」
「!!」
ゆきちゃんも一つもらって口に入れる。
ふにゃっと溶けた顔をしている。
「…おいしい。ありがとう。おばあちゃんの飴、食べるとほんわり幸せな気持ちになって、大好きなの。美味しく作ってくれてありがとう。」
ゆ、ユキグモが知らない人と喋った!
「どういたしまして。いつでもまたおいで。」
「ありがと!!」
ゆ、ユキグモがお礼を言った!こんなレアなことって!
珍しさに思わず目を白黒させる。
「子供は過保護にしなくても成長するもんだよ。おばあちゃんが保証するよ」
笑われてしまった。
結局、ミックス飴と、金平糖と、ミルクの飴を買った。
二人ともとっても幸せそうだ。ユキグモ迷彩を見破られた衝撃も吹っ飛んだ。
おばあちゃんってすごい。
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