第7話:さらば、監獄

俺らはその後無事に帰還できた。帰りは夜飯の運搬車に張り付き収容所に侵入できた。とりあえず、タイムリミットは明日の早朝だ。

「手当たり次第壊したが、効果的かは分からない。それに、あいつは救えなかった…」


「しょうがない、少しでもやり返せただけマシさ」


晩飯を食べながら語る。テーブルにはガイム、ヤマト、ナガト、アーチャーとヤマトのペアのジェンが席を陣取っている。

「明日の動きは…?」


「まぁそうだな、それは変わりない。ただ殺魔天武がいるとすると… 少しやりにくいかな」


「それに他の奴らも着いてこられるかね?俺らぁこうして作戦会議してるけどよぉ、他はどうするんだ?ついてこねぇ奴もいるんじゃねぇか?」


「そこはどうにかする」


と言ってみたものの、いい案が浮かばない。それにさっきの仮面と服… いつのまにか消えていた。結局何だったのか分からないままだ。

翌朝、早朝の警備員によってではなく、外の悲鳴と戦闘音で目が覚めた。始まったんだ。警備員が外へと続く扉に施錠した音が聞こえた。今この通路には警備員の一人もいない。ここの扉は鍵式ではなく、板で封じるタイプだ、だからナガトには少し細工をしてもらった。牢屋の鍵は蝋燭で固めたものを使い、俺とナガトは簡単に出れた。他の房は壁に吊るしてある鍵を使って開けた。訳も分からず困惑していた奴隷が次々に歓声を上げた。

「おい!静かにしてくれ!バレちまったら意味がねぇだろ!」


ナガトがそれを鎮まり返したが、まだ奴隷は喜びが抜けていない。ナガトが門の近くへいき耳をすませた。数秒経って足音がしないことを確認してからガイムが扉を力強く蹴った。

「武器が使えるものは俺に続け!」


ガイムは数人の男たちを連れて武器庫へ向かった。俺は他の奴らを連れて食堂へ向かった。今朝と昼の分の飯が届いてるはずだ。これをできるだけバックに詰めて行きたい。おおかた積み終わった時、そこに偶然警備兵が通りかかった。

「貴様ら!何をやっ…」


風を切った音ともに矢が首元に刺さり倒れた。通路から出てきたのはアーチャーだった。

「時間がない、とっととすませろ」


装備を整えたガイムと合流したのち、外へと続く扉へ向かった。慎重に外への扉を開け、誰もいないことを確認したのち、正面の門まで走った。やはりこの施設にいるのは門番だけだ。こちらに気づいた門番は槍で応戦しようとしたが、アーチャーが見事に射抜き、難なく突破した。

「ガイム!こっから先はお前が担当だ!」


「わかってる!みんなこっちだ!俺に続け!」


山に入ろうとした瞬間、数人の男が立ち止まった。そして一人の大柄の男が大声で言った。

「なんでテメェらに従わなくちゃならねぇんだ!」


「そういうのはいい!今は一刻一秒が命なんだ!」


「オレらは拒否するぜ!もし、そのガキに代わってアタマを務めさせてくれるっつーなら考えてやってもいいがな!」


察するに、盗賊かなんかだったのだろう。こういうタイプの力バカはどう説得したものか。

「俺はタケルだ。俺は別にアタマとかそういうのには興味がない。もし俺の代わりにこのグループをまとめてくれるならそれはそれで助かる」


「ちょっ!タケル!」


ガイムが止めようとしたが俺は引き続きしゃべった。

「話が早いな、分かってんじゃねえかガキンチョ」


「ただしそれはこの場を凌いでからだ。誰かアタマかは後回しだ!」


「それじゃ意味がねぇっつってんだよ!今!オレがアタマだと言いやがれ!」


話してても埒があかない。しょうがない、ここはもう…

「急ぐぞ、あいつらは置いていく」


「いいのか?お前の目的は全員を救い出すことだろ?」


「より多くの人命を優先する。それに奴らも馬鹿じゃない。俺らについてきた方が得なことぐらいすぐにわかるさ」


ガイムは納得はしなかったが、道案内を再開した。街は危険すぎるという理由で途中までは森の中を走り抜けた。

森の外からは悲鳴や怒鳴り声が聞こえる。やはり始まってしまっているんだなと実感した。

「もうすぐで森を抜ける!そっからは全速力で走れ!」


ガイムの言う通り徐々に森が開けていく。眩しい光と共に現れたのは、燃える建物と怪我を負った民間人から軍人だ。

「おい!いくぞ!」


ガイムに背中を叩かれ我に帰る。そうだ、これは戦争だ。血も出るし、死人も出る。あまり周りを見ないようにと気を使い燃え盛る住宅街を走り抜ける。助けを呼ぶ声や、言葉にならない悲鳴を全て無視して、ただただ走る。

「もうすぐだ!港が見えるぞ!!」


そう、建物の間に微かに見える青い水、港だ!だがそこを立ちはだかる男がいた。何やら出航の準備をしているようだ。

「まずい!あれは…!」


「む?何やら物騒な連中だな。もしや敵軍か!?」


鎧を纏ったその男は、軽く2mはあると思う。長く伸ばした黒いヒゲに大きい目だ。

「何や—」


矢は彼の顔2cm前で止まった、あの一瞬で矢を捕まえたのだ。

「何奴だ」


相当の技量がないとあんな技はできないはずだ、只者じゃないな。

「ちょっとその船を借りにきた、退いてくれれば死人は出ないぞ」


ガイムが先頭に立って言った。

「我に下がれと?我が誰か知っての言葉か!?我は月下の12人が一人!セイジョウ・オウエンだッ!」


「やはりか…」


ガイムは何か知っているようだ。セイジョウは腰から剣を抜き取り構えた。

「貴様らが誰かは構いなく斬り捨ててくれるわ!」


「ここは俺が…!」


ガイムが近くの奴隷から剣を奪いセイジョウに怯むことなく切りにいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る