第14話:始まりの一歩
いざ建国、と言ってもやることは地味だ。まずは全員分の食料確保と住居の建設、それから島の探索をして視野を広げる。まだ本格的に政治とかしなくてもいいので、実質村みたいな感じになっている。フソウのじっちゃん、名前を忘れたとかで俺がつけた、は大工としての経験と知恵を若いものに伝授しながら家を建てている。工具は船にあったものだけを使ってるから心許ないがなんとかやってる。
「違う違う!それは支柱じゃ!よいよい!そっちの屋根はあとでワシがやる!」
まぁなんとかなるだろう。アーチャーとリチャードは数人を連れて森に潜った、今晩の飯を調達してるのだろう。オウガは20人ぐらい集めて船乗りの基礎を叩き込んでる。ナガトはと言うと… 仮小屋で寝ている。
「そういえばここではどんな植物が育つんだ?」
非番だったリチャードに聞いてみた。
「ここの土地はあまりにも恵まれていないので期待するだけ無駄でしょう。ですが時期にいい土地が見つかるでしょう」
どこかぎこちない会話だ。なんだが気を遣われているような感じがする。
「別に敬語でなくてもいいよ」
「一応は国王と国民の立場、そうとはいきません」
そうか、俺は国王という立場になるのか。まぁ敬語で話されるのは悪い気はしないけどね。でも俺まだ10代なんだけどなぁ。
昼過ぎ、ヤマトとその他が遠征から帰ってきた。報告によると、森を抜けたところでいい土地を見つけたと。そこなら植物が育つかもしれない。明日は試験的に畑を作ることになった。
1日の終わり、やっと最初の家ができた。この島についてから1週間後のことだった。それまでは仮小屋だったり船だったりに寝泊まりしていた。夜になると、各班、つまりは建築班、索敵班、狩猟班、警備班、海上班のリーダーたちが集まった。建築班からはフソウ、索敵班からはヤマト、狩猟班からはアーチャー、警備班からはオウガ、海上班からはミツが集まった。それとリチャードがまとめ役として参加してる。
「では今日の収穫を各々行ってください。ではフソウ氏」
「えぇこほん!ワシらは今日一軒目の家を建て終えたところじゃ。内装はまだないがの」
おお、とその場にいた全員が感心した。それを紙に書き記して次の人に聞いた。
「ええと、オレら索敵班は畑のできそうな土地を見つけた。明日から試験的にタネを植えてみる」
「狩猟班からは特にない」
アーチャーはそう言うだけ言った。続いてオウガが口を開けた。
「武器の作成及び兵の訓練は順調だ。いつ月光国に見つかるかわかったもんじゃねぇからな」
「ミツからは一つだけ、船が大きすぎるのが問題かと」
さっきまで紙に夢中だったリチャードが顔を上げた。
「ほう、詳しくお願いする」
「はい、あのガレオン船は図体がデカくてその内見つかるんじゃないかと」
「確かに優れた望遠鏡ならこちらが発見する前に見つかるリスクがある…」
「それで今は岩陰に隠したり、出ている部分をカモフラージュしたりしてるけど… できればちゃんとした港が欲しいところです」
「残念ですが、現状あれほどの巨体を隠すだけの岩陰がありません。それに港を作るために適した場所と建築要員が不足しているのが現状です」
まだこの島の全域を知ったわけじゃないが、今の探索範囲外に出れば不便さが目立つ。今はあそこで我慢するしかない。
「他に報告することは?ないのなら定時連絡は終了とさせていただきます」
「一つ、言いそびれたことがある。まだ確証はないが…」
アーチャーが席を立った。
「どうやらこの島には私ら以外の誰かがいるらしい」
その場にいた全員が息を飲み込んだ。
「それどう言うことだ」
「森に明らかに人工的な収穫跡や足跡があった。それに、森に入っている間はどこからか監視されてるような気配を感じた」
「ワイバーン… ではなさそうだな。だとすると月光か?」
それにオウガが反応した。
「それはない、月光のやり方は知ってる。目の前の無防備な餌を泳がせるような連中ではない」
「じゃあ… 先住民がいるってことか」
先住民がいることはこちらとしても好都合。もし彼らの知恵とマンパワーを借りれれば建国も夢じゃない。だが、後から来た者の身勝手な思想をはいそうですかと承諾してくれるか?いや、歴史を振り返ろ。たとえばイギリス… 彼らは植民地化してきた、趣旨が違うので却下。オーストラリアはどうだ?確か島流された人たちの国家だった気が… 不確定要素で考えるのはやめよう。確実なのは未来的に問題になることだ、戦争も引き起こされる理由になる。つまりは対話による交渉でうまく共同関係に持ち込まないといけない。
「よし、とりあえずアーチャーは彼らの居場所を突き止めてくれ。だが見つけたら一旦戻ってきて後日また訪問する。俺からは以上だ」
その日は解散となり、夜を寝過ごした。早朝、アーチャー率いる探索班が森に入ったのを見届けて、1日の作業を始めた。
この2週間で区画整理などは済ませたので、今はフリーだ。ということでフソウのじっちゃんを手伝いに行くことにした。完成した家のノウハウを使って効率を高めたりしてるから二軒目はすぐ立ちそうだな。
「別にお主が来なくてもいいんじゃがの。国王は国王らしく日陰で休んどれ」
「そういうわけにもいかないよ。国ができるまでは一人の労働者だ」
フソウは俺が参加することを拒んでいたが、俺は代わりに木を切ったりして助けていた。10代の体には限界もあるが、使わないのは宝の持ち腐れだ、そう思い木こりをしていた時だった。
森の入り口で木を切っていると、森の奥から索敵班のヤマトたちが走ってきた。
「ワイバーンだッ!」
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