第23話:希望の船
戦闘から6時間後、外はすでに暗かった。街の中心にある建物、通称ホワイトハウスの会議室で俺らは集った。動ける全ての人間を集めて作戦について語った。この建物の命名はヤマトが行った。ここは国家運営する時のために色々と重要な施設が用意されている。国王の間や会議室が特徴的だ。
「この島から敵地までは近くて4時間です」
「6時間過ぎたから敵はもう安全圏、か」
広げた地図をみんなで囲いながらリチャードと俺は言った。地図には俺たちのいる島と月光国に石を置いた。リチャードは赤い石、敵の船を表すコマを取りとある位置に動かした。
「ここに一つ海軍基地があります。主に海戦中の修理や補給、治療を行う前線基地です。今回の戦闘では彼らにも負傷者は多数出たと考えた場合、彼らはまずこの島で治療を行い、朝まで休息している事でしょう」
「今向かえば十分に間に合うのか」
「はい。ただし、我々の戦力は大幅に削られてしまっています。鹵獲した敵船に仕掛けられていた爆弾によってオウガ様とガイム殿、その他物資搬入を行っていた船乗りも数名重傷を負い、今も昏睡状態です」
リチャードの話だと、敵将オウエンはわざと敗北し、自身の船を自爆させたらしい。甲板にいたガイムとオウガはかろうじて一命を取り留めたが、爆発は近くに来ていた俺らのガレオン船にも被爆した。唯一の救いは致命傷に至らなかったという事。
「タケル殿、ここは俺ら鬼族も参戦させてもらう」
「いいや、戦闘は極力避けたい。夜襲をかけるといっても、戦力差がありすぎる」
「でもそれでは死んでいった同胞たちが…!」
「お前らが死んだら元も子もないだろ…!死者を弔ってやれるのも、覚えておけるのも、俺ら生者だけなんだ」
置き場のないこの怒りを、俺はただ握りしめるだけだった。これで失敗すれば、俺らはまたあそこへ帰ることになる。でも成功しても奴らはすぐにまた来る。いつまで続けるのか?いつまで続けられるのか?もう、負ける未来しかないのか…
「タケル、私に選ばせてくれ」
部屋の端っこで背もたれていたアーチャーが名乗りあげた。
「敵の要塞に侵入し、見つからずヤマトたちを回収する。つまりは隠密任務だ。私と狩猟班は日常的にやっている事だ」
「任せていい?」
「あぁ。出発は30分後、船で待っている」
俺たちは会議室を後にした。俺はまず武器庫に赴き、剣を手にした。そしてふと思った、もし俺が魔法やら魔術やらが使えるならなんであの日、選別の時に触れた石は反応しなかったのか?俺がいくら考えてもわからないことだ。帰ったらレンに聞いてみよう。
船へ向かうと、所々修復された跡があった。これまでとは比にならないほどの激戦だったのだろう。崖と船の渡ばしに数人集まっていた、近づいて見てみるとアーチャーたちだった。向こうも俺に気付いたのか、視線が集まった。
「彼らが君の選んだ人たち?」
「あぁ、大半は狩猟班から、あとは鬼族の中でも優秀な人材を数名」
アーチャーに懐いていたあの男の子二人の姿もあった。名前はヤマトが付けてたな、確か… スイセイとリュウセイだったか。この二人は兄弟だってアーチャーから聞いた、顔は確かに似てるが雰囲気がだいぶ違う。
「この子達か?大丈夫だ、まだ幼いが実力は確かだ」
「まぁアーチャーが言うならそうなんだろうな」
あとのメンツは狩猟班からメクボ、鬼族からカズキとタマキが集まっていた。二人とも大事がないことに安堵した。タマキは小柄な鬼族であんまり喋らない。
船からミツが降りてきた。
「船はいつでも出航可能です。片道2時間、準備はできてますかい?」
「うん、すぐにでも行こう」
船員はミツとシュウジのみ、あまり多すぎると見つかるリスクがある。船内には必要最低限の物資だけが積まれていた。
「正直、おりゃ反対だ。リスキー過ぎるぜ?羅針石も無いってんじゃあ、航海の難易度は桁違ぇだ。こっちに来る時の比じゃねぇぞ」
「羅針石がないのなら星を見る、昔からそうしてきた。シュウちゃん、いつもと変わらないよ」
「バッ…!その呼び方辞めやがれ!」
甲板に上がると何やらミツとシュウジがイチャついてた。これはもしかするとそういう関係なのか?そうだとしたらまぁ喜ぶ人間は一定数いるだろうな。それにしてもミツの顔は少し女性っぽいっていうか… どっちでもありそうな顔つきではある、中性的な顔って事かな。
「あ、タケルくんじゃない。出航の準備はできてるよ」
こちらに気づいたミツが話しかけてきた。さっきまでの会話を盗み聞きしてたなんて言えない。少し気まずかった。
「それと、さっき船長から伝言預かったんだ」
オウガからの伝言は以下だ。
敵の前線基地の名前はカイジョウマル。小さめの島をぐるりと壁で囲ってることから命名された。ヤマトたちが囚われてるとしたら地下の牢獄。それとオウエンたちは俺らの船が沈んだと思っている。
オウガは伝えるだけ伝えてまた寝たらしい。
「そうか、何から何までオウガに助けられてばっかだな…」
感傷にしたっていると崖の方から声がした。マキだった。
「タケルくーん!必ず、ヤマトくんを連れ帰ってね!」
「うん、任せて!」
そうして俺らはカイジョウマルへ向けて航海を開始した。必ずヤマトたちを連れ帰るという決意の元、船は大きく揺れ出した。そうだな、この船は…
「ホープ。この船はホープ号と命名しよう」
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