第8話:鉄の檻、そして海へ

ガイムの剣をあらかじめ予想していたかのようにオウエンは避けた。それを見たガイムが剣を再度握りしめて、今度は間髪入れず攻撃する。

それを表情ひとつ変えず交わし、剣で流した。

強い、そう感じた。

「あえて言っておこうか、我は剣術が大の苦手だと」


「それ今言う…?」


ガイムはオウエンと距離を保ちながら隙を狙う、だがもちろんそんなものはなかった。

「貴様らはどこの者だ?見た感じ正規軍ではなさそうだな… だがお前はいい体をしている」


「それはどうも、毎日筋トレをやっていた甲斐がある」


苦笑いをして答えるガイム、彼と目が合った。その一瞬だけで、彼が何を言いたいか察した。

「なんだ?来ないのか?」


「… 俺を早急に仕留めなかったことを後悔するのだな」


そう言うとガイムは地面を強く踏んだ、その瞬間にあたりの砂や土が浮き上がって一種の目眩しになった。

そう、彼はオウエンと目を合わせながら地面に足を使って魔法陣を描いていた。

敵から目を奪った瞬間、俺らは船のある位置へ走り出した。

「狙いは船か!」


砂煙の中でオウエンが叫んだが、俺らはすでに船に登り始めていた。幸い船には兵士が数人程度、食料や物資を運び込んでいたのだろう。そいつらを全員海に蹴り落とした。

「でこいつの動かし方知ってんのかぁ!?」


「なぜ俺に聞く… この案の発案者はタケルだろ」


ナガトの質問をガイムが俺に流した。

「帆を張って!」


俺はある程度ならこのタイプの船を動かす知識がある、某海賊ゲームをプラットフォームで見つけて以来夢中になって遊んでいたからだ。見た感じ中世の船、しかも大砲は合計38問あるという豪華な船だ。周りにある船は30問だけなのを見るに、これはオウエンの、しかも指揮官仕様といったところだろうな。

「おい、動き出したぞ!」


「ああ!下の兵士も流石の立ち往生… うお!」


ガイムが尻餅をついた、それもそのはず、轟音と共に背後から何かが飛んできたのだ。それに続くように次々と飛んでくる。もしやと思って振り返ると、やはりそこには大砲の列があった。

「戻ってこぉい!我の船を返せぇ!!!」


オウエンが鬼の形相で大砲隊を指揮してる。だが精度の低い大砲は船を掠るだけで済んだ。

結局、船は無傷なまま射程範囲外に出ることができた。思えば、あそこで攻撃ではなく追撃を優先されてたら俺らは負けていたかもしれない。すると、舵を切っていた俺の胸ぐらを突然掴まれた。

「おい!目的地はどこだ!?早く言いやがれ、クソガキ!」


最初に揉めてた賊のリーダーだった。俺は冷静に言い放った。

「確かに、目的地を言わずに黙って着いて来いなんて理不尽だった。俺らは今…」


「おい!タケルから離れろ!」


ガイムが剣をそいつに向けた。だが俺は彼を攻撃するなと合図した。

「俺らは今、この海に浮かぶ島へ向かってる。そこなら安全だろう」


「そこへの行き方は知ってんだろうな?」


「正直のところ、分からない。これから海の…」


俺はそいつに投げ飛ばされた。

「行き方も知らない奴に任せられるか!ここはオレが指揮する!オウガ様と称えやがれ!!!」


「…じゃあお前は知ってんのかよ… どこが安全で、どうやってそこへ向かうか」


「んなもんハッキリしてる。李国へ行く!オレの部下が待ってるはずだ」


「それは月光の奴らも予測してるはずだ、だから日光連でも李国でもない場所へ…」


オウガが腰に掛けていた剣を抜刀した。

「つべこべ言うな。殺さないだけでも感謝しろよ」


しょうがない、こいつを李国で降ろしたらすぐさま元の場所へ向かおう。その方が食糧や何より地図も手に入るかもしれない。仕方がないがここはオウガに従うしかなさそうだ。

「わかった、あんたの案に乗るよ」


「それでいい。叛逆しないうちは可愛がってやるぜ」


剣を納め、ガイムの横をわざとらしく睨みながら通過した。オウガが去ったのを見て、すぐにガイム、ヤマト、ナガトが駆け寄ってきた。

「大丈夫か兄貴…!」


「やはりあいつは載せるべきではなかったな」


腰が少し痛むぐらいであとはなんともない。もしや海に投げ捨てられるかと思ったが、流石にそこまでなくて安心した。

「俺は大丈夫、とりあえず李国の方角はわかる?」


「お、おう。偶然立ち寄った部屋に地図が飾ってあってよぉ、ありがたく頂戴しといたぜ!」


そう言ってバックから巻かれた紙を取り出して広げた。そこには都市名やらが事細かく記されていた。もちろん元々向かうはずだった島も描いてある。これでとりあえずは地図は大丈夫だ。あとはコンパスがあれば… そもそも存在するのか?いやでも地図を見る限りコンパス自体はなくても類似した何かがあるはず…。

「島へ行くのなら羅針石がいるな」


「羅針石?」


「あぁ。特殊な魔石でな、必ず一定の方向を指しているのだ。それを矢印状に加工した物を方向箱と呼ぶ。魔石なら海岸線に落ちている場合もあるからすぐに調達できるだろう、なくても李国の市場で買えばいいさ」


なるほど、この世界では磁石の代わりに羅針石があるのか。それともこちらの世界独特の呼び方なのか?まぁいいそれはさえあればいいんだ、話は簡単だ。

「とりあえず李国に行くことは決定だな」


「でも俺はあいつに従うのだけはゴメンだぜ?兄貴もお人好しがすぎる」


「あんなやつでも生きてるんだ。なら助けるのが筋だ」


ヤマトは少し不満げだったが、最後には承諾したらしい。だが問題は、月光の包囲網だ。日光は殺魔天武が出てきたことで退却しただろうし… これでこちらに回せる人員も大きく増えたはずだ。厳しい逃亡生活になるだろうな。

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